メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 634  2024/09/22


少女の性 第六百三十四部

さとみは、社会人になると学生の時のように、単に好きだからといって毎日会うわけには行かないと言うことが経験的に分かっていた。その場の雰囲気に流されて気軽に約束をしてしまうと、あとで寂しい思いをすることが多いものだ。

「それじゃ、さとみさん、ペンギンに行こうよ」
「そうね。早く行きましょう」

二人は東園から西園に移動したが、途中でモノレールの駅が展示されているのを見た。

「そうかぁ、もう、モノレールって無いんだ。子供の時に乗ったのに」
「そうだね。残念だよ。今は確か、次の世代の乗り物には何が良いか、選定している最中のはずだよ」
「そうなの、早く決まると良いわね」
「うん、またここに来る理由になるよね」
「そうね」

さとみはチラッと余計なことを考えたが、頭を切替えてペンギンの方へと進んだ。そして到着すると柵に寄りかかってじっとペンギンを見つめる。

「なんか、ペンギンて、ずーーーーっと見てられる気がする」
「うん、可愛らしくひょこひょこ歩いたり、スーって泳いだり、変化が楽しいよね」
「でも・・・・これってペンギンの匂いなの?何か変な匂いがする」
「そうだよ。ペンギンて言っても鳥だから。鳥は匂いがきついだろ?同じだよ」
「そうなんだ。ペンギンて鳥だものね。確かに。変な鳥だけど」
「でも、俺だって、ずっと見てられる気がする。なんか、何回見ても引きつけられる気がするなぁ」
「何回見ても?、ねぇ、宏一さんだって、ペンギンは動物園でしか見たことないでしょ?そんなに何回も来たの?」

さとみは、宏一が他の子とのデートで来たのかと思って聞き直した。

「ううん、残念でした。仕事でオーストラリアに行ったときに、向こうの仕事先の人にペンギンが住んでる場所に案内してもらったんだ」
「オーストラリアにもペンギンは居るの?」
「うん、南半球にはだいたい居るみたいだよ。他にはアフリカとか南米とか」
「それって、動物園じゃないの?」
「ううん、100%野生だったよ。海岸に行くと、海の中からピョコンて飛び出してきて、崖を上がって自分の家まで帰るんだ」
「シドニーなの?」
「ううん、もっと南。メルボルンて言う古い町並みが有名なところ。そこからペンギンの海岸まで車で2時間くらいだったかな?」
「宏一さんて、本当にいろんなところに行ってるのね」
「その時は仕事の会議が少しギスギスした感じだったから、相手も心配になったみたいで、会議が終わってからわざわざ自分の車で案内してくれたんだ。夜の9時くらいに外が真っ暗になるとペンギンも泳いでいる魚が見えなくなるから海から上がって自分の家に帰るんだって。目の前をひょこひょうこ歩いて行くのをみるのは可愛らしいよ」
「目の前を?」
「そうだよ。ペンギンが歩いて行く海岸からの坂道を人間も歩いて行くからね」
「良いなぁ、私も行ってみたい」

「それじゃ、さとみさんも派遣に登録して、外国絡みの仕事をすれば良いんだよ」
「私にはそんなことできないわ。英語だってしゃべれないし。だから残念だけど、無理ね。今までそんな冒険なんてしてこなかったもの」
「冒険か・・・・仕事だけどね」
二人はそんな話をしながらペンギンを見ていた。ペンギンはそう言う話をしながら見るのにちょうど良い。危険でもないし、じっとしているわけでもなく泳いだり歩いたりするので退屈することもない。
「さて、時間がもったいないから、そろそろフラミンゴに行きましょうか。良い時間だわ」

二人はフラミンゴに移動し、紅色フラミンゴを見物した。

「ねぇ、フラミンゴについては、何か面白い話はないの?」
「そうだなぁ、フラミンゴはないなぁ。一度くらい飛ぶのを直に見てみたいとは思ってるんだけどね」
「え?フラミンゴって、飛ぶの?」
「そりゃそうだよ。鳥だもの。おっと、ペンギンは飛ばないね。でもフラミンゴは普通に飛ぶらしいよ」
「そうなんだ。ダチョウみたいに飛ばないのかと思ってた」
「そんなことはないよ。温かい地域に住んでて、あちこち集団で移動するみたいだよ」
「ふうーん、何でも知ってるのね」
「これくらいは・・・・・・・」
「誰でも知ってるって言いたいの?」

さとみはわざと少し絡んできた。宏一は慌てて否定した。

「これくらいは、人に言うほどの話じゃ無いと思ったから・・・・」
「それを私は知らなかったんですからね」
「知らなくたって当然だよ。情報のかけらみたいなものだからね」
「上手に逃げたわね」
「そんなぁ、もう許してよ」
「遅刻したくせに、ふふっ」
「さとみさん」
「ごめんなさい。ちょっと虐めてみたくなっちゃったの」
「もう、フラミンゴが嫌いになりそうだよ」
「そんなこと言わないの。また来ましょう?ね?」
「うん・・・・・来たいけど・・・・・・」
「それじゃ、時間もちょうどだから私の部屋に行きましょう。腕によりをかけたケータリングが来るんだから」
「腕によりをかけたケータリングって、どう言うこと?」
「さぁ、ポチった時かな?」
「腕によりをかけてポチったって事?」
「そう言うことになるわね。お楽しみに」
「分かった。それなら楽しみにしてる」
「プレッシャーをかけてるワケね」
「もう、どういえば良いんだ、全く」
「はいはい、気にしないで、行きましょう?」
「うん、とにかく出なきゃね」

二人は西園を出ると、地下鉄まで歩き、そこから乗り換えを繰り返して途中でワイン屋さんに寄り、そこからさとみの部屋までたどり着いた。さとみの部屋はマンションタイプで、まず入り口で鍵を差し込んでエレベーターホール兼ロビーに入るタイプだ。

「格好いいなぁ。マンションみたいだ」
「女の子の一人暮らしなら、これくらいは最低でしょ?」

二人はエレベーターで上がってさとみの部屋に着いた。

「さぁ、どうぞ」

さとみの部屋は1Kタイプだが、少し広めだ。まだいくつか段ボールがそのままになっているが、家具が少ないのでゆったりした感じがする。部屋はカーペットが敷いてあって、ベッドとローテーブルが置いてあった。引っ越して直ぐなのでまだ生活感は薄い。

「さぁ、先ず宏一さんからシャワーを浴びて。中のものは好きに使って」
「うん、ありがとう。そうさせてもらうよ」

まずさとみはワインを冷蔵庫に入れたりコップを出したりした。宏一は着替えを取り出すと先にシャワーを浴び、下着で出てくると、次にさとみがシャワーを浴びた。ただ、ケータリングの時間まで十分な時間が無かったので、さとみにしてはゆっくりできなかったかも知れない。さとみはピンク色のバサッとしたルームウェアに着替えてきた。それも短パン姿で可愛らしい感じだ。
シャワーのあと、二人は喉が渇いていたので缶のカクテルを飲みながら待っていたが、時間になっても届かない。15分待っても届かなかった。

「ねぇ、まあだぁ?」
「俺に聞かれても・・・・・・・」
「そうよね。わかった。私が確認する」

さとみはそう言うと、ケータリングの店に確認の電話をかけ、しばらく頷いてから電話を切った。

「今日は混んでるんだって。少し遅れて出たから申し訳ありません、て。たぶん、もうすぐ着くと思うって」
「蕎麦屋の出前にならなきゃ良いけど」
「なに?それ?」
「いつ聞いても、何度聞いても『もう出ました』としか言わないってこと。知らない?」
「知らない」
「お蕎麦屋さんて、いつ聞いても同じ事しか言わないから、そう呼ばれてるみたいだよ」
「ふうん」

それから更にもう少しして、結局30分遅れてケータリングが届いた。いろいろな料理の皿が次々に到着して、全部で20皿近い。配達員が二度に分けて大量の皿を運んできた。

「すごい量だね」
「どうせ、一つずつは宏一さんに量が少ないと思ったから。それに、いろいろなのを食べてみたくて頼んだの」
「それじゃ、さとみさんは料理を見ればなんて言う料理か分かるんだね。すごいや」
「分かるわけ無いでしょう?」
「だって、いろいろ頼んだって言うからきっと・・・・・・」
「あのね、だから言ったでしょう?私はポチっただけ。心を込めたけど、ポチっただけなの」
「分かった。それじゃ、皿に付いてるラベルを見れば良いって事だね」
「さぁさぁ、とにかくワインを出して、ビールも出して、準備準備」

二人はキッチンのテーブルに料理を並べると、買ってきた白ワインで乾杯した。

「イタリアン?」
「そうね、イタリアンだけど、ちょっといろいろ混ざってる感じかな?」
さとみはそう言いながら、トマトのカップレーゼを取り分けて宏一の前に置いた。
「取り敢えず乾杯だから」
「うん、ありがとう。美味しそうだね」
「良かった。宏一さんを呼ぼうと思ったときに、何を頼もうかすっごく悩んだんだから。私じゃ宏一さんが満足するものなんて作れないし」
「そんなに気を遣わなくたって。さとみさんと過ごせるなら親子丼でもなんでも良かったのに」
「そうわ行かないわ。それに、親子丼、あるわよ」
「へ?イタリアンで?」
「まさか、イタリアンではないけど、イタリア風親子丼て言うのがあって、それを頼んでみたの」
「それはすごいね。うん、このカップレーゼ、美味しいね」

宏一はワインをお替わりしてさとみにも注ぐと、親子丼の容器を引っ張り出した。

「見ても良い?」
「気に入るかなぁ?」

宏一が器を空けると、さすがにイタリア風と言うだけあって、バジルやトマトの入ったトリコロールの親子丼が現れた。

「へぇ、確かに親子丼だ。三つ葉の代わりにバジルが入ってるんだね。それにイタリア料理にトマトはマストだしね。美味しそう。それじゃ、あとでゆっくり食べよう。他にも食事になるものはあるの?親子丼の他に・・・・」
「あるの。ほら、これなんだけど」

さとみはそう言って、宏一の前に別の皿を差し出した。

「パスタ?」
「そう、ジェノベーゼとカルボナーラと」
「良いね。ワインが進みそうだ」
「ピザは頼まなかったのよ。お腹が膨れちゃうと思って。お酒を主体に考えてたから」

そう言うと、さとみは別の皿を宏一に差し出した。

「うわ、カルパッチョだ。これは・・・・・鯛かな???」
「たぶん」
「さとみさんは鯛のカルパッチョが好きなの?」
「よく分かんないけど、これかなぁって・・・・」
「それじゃ、これをいただこうよ」

そう言うと、今度は宏一が取り分けた。

「どう???」
「うん、美味しいよ。ケッパーが良い仕事してるね」
「良かった。正直言うと、あんまりイタリアンとか、て言うか、外食自体があんまり無かったから・・・・ちょっと自信が無くて」
さとみは前彼との生活が、如何に二人の結婚を前提としていたのかを改めて思い知る結果になったことを簡単に説明した。
「それで、お金とかはしっかりと分けてあったの?」
「基本的には分かれてたけど、私の方が毎日の買い物は多く出してたかな?彼が部屋代で、私が毎日の買い物って感じ」

さとみはそこまで話すと、それ以上は話したくないサインを送ってきたので、宏一は話題を変えた。

「この鯛のカルパッチョは当たりだよ。本当に美味しい」

宏一はワインを注ぎ足した。

「そうね、美味しい。安心した。ここまでの前菜は、あとはこれ」

そう言うとさとみは別の小さな皿を出してきた。

「ムール貝?へぇ、良いね。お酒には最高だものね」
「これは前に食べたことがあって、美味しかったから選んだの」
「こんなに前菜だけで何皿も頼むなんて、お金、掛かったよね。あとできちんと出すからね」
「そんなの・・・・そう言ってくれるだけで嬉しいわ。でも、良いの。私の気持ちだから」
「白ワインと一緒に食べると最高だよ」
「昔、女の子同士で言ったときに、ムール貝を大きな皿でドカンて頼んで、みんなでワイワイ言いながらお酒を飲んだの。だから、お酒に合うのは知ってたし、宏一さんにも食べて欲しかったから」
「ありがとう。美味しいよ。本当に」


つづく

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