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少女の性 第五百八十三部 「さとみさんが今日、夕食を食べたい店のイメージに、合ってる?」 「イメージって・・・・特に何も・・・・・」 「そうなの?でも、これが静かなフレンチの店とかだと、話し声だって他に聞こえちゃうから気になるだろうし、もしかして真面目な話をしたいんだったら、少し賑やかな店のほうが良いかなって思って・・・・」 「そこまで考えてなかったけど、ありがとう。気を遣ってくれて。そうね、この店、大正解よ。ちょっと気持ちが不安定だったから、こう言う気楽に話せる店の方が良かった」 「やっぱり・・・・そうだよね。急に引っ越しだもの。いろいろ大変だったろうね」 「その話は、もう少しお酒が入ってからにしたいの。先ず注文を決めましょうよ。宏一さんにお任せしても良いんだけど?」 「それなら、気分だけ教えて。俺がメニューを決めてみる。さとみさんの気持ちに合うメニューを見つけられたら褒めてね」 さとみは宏一のアイデアが面白く、気持ちが明るくなっていくのを感じた。 「そうね。それなら、ちょっと考え込んでいたときは疲れてて沈んだ感じだったけど、そこから今は上向きって言うことでどう?選んでもらえる?」 「分かったよ。ここは一応何でもあるけど、イタリア街の中では魚の店って事だから、魚も入れるね」 「もちろん」 「料理は二人でシェアするよ。いろいろ頼みたいから」 「賛成」 「それじゃ、まずはアサリとホタテのアヒージョだね。それからカップレーゼとジャンボオリーブ。これでビールからワインへと移る準備を整えよう」 「ふうん、そうなんだ」 「それから鮮魚のカルパッチョ盛り合わせとマグロのトリュフソースに行って、それから、おっと話しやすいようにバーニャカウダも頼んでおこう。それで話す時間は十分に持つから、その後で肉に行くか、そのまま魚を極めるかはその後で決めれば良いよ。もちろん、ワインは別で」 「なんか聞いてて楽しそう。宏一さん、大正解。楽しくなってきたわ」 さとみは宏一のメニュー構成が気に入った。もちろん、何を頼んでも気持ちが上向きの時には楽しいのかも知れないが、明らかに宏一のメニュー構成には心遣いが感じられる。そのメニューの中で宏一との時間を過ごせるのは、やはり楽しいのだ。 宏一の方も、直ぐに『宏一さん』と呼んでくれたのが嬉しかった。二人の会話で、ここまで会社を引きずると、どうしても会話が重くなってしまうからだ。さとみは、今日の部屋での片付けを後回しにしてまで宏一との時間を取ったことが正解だったと確信した。 一方その少し前、洋恵は葵をマックに引きずり出すことに成功していた。洋恵としては、葵を話の場に引き出すのが一番難しいと思っていたのだが、直接葵のところに行って相談したいことがあるから聞いて欲しいと言ったら、意外に簡単にOKしてくれたのだ。それで二人はマックに入って洋恵の奢りでセットを受け取って席に着いたところだ。 「大事な話って何よ?」 「あのね、前置き無しで言うわよ。今日、下駄箱で葵の話を聞いたの。それで相談したくて来たの。葵と彼とのこと。あのね、いきなりでびっくりするかも知れないけど、いったん彼から離れてみない?」 「前置き無しって言っておいて、思い切り前置きを置いて言うのね。ま、いいわ、おあいにく様、そんなつもり無いから」 「分かった。それじゃ、そう言うことね」 洋恵は席を立とうとした。 「何なのよ。いきなりなところに連れてきておいて」 洋恵は『良かった。掛かった!』と思った。実は、葵がこの話に乗るかどうか全然自信が無くて内心はヒヤヒヤしていたのだ。しかし、ここしばらく香菜と一緒にあちこちで話している間に、交渉というものは、こっちから話し続けても意味は無いと言うことを学んだのだ。だから、思い切ってこう言う話の出し方をしたのだ。でも、ここまで来ればたぶんだいじょうぶ。葵は自然に話に乗ってくるはずだ。 「ううん、私とおんなじだったって思ったから悪い話じゃ無いと思って聞いて貰おうとしたけど、聞く気が無いんなら何を言っても時間の無駄だから。今日、下駄箱での話を聞いたから話してみようかなって思っただけ。気にしないで」 洋恵はいきなりカードを切った。 「木下さん、聞いてたの?」 葵は驚いて洋恵を見返した。 「聞いてた?あのね、あれは聞こえたの。聞いたわけじゃ無いわ。あれだけ大声で話せば裏側にいたって聞こえるわよ」 「どこから聞いたの?」 「最初から、って言うと曖昧か。『ちょっと待ってよ』から。それでわかるでしょ?」 葵は『拙い』と思った。実はあの時、カッとなって大きな声を出してしまったが、まさか下駄箱の裏に人がいるとは思っても見なかった。カッとなっていつもの冷静さを失っていたのだ。 「それで?」 「それで?何が?どこから聞いたのかって聞かれたから教えただけ。わかったでしょ?」 「何か、私に言いたかったんじゃ無いの?」 「もちろんそうだけど、聞く気、無いんでしょ?それとも、私の話、聞く?」 葵はがっかりした。こうなったら聞くしか無さそうだ。そうしないと、どこに漏れるか分かったものではない。 「良いわ。聞く。その代わり、あの話は忘れて」 「わかった。早瀬さんが聞く気、有るなら話す。その前に、まず私のこと、どれだけ知ってる?それから教えて」 「木下さんのことは、一年の時に一緒だったけど、それ以外では時々聞くくらい・・・・・」 「あなたは生徒会だものね」 「そう言われると困るけど、確かに生徒会室にいるのが多いから、そこで男子から聞く話も多いのは確かね」 「それで、聞かせて?私のこと、どこまで知ってる?」 「そうね・・・大人しい子だったけど、家庭教師の先生が彼になってから女っぽくなったってくらいかな?見かけも話し方も」 「それじゃ、私の前の彼のこと、知ってる?」 「前?別れたの?家庭教師の先生じゃないの?」 「そうか・・・・それじゃ、そこから話さないといけないのか・・・・。まぁ、良いわ。話したげる。話を聞けば、私が今日、話しかけた理由が分かるから」 そう言うと洋恵は話し始めた。『良かった。やっぱりこうやって話を持って行かないと行けないんだ。香菜には感謝だね』と思った。 「あのね、私、家庭教師の先生に教えて貰ったの。いろいろ。意味、分かるわよね?」 「木下さんからなの?」 「その木下さんて言うの、止めよう。洋恵って呼んでくれる?その代わり、私も葵って呼ばせて」 「分かった。聞かせて、洋恵からなの?」 「私からって言うか、何となくって言うか・・・・、だって二人の時間がいっぱいあっただもん。でも、敢えて言えばセンセかな?私はセンセの教えてくれる世界に入っていったの」 「それで?」 「最初はしばらく幸せだったんだけど、だんだん不安定っていうか、このままじゃだめだって思うようになってきたの。だって、年がこれだけ離れてると一緒に街で歩くのは無理だし、二人でデートだってできないもの」 「いくつ?」 「25」 「十個か・・・・。まぁ、いないわけじゃ無いけどね・・・・・でも、目立つね」 「それで、やっぱり普通の彼が欲しくて、香菜に同い年の彼を紹介して貰ったの。それは知らないんだ?」 「うん、家庭教師の先生が彼になってから可愛くなったって事しか知らない。確か、誰かが告ったって聞いたけど?」 「あぁ、二組の吉井ね。でも、全然だったからすぐに断った。それはセンセが彼だったときだけど」 「吉井君は関係ないのね。それで、結局先生から離れたの?」 「うん、離れようとした。それで香菜に彼を紹介して貰った。・・・・・・・でも、ダメだった」 「どうして?」 「だって、センセと違って子供なんだもん」 「そうよね。年がぜんぜん違うから」 「そう。確かに付き合ったし、デートもしたけど、とにかく子供っぽくて・・・・・」 葵はピンときた。彼を作っても全くクリーンで何も許さない女の子も多いが、洋恵はそうではないようだ。そして葵自身もそうだった。 「うまくいかなかったって事?好きになれなかったの?」 「好きは好きだった。本当。それもそうだけど・・・・やっぱり全部なの。最初から最後まで。それで、だんだん気持ちが薄まってきて・・・・・結局別れた」 「やっぱり、同い年じゃ大人とは違うって事か」 葵はいつの間にか洋恵の話に引き込まれていた。そして、顔には出さなかったが、洋恵が話しかけてきた理由が少しだけ推測できた。たぶん、今日大声を出した不満についてのことなのだ。 「だから、彼とのデートの後にイライラしたりして、結局センセのところに行っちゃったりしてた。相談に乗って貰ったり、ちょっと優しくして貰ったり・・・」 「そう・・・・・・でも何となく分かる」 「でもね、それでもやっぱりきちんとした彼が欲しくて、香菜に相談してその彼と別れて、別の彼を紹介して貰うことにしたの」 「そうなんだ。思い切ったことするね」 「だって、このまま子供子供って思いながら、ずるずるイライラするのなんてやだもん」 「そうね。相手にも失礼よね」 「誰だか知ってる?」 「ううん、知らない」 「知りたい?」 「・・・・・良いわ、別に知っても意味無いし」 「分かった。それで、ここからなの。今回の話は」 「うん、話して」 「今日、下駄箱で話してたでしょ?あれって、知らない人が聞いたら何のことか分からないけど、『きちんと考えて』って、あのことよね?」 「・・・・・・・・・・・」 「まさか、しらを切る?彼があなたのこと考えずにするって事でしょ?」 葵は考え込んだ。確かに、今日葵が下駄箱で言ったのは『きちんと考えてしなさいよ』で、それは彼の部屋で葵が下着を脱いだ後のことだったのだ。ここで無理にしらを切ると、後で洋恵があちこちで話して余計にこじれて問題が大きくなることを恐れた葵は、渋々それを認めた。 「ううん、その通りよ」 「やっぱり。彼、下手なんだ。ごめん、こんな言い方で。だいじょうぶ。誰にも言わないから」 「ううん、良いの。誰か知ってるんでしょ?一つ下だし」 「小学校からなんでしょ?」 「うん」 「でも、それだと気持ちは深いわよね。ずっと一緒に大きくなってきたんだもん」 「そう。でも・・・・・・・」 「あれについては違うんだ・・・・」 葵はズバリ核心を突かれて戸惑った。ここで知らん顔をすることはできる。どうやら洋恵は他の子には言わないらしいので、安心かも知れない。しかし、それでは問題は解決しない。 「ねぇ、私に何を言いたいの?それを聞かせて?」 「うん、分かった。あのね、最初に言っておくけど、本当に絶対、誰にも言わないからね。それだけは信じて」 「・・・・・・わかった」 「あのね、さっきも言ったように、私、センセから離れて新しい彼を作ることにしたの。理由ももう言った。手を繋いでデートできる彼が欲しいから。でも、それだと私の我が儘でしょ?センセは何にも悪くないのに、他に彼が欲しいって言ってるんだから」 「・・・・・・・・・・・」 「だから、センセには私が居なくなっても寂しくないようにしてあげたいなって思ったの。葵なら全然OKだから」 「待ってよ、私、相手いるのよ?喧嘩したけど」 「だからなのよ。そうでなきゃ困るの」 「どういうこと?」 葵に聞かれて洋恵は一呼吸置いた。いよいよ今日の山場だ。 「私はセンセにいろいろ教えて貰ったけど、葵なら彼がいるんだし、センセとはそう言う仲にはならないでしょ?それなら家庭教師って事にしたら、センセは可愛くて頭の良い子と話はできるから寂しくないし、葵にその気が無いならそれ以上進むこともないよね。それって、葵とセンセ、お互いにとって悪くない話よね?くっついたりするから離れるだのなんだのって面倒なことになるんだから。きちんと勉強を教えて貰って、普通にいろいろ話をして、センセはきっと真面目に相談に乗ってくれるから葵は普通に過ごしてればいい。葵は学校とは関係の無い相談する人が手に入る。センセのアドバイスは役に立つよ。だからそれが一番良いって思うの。もちろん、センセは絶対葵が頼まない限り手を出したりしない。それは保証する。葵がどれだけ可愛くても、葵にその気が無いのならアプローチなんかしない。葵が今の彼と別れてセンセが良いって言うなら別だけど」 「そんなこと、あるわけないでしょ?」 「だよね。だから、こうやって葵に話をしてるの。さっきは『いったん離れてみない?』って言ったけど、それは別れるとか何とかって意味じゃなくて、文字通り、少し距離を置いて、センセと一緒に居る時間を作って、相談に乗って貰ったり、勉強を教えて貰ったりして彼との関係を見つめ直してみたら?ってこと」 「それじゃ、私は勉強を教えて貰えば良いって事?」 「うん、彼と別れるんじゃなくて、そう言うことなの。葵は私と違って成績良いのは知ってるけど、センセ、葵でも教えられるわよ、全然問題ない」 「ふぅーん、そうなんだ」 葵は洋恵の話に少し不自然な気はしたが、そう言うことなら基本的には悪い話では無いと思った。只、少し洋恵のことを調べてから返事をしないといけないと思った。 「洋恵の言いたいことはわかった。それじゃ、ちょっと考えさせてね?良いでしょ?」 「もちろん。誰に聞いても良いけど、香菜が一番よく知ってるよ」 「誰に聞くかは後で考えるから」 「余計なこと言ったわね。ごめん」 つづく http://shojyonovels.is-mine.net/ 少女の性シリーズ掲示板 https://bbs1.sekkaku.net/bbs/hiwaki25/ バックナンバーはMailuxにアクセスして http://www.mailux.com/ 左上の検索窓に『少女の性』と入力して 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