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タイトル:幸福ニュース第854号『感染症パニックを防げ!リスク・コミュニケーション入門』  2021/01/21


『感染症パニックを防げ!リスク・コミュニケーション入門』
(岩田健太郎著、光文社新書)

新コロナウイルス肺炎が世界中で猛威を振るっています。感染症
対策に関し何が大事なのかを、エボラ出血熱やSARSやバイオ
テロを扱った感染症専門家が書かれた本です。単に感染症対策の
みならず、リスク・コミュニケーションの原則と技法と実例が書
かれていますので、多くの人々の参考になる本です。

1. 感染症は単に病気を治療するのみならず、同時に「パニック」
と対峙する事が治療に劣らず重要な事である。即ち、リスク・コ
ミュニケーションが非常に重要なのである。

2. リスクに対しては、パニックになってもよくないし、不感症
になってもいけない。恐れすぎても、楽観的過ぎてもよくない。
感染症という専門領域と、リスク・コミュニケーションという
専門領域の両方から考える。

3. リスク・コミュニケーションの目的は、リスクを正確に把握
し、正しく対応する事、即ち、リスク・マネジメントにある。デ
ータは次々と更新し、新しい情報に基づいて新たなコミュニケー
ションを取る。

4. リスク・マネジメントにおいても「なんのために」は常に問
い返さないといけない大切な命題。ちょっと油断すると、「対策
の為の対策」「手段の目的化」「頑張っているというアリバイ作り」
になってしまう。

5.リスク見積もりで大事な事
リスクを見積もる(リスク・アセスメント)時は、2つの点に注
目する。「リスクが起きる可能性」と「起きた時の影響の大きさ」
の2つで、「起こりやすさ」と「起きると大変」をごっちゃにし
ないことが大事。リスク・コミュニケ――ションでも、両者を区
別して説明することが肝要。

5. リスク・アセスメントは幅を持たせて予測、見積もりする。リ
スク・マネージメントも一つの計画だけに固執するのではなく、
いくつかの予測シナリオに基づいて、複数の対策計画と選択肢を
持っておくことが大事。

7.リスク・コミュニケーションの3つのポイント
誰が聞き手なのか?(聞き手と聞き手の懸念事項)
状況はどうなっているのか?(現状把握)
なんの為にやっているのか?(目的)

8.リスクマネジメントにおいて、間違えたことよりも「間違えて、
それをすぐに認めない事」のほうが、後々のダメージは大きい。

9.危機下のクライシス・コミュニケーションでは、可能な全ての
ツールを用いて聞き手に行動を促す事が大事。「何を伝えるか」
と「それが伝わって、相手がその気になっているか」が大事で、
なるべくシンプルにまとめる。

10リスク・コミュニケーションにおけるプレゼンテーションを
効果的に行う為に一番大切なのは、プレゼンテーションの目的を
はっきりさせること。日本人のプレゼンテーションで一番問題な
のは、「何が言いたいのかよく分からない」のが多い。リスク・
コミュニケーションの目的は、あくまでもリスク・マネジメント
の最適化なので、それに関係ない情報はバッサリと切り捨てる勇
気が必要。

11リスク・マネジメントとは「自分の知らない領域の自覚」から
始まる。既存の知識で片付けようとすると失敗する。もし、エボ
ラ出血熱が日本に入ってきたら、どのような問題が生じるかを問
い続け、色々な可能性を想定するために質問を重ねていく。

12答えが出ない問題と取っ組み合う力が必要。「患者の立場にな
ったら、どういう所で困るだろうか」という「イマジネーション
を伴う質問」が必要。その為に、学校教育の段階から、「答えが
出ない問題」と取っ組み合う事、質問する事、「分かったふりを
しない」事等の教育が大事。

13対策チーム運営
感染症の流行が起きた時は、絶対に対策チームのメンバー全員を
一時に同じ場所に集めてはいけない。余力を残し、最小限のメン
バーで最大限の効果が出るような対応をする。翌朝になったら引
継ぎをして、次のメンバーに残りの仕事を託す。充分な睡眠、体
力の温存、ストレスの軽減は非常に重要。睡眠不足で判断を誤っ
たり、ストレスでスタッフの自殺を引き起こすようなことがない
ようにする。

14メディア対応が一番つらかったという声が多い。
メディアとは、時間の割き方について、あらかじめ約束事を決め
ておくのが良い。記者会見を行う時間も医療機関が設定すればよ
い。最悪の場合でも、一日一回やれば十分。最新の状況はホーム
ページ上で毎日更新する。メディア対応に追われて疲弊し、本来
の業務に支障が出ないように気をつける。

15医者自らは、例えば健康至上主義に陥りがちである自分の感
情や信念や信条や価値観があることを自覚する必要がある。理想
的には、主観的な自分を、もう一人のクールな自分が「鳥の目」
で見ている、自らの主観を遠目で見て置くような態度が望ましい。
リスク・コミュニケーターは、自分の価値観と相手の価値観、両
方を大事にすると、効果的なリスク・コミュニケーションになる。
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16リスク下では人は情報を上手にキャッチする能力が著しく低
下し、通常の半分も情報をまっとうに扱えなくなる。リスク下に
ある時は、短いメッセージ、通常は3つ以内のメッセージを繰り
返し伝える必要がある。NHKの津波速報等を参考にするとよい。

17沈黙してはいけない。情報は提供され続けなければならない。
積極的でくりかえされる情報提供は、デマ、流言に対する効果的
な対策にもなる。デマやフェイクニュースは見つけたら、こまめ
に訂正する。

18多くのリスクは怒りを醸成し、その怒りはリスク・コミュニケ
ーターに向けられる事もある。上手に怒りの感情を受け流すよう
なスキルが、リスク・コミュニケーターには必要。

19リスク・コミュニケーターは『聞き手』の方を向いている事が
重要である。長い目で見ると、それが組織自身にとっても最良の
選択であることを上司や同僚にも、前もって繰り返し伝えて置く。

20医療機関の場合、個人情報の保護と情報公開のバランスはい
つも難しい問題であるが、基本的に、個人を特定しうる情報は一
切公表してはいけない。

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21広報担当者にとって最も重要な事は、「後ろから刺されない」
こと。上司・管理者の全面的な支持があって初めて、リスク・コ
ミュニケーションは上手く行く。リスク・コミュニケーションは、
組織の外で行う前に、先ず組織の中で行う必要がある。組織内で
の一貫性を持っておくことも重要。内的なコンセンサスを取り、
外敵には見解は同じものに統一しておく。

22無関心(アパシー)も厄介である。特に組織のトップがリスク
を理解しようとしなかったり、無関心だったりすると、リスク・
ミュニケーションは非常に困難になる。情報隠ぺいに走ってしま
った場合にも、有効なリスク・コミュニケーションは難しくなる。
ロジカルにクールに上司を説得し、適切なリスク・コミュニケー
ションが、長期的には組織の利益となることを伝える。

23記者会見では、「現状分析」と「目標」を設定し、伝える。目
標をきちんと理解してもらう事が重要。あとは、その目標から逆
算して作り出した「計画」を開示する。記者会見では、「何を恐
がり」「何を怖がらなくてよいか」を明確にする。。記者の質問や
コメントは録音して、あとで、「言った、言わない」の問題が生
じないようにする。必ずマイクを持ってもらい、質問を共有する。
公表する内容は、本質的なポイントだけをまとめたA4一枚程度
のサマリーを事前に作って置き、配布する。事態をメディアに理
解してもらうように全力を尽くす。記者会見後は、そのサマリー
を自らのホームページで発表し、可能であれば全体の内容をYou
ube等で発信すると良い。メディアによる情報の歪曲を防止でき
る。

24病院内でのリスク・コミュニケーション
組織内の会議でも、まず大事なのは「目標」を設定する事。そし
て、最終的な意思決定をする方法を決める。最終決定方法がどこ
にあるか分からないと、話し合って終わりという不毛な会議にな
りかねない。会議においては、必ず異論を言うチャンスを十全に
提供する。エボラ出血熱のような感染症対策をテーマにする場合
は、「今すぐ決めなければならない事」を先に決め、「後回しに出
来る事」を後にする。理想的なのは、権限のある病院長がリーダ
ーシップを発揮して、感染症対策チームに全権を委譲するのが良
い。

25リスク・マネジメントの途中においても繰り返し、「目的」を
明確にし、確認する。ともすると、日本人は「頑張る事」そのも
のを目標にしがち。また、部門間でお見合いして、仕事を譲り合
い、漏れが生じない様に、感染症対策チームは目配りし、調整す
る。

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(English, Dutch, Russian, Japanese transcripts)  
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26情報は隠蔽されるとパニックを導く、情報はきちんと公開され
るべしというのが、大原則。一般大衆を無視せず、根気よく何度で
も繰り返して、静かに説得していくのが良い。

27パニックになった人々を相手にするには。
リスク(危機)とそれに付随する怒りの両方を考慮して対話をす
る。先ず、何に対して怒っているかを明確にする。あまりに「大
丈夫だ」が続くリスク・コミュニケーションも疑念が提示される
原因になる。ネガティブな側面や懸念材料などを誠実に吐露した
場合の方が相手は信用してくれる。懸念が無視されている場合も、
怒りや敵意が生じる。通常の生活からの変更を要求される場合も、
怒りを惹起しやすい。

28記者会見の時、明らかにこちらに非がない場合は、謝罪しては
いけない。謝罪する理由が明らかでないのに謝罪してはいけない。
逆に過度の正当化も良くない。記者会見では、クリアな頭脳と持
久力が大事なので、記者会見の前は、十分に睡眠や食事と水分を
とり、トイレにも行っておく。質問に対する回答は、できるだけ
「結論から」言うのが基本。その後、理由や条件を提示する。

29プレゼンテーション
先ず、プレゼンターを決める。バックアップの為にもう一人予備
のプレゼンターもいる方が良い。充分な準備が重要で、スライド
より、トーク(話)が大事。トークを何回も練習しておく。事前
に機器類はチェックしておく。アクシデントが起こった時の事も
考えて、プレゼンできるようにして置き、取り乱さない様にする。
「メッセージを伝えるのに何が必要か」が重要だから、相手に関
連のある内容とスライドを使い、話をする。リスク・コミュニケ
ーションではとにかく相手に伝わる事が最重要。質疑応答も大切
にする。応えられない質問には無理に答えなくても良い。自分の
専門外の事に関しては、中途半端なコメントはしない。分かって
いない事、曖昧な事も正確に伝える。信用されるような見た目や
態度も大事。

30メディアとの付き合い方
メディアに対して、インサイダー情報を流してはけない。メディ
アとつき合いながら、メディア側の人間にならない、一線を引い
て、節度ある人間関係に徹することも重要。取材の前に「記事は
必ず事前に読ませてもらい、確認してから掲載してもらう」事を
伝えておく。メディアが間違った時は、必ず、具体的に訂正を求
める。

31リスク・コミュニケーターは医学的知識と情報を最新のもの
にしておく。その為には英語力は絶対に必要で、勉強するしかな
い。また、英語で情報を発信する事も大事。リスク・コミュニケ
ーションにおいては、たとえ話や比喩はできるだけ使わない方が
良い。

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【坂村真民詩集】

『 仏 』
悲しみや苦しみがなかったら
仏は生まれてこなかった

悲しみや苦しみがあるから
仏は生まれてきた

悲しみや苦しみは
ガンジス川の砂のように多いから
仏も無数である

一心に称名し
一心に礼拝しよう

【仏 語 集】

「ものに、意味のないものと意味のあるものとの二つがあるの
でなく、善いものと悪いものとの二つがあるのでもない。二つ
に分けるのは人のはからいである。はからいを離れた智慧をも
って照らせば、すべてはみな尊い意味を持つものとなる」
(仏昇とう利天為母説法経)

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*「『人間には、不幸か、貧乏か、病気が必要だ。でないと、人
間はすぐに思い上がる。』(ツルゲーネフ)治療法の早い確立と薬
の早期開発を切に祈ります。」(にこにこ和尚)

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