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172章 信也が作た歌「15 の心のままに Part 2 」 2020年12月5日の日曜日の 夜の8時ころ。 川口信也は「ディフォルト・ネットワーク」という単語を パソコンで検索している。 あるサイトには「ディフォルト・ネットワーク」は、正確には 「デフォルト・モード・ネットワーク」(Default Mode Network:DMN)といい、 ワシントン大学のマーカス・レイクル教授が、 この脳内の ネットワークを命名したと、書いてある。 脳神経外科医 の 菅原 道仁 のサイトには、2016.03.24 の 日付けで、こう書いてある。 『ボーっとしているときの脳は「活動している」? それとも「休んでいる」』 と題して 『この疑問に答えたのが、米ワシントン大学のマーカス・E・レイクル教授です。 2001年に安静時の脳活動に関して、私たちが何もしていないときに活発化する「 デフォルトモードネットワーク」という、 複数の脳の領域で構成されるネットワークを発見しました。 じつは安静状態の脳でこそ働いている脳の領域があり、 しかもこの活動に費やされているエネルギーは、私たちが喋ったり、 手を動かしたり、じっと見るなどの意識的な行動に使われる 脳エネルギーの20倍にも達しているというのです。 現在の研究では、内側前頭前野、後部帯状皮質、膨大後部皮質、 左右の下部頭頂葉の4種類の脳領域が デフォルト・モード・ネットワークで関わっているのではないかと推測されています。』 どうも この「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)は、休息中でも クルマのアイドリングのように動き続けてエネルギーを消費するせいなのか 悪玉のように 扱われる 記事が 多いと感じる。 しかし、信也が 最近 読んだ『 脳は0.1秒で恋をする 「赤い糸」の科学 』という 脳科学者としても知られる 茂木健一郎の本には、善玉として、DMNは紹介されている。 その本を読んだ 信也は、自分が 15歳のころを 不思議に懐(なつ)かしんだり、 15歳のころを 人生の原点のように感じたりする 理由の 謎(なぞ)が 氷が解(と)けるように 理解できた 気がしたのだ。 《 おれにも DMN は、善玉のような 感じがする のだけどな。》と 信也は 思う。 『 脳は0.1秒で恋をする 「赤い糸」の科学 』には こんな記述がある。 ≪ 脳の中には、「感情」や「運動」、「記憶」や「イメージ」といった、 それぞれの働きを担う部位が存在しているのですが、 「ディフォルト・ネットワーク」とは、それらをつないで束(たば)ねている 中心的な役割を果たしています。 通常、人間の脳は何かを考えている時に、より活発に活動しているものなのですが、 この「ディフォルト・ネットワーク」だけは特殊で、何か特定のことに 目的を定(さだ)めて考えている時には活動が低下しており、反対に、 何も考えていない時に活性化している。いわば脳がアイドリングしている時に、 1番活発に働いていることが分かっています。 恋愛の、それも特に準備段階においては、この「ディフォルト・ネットワーク」が もっとも大切になってくると考えられています。 僕が、まだ小学4年生くらいの頃のことです。公園で遊んでいると、 ひとり ベンチに 座(すわ)りボーっとしたまま、何をするでもなく 遠くを見つめている中学生のお兄さんがいました。 僕が「何を考えいているんですか」と聞いたら、 「いやあ、君くらいの歳ではまだ分(わ)からないかもしれないけど、 僕くらいになると、いろいろ考えることがたくさんあるんだよ」と言われました。 それがいまだに強く印象に残っているのですが、今から考えてみると、 その時の彼こそが「ディフォルト・ネットワーク」を活動させている 最中だったのだと思います。 「ディフォルト・ネットワーク」が 働いている状態に関しては、近いものとして 「白昼夢」が挙(あ)げられます。夜、睡眠の中で見る「夢」でもなく、 将来を夢見るという意味での「夢」でもない。うららかな午後の陽(ひ)ざしの中、 何をするでもなく、たゆたう連想に身を任せながら見る、 夢と現(うつつ)との間にある「白昼夢」。 明確な意識で物事を考えているわけではないけれど、まったく思考を停止させている わけでもない。次から次へと頭に浮かぶ 想念の波に 揺られつつ、 自由に想像の羽(はね)をはばたかせている、それが「ディフォルト・ネットワーク」を 働かせている状態であり、人間の「創造性」とも深くかかわりがあるといわれています。 この「ディフォルト・ネットワーク」の活動は、おもに思春期に活発化します。 十代半ばから二十代にかけては、思春期らしい悩みや将来への想いなど、 原因は定(さだ)かでなくとも、メランコリックな思索にふけることがしばしばあります。 つまり、先ほどの中学生のお兄さんくらいの歳の思春期から青年期が、その時期といえるでしょう。 夏目漱石の『三四郎』には、「ロマンティック・アイロニー」という言葉が出てきます。 主人公の三四郎が、ひとりで道を歩いていると、友人の与次郎に出くわします。 彼は三四郎の表情を見るなり笑だし、 「もう少し 普通の人間らしく 歩くがいい、 まるで浪漫的(ロマンティック・)アイロニー だ」と表現します。 しかし、三四郎は その「ロマンティック・アイロニー」の意味が分からない。 しかたがないので曖昧(あいまい)に笑い、急いで図書館でその意味を調べてみると、 ドイツの哲学者シュレーゲルが唱(とな)えた言葉だということを知る。 そこには、天才とは、目的もなく 終日 ぶらぶらして いなければならない、 ということが書いてありました。それを「ロマンティック・アイロニー」と 呼ぶということを知って、三四郎は初めて安心するのです。 この「ロマンティック・アイロニー」も、「ディフォルト・ネットワーク」が 働いている状態だといえるでしょう。 <中略> 大人になっても、青春時代と同じような好奇心や、 健(すこ)やかな精神を持ち続けることが大切です。積み上げられた仕事や 生活上の雑事という「課題」を、たまには脇に置いて、「無目的」に ぶらぶらしてみる。 「ディフォルト・ネットワーク」とは、常に脳内を回遊して、 「何か新しいこと・面白(おもしろ)いことはないかなぁ」と アンテナを立てて探している状態でもあるのです。≫ 信也は「なるほど」と、茂木健一郎の その本に共感した。 そして、「 15 の 心のままに Part 2 」という タイトルの歌を 作った。 15 の 心のままに Part 2 全歌詞 作詞・作曲 川口 信也 君と 出会えた スマホの デジタルの 世界 いつ どこに 隠れているかも わからない 幸運を 脳内の ディフォルト・ネットワーク は 見つけてくれる 15 の 心のままに 15 の 心のままに 15 の 心のままに 15のころは この世界が 美しく感じられた いつまでも 15のころが 忘れられない いつまでも 人生の 原点のようさ 15 の 心のままに 15 の 心のままに 15 の 心のままに そんな 僕の 思いの 理由(わけ)を 脳の科学は 解き明かす 脳内の ディフォルト・ネットワークの 働きは 楽しいことに 気づける 自由な 精神にしてくれる 15 の 心のままに 15 の 心のままに 15 の 心のままに ☆参考文献☆ <1> 脳は0.1秒で恋をする 「赤い糸」の科学 茂木健一郎 PHP研究所 <2> 15 の 心のままに Part 2 オリジナル 第4作 乙黒一平 https://youtu.be/Mji9wKDmXI0 ≪ つづく ≫ --- 172章 おわり --- |