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126章 ボブ・ディランの『コーヒーもう一杯 (One More Cup of Coffee)』を聴く信也 6月10日の土曜日の午後3時過ぎ。 マンション(ハイム代沢)のリビングのソファで、 ひとり、川口信也は、ひさびさに、 パソコンの、Windows Media Player に入れてある『コーヒー もう一杯』を聴いている。 信也が、2014年の12月から借りているハイム代沢は、 リビングが1つとキッチンと、バスルームに洗面所、南側にはベランダがある、1Kだ。 このマンションには駐車場はない。 信也の愛車トヨタのハリアーは、信也の妹の美結と利奈が暮らしているマンション、 レスト下北沢の駐車場に置いてある。その駐車場までは、歩いて2分とはかからない。 休日の午後のひととき、信也がソファでくつろぎながら聴いてる、 『コーヒー もう一杯』は、イントロが哀愁のあるヴァイオリンで始まる、 そのアレンジも美しい、ボブ・ディランのバラードの名曲だ。 1976年にリリースされたボブ・ディランの『欲望』というアルバムの中に、 『コーヒー もう一杯』は入っている。 神秘的で美しい女性との別れを、詩情のある言葉で語るその歌詞は、聴く人の心に深く響く。 アルバム『欲望』には、当時のディランの実生活における苦悩が反映されているようだ。 アルバム収録曲には、妻の名前をそのままタイトルにした『サラ』という歌もある。 当時のディランの妻であったサラ・ディランと過ごした愛の生活を心のままに回想するような、 切ない歌だ。 ディランとサラは、アルバムリリースの翌年の1977年に離婚している。 その原因は、当時、ディランのバック・コーラスをしていたキャロル・デニスという女性との、 ディランの浮気が原因といわれている。 現在、ボブ・ディランは、2人目の奥様のそのキャロル・デニスとその娘と共に、 幸せな生活を送っているそうだ。 ・・・ディランの歌の中でも、この『コーヒー もう一杯』は、 ≪人生ってものは、どこまでも不思議な愛や恋や世界に満ちた、 神秘的な旅のようなものだぜ!≫と言っているような放浪の歌で、おれは特別に好きだなあ・・・。 ・・・聖人のようなディランも、女性には苦労があったんだよね。おれも女性には気をつけないと。 あっははは・・・。 ・・・しかしまあ、女性は神秘的な存在だって認識では、 女性の存在が、歌作りとかに不可欠の、インスピレーションや霊感の源だという認識では、 ディランもおれも、近いというか、とても似ているという気もする。あっははは・・・。 信也は、焙(い)りたての熱いコーヒーを飲みながらそう思った。 朝から、信也は、昨日、アマゾンから届いた中古の本の、 『バターになりたい ― 遠藤みちろう対談集』を読んでいた。 ・・・この本読んで、なんか、スターリンのみちろうさんの人柄がかなり分かった気がするなあ。 彼の生き方そのものが、好奇心が旺盛な子ども心の100%のような、 すなわち、ポップなパンク・ロックに限りなく近いような、青春であったり、 いくつかの恋愛があって、それも失恋で、それが歌作りのきっかけであったり・・・。 ・・・そして、みちろうさんは、パティ・スミスのファースト・セカンドアルバムに、 最も影響を受けたとは、新発見だった。彼女のサード・アルバムからはダメだとも言っているけど・・・。 信也はさっそく、午前中にアマゾンで、パティ・スミスのCDの、 ファーストとセカンドとサードの3枚を、合計1500円で購入したばかりだ。 ・・・パティ・スミスといえば、アメリカ女性で、1946年12月30日生まれで、 今年で70歳かあ。 彼女は、ボブ・ディランを尊敬していて、2016年の去年の末には、 ノーベル文学賞を受賞した、親友でもあるボブ・ディランの代役で授賞式に出席したとはね・・・。 ・・・みちろうさんも、なんだかんだと、詩や文学に関心の深い人なんですね。 パンクのライヴでは、かなりなハードなパフォーマンスで、おれもびっくりだけど・・・。 ・・・みちろうさん、この本の『あとがき』で、 「なんで、オレはうたを歌ってんだろう?」とか言っているけど、 おれも、あらためて考えさせられたですよ。 ・・・結局、歌や芸術は、真剣に生きていこうとするその中から、 自然と出てくるもんなんだってね・・・。理屈や技術とかじゃないんだよね。 1番に大切なのは、直観的なひらめきや、 瞬間的に思い浮かんだ着想とか、まあ、霊感のようなもので、 まあ、インスピレーションかな。あっははは・・・。 詩織が、午後4時ころに来るのを待ちながら、そんなことをぼんやりと思う信也であった。 ☆参考・文献・資料☆ 1.バターになりたい―遠藤みちろう対談集 ロッキング・オン (1984/12) 2.ボブディラン、女性遍歴の中から生まれた名曲の数々!祝ノーベル文学賞! http://fu3-akaneko.com/673.html ≪つづく≫ --- 126章 おわり --- |