メルマガ:少女の性シリーズ
タイトル:少女の性 246  2017/01/15


少女の性 第二百四十六部

宏一は正直に話すことにした。それ以外に思いつかなかった。由美の性格から、きっと宏一を許さないだろう事は分かっていたが、それが宏一にできる唯一のことだと思ったのだ。

「そうか・・・・・ばれちゃったね・・・・・・」

そう言ってから宏一は正直に話した。宏一はシステムエンジニアで会社全体のコンピューターシステムを整備する仕事をしていること、ある日偶然に木下部長と由美を見かけたこと、そして更に偶然に木下部長がお金をごまかす小さなプログラムを会社のシステムの中に仕組んでいたこと、そして、宏一がそれを利用して由美に近づいたこと、そして由美に自分のお金を使って抵抗できなくして抱いたこと等々。

宏一は、今は本気で由美のことが好きだったが、あえてそのことは言わなかった。それを言わないことが宏一が示せる小さな誠実さだと思ったからだ。もしかしたら自分への言い訳だったのかも知れないが。由美は静かにそれを聞いて、しばらく何も言わなかった。そして、宏一の話が終わってしばらくしてからやっと口を開いた。

「そうなんですか・・・・・わかりました」
「他に聞きたいことがあれば教えて」
「教えて下さい。宏一さんが毎週くれたお金は宏一さんのものなんですか?」
「そうだよ。仕事ばっかりしててどうせ使い道がなくて貯まっていくばかりだからって思って、それなら由美ちゃんに使おうと思ったんだ」
「本当ですか?」
「神に誓って本当だよ。絶対に。こんなことしておいて言っても説得力無いけど、とにかく信じて。本当に本当だよ。振り込み元を見てもらえばわかるはずだよ」
「わかりました・・・・・・・・」

宏一は由美に聞きたいことがいっぱいあった。しかし、今は由美が先だ。

「他に聞きたいこと、あるでしょ?何でも答えるよ。正直に」
「父が会社のお金を使うのを減らしてくれましたよね?あれは本当ですか?」
「うん、あれは、木下部長がお金をごまかすプログラムが動いたときに、その金額を自動的に3割から5割に減らすように別のプログラムを入れたんだ。だからその分、お金は減ったはずだよ」
「どうしてそんなことをしたんですか?」
「だって、由美ちゃんが部長が会社のお金を使うのを悲しんでたから・・・・・、それだけだよ。他に理由なんてないさ。でも、完全に止めてしまえば木下部長はまた何か他のことを考えるかも知れないから減らすだけにしたんだ」
「でも、そうしたら宏一さんが不正に手を貸したことにならないんですか?」

「なるだろうね。あの時はそんなに真剣に考えてなかったんだ。それに、このことは木下部長も知らないし、木下部長が不正にお金が入るように入力すると、俺の入れた別のプログラムが自動的に起動して金額を修正してプログラム自体が消えてしまうから部長のプログラムを見ても自動的に修正がかかるなんて普通のやり方じゃわからないと思うんだ。だから、きっと今でも会社は知らないと思うよ。きちんと全部のプログラムを調べるか、木下部長のプログラムを監視しているプログラムがあるかを調べればわかるとは思うけどね」
「でも、お金が少なくなったことを父が知れば、最初に大きいお金を入力すれば良いんじゃないんですか?」
「お金をごまかすにも、何か根拠が必要なんだ。その根拠になるお金が大きくないとごまかせないんだよ。だから木下部長がごまかしたお金が減ったのは由美ちゃんも知ってるだろ?」
「はい・・・・・・」
「だから、間違いなく部長に入ったお金は減ったはずだよ」

「宏一さんが振り込んでくれたあのお金は、本当に私にくれたものなんですか?」
「そうだよ。だって通帳も印鑑も渡しただろ?」
「はい・・・・・・・・」

その由美の様子が宏一には気になった。どうも由美の様子がおかしい。怒っているというより悲しんでいる感じなのだ。宏一に対して怒ることはあるだろうし、抱かれてしまったことや好きになってしまったことを悲しみ後悔することはあっても、悲しんでいる理由がよく分からない。

「どうしたの?」
「あの・・・・・・実は・・・・・・・」
「教えて。何でも聞くし教えるから」
「実は、あのお金、だいぶ使っちゃったんです」

そう言うと由美はまた目に涙をいっぱい浮かべた。

「そうなんだ・・・・・・・・」
「最近、母が検査入院を繰り返したりして、それで私が病院に行ってお金を払う時に、ちょっと母から渡されていた口座のお金が足りない時があって、それで・・・・最初は父からもらうまでって思って、一時的に使ってしまったんですけど・・・・・・でも父からはなかなか貰えなくて・・・・・それからも何回か・・・・・だから私は宏一さんにもっと好きになってもらわなきゃって思って・・・・・・・」

それは、まるで由美が悪いことをしたかのような言い方で、宏一に言い訳をしている感じだった。

「良いんじゃないの?由美ちゃんにあげたお金なんだから由美ちゃんが何に使おうと」
「でも、これは宏一さんのお金だし、宏一さんが私を騙してあんなことしたんだから、分かってしまったら返さなきゃいけないお金・・・・・・」
由美がそう言うのを聞いて、何となく宏一も分かってきた。由美は、宏一が由美を騙してお金をくれる代償に由美を抱いたのだとすれば、由美がそれを否定すると代償としてのお金の意味が無くなってしまうから、宏一に返さなくてはいけない筈だと言っているのだ。由美らしいロジックだと思った。本来なら、お金を叩き返して宏一を訴えるなり何なりすれば良いのだが、お金を使ってしまった以上、それができなくなってしまったと言っているのだ。それが由美が泣いている理由だった。
「返す必要なんて無いよ。由美ちゃんが自由に使えば良いんだ。だって、由美ちゃんを騙して渡したお金だもの」
「でも、それだと・・・・・・・・」

由美は、宏一が言うようにお金を自由に使ってしまうと宏一の援助の理屈を受け入れることになるので、宏一のしたことを受け入れることになってしまう。それだと宏一を憎むことができなくなってしまうと思ったのだ。それが宏一から連絡が来ても返事をしなかったり、火曜日に部屋に来なかった理由の一つだった。

「由美ちゃん、良いかい。順番に言うよ。由美ちゃんは、俺がしたことを怒ってるよね?」
「はい・・・・・すごく」
「そうだよね。当然だよ。騙して女の子を抱くなんて最低中の最低の犯罪だものね。それで、俺が渡したお金を使ったことを後悔してるんだね?」
「はい、それもすごく」
「そうだね。でも、このお金を渡す時に俺はなんて言ったか覚えてる?」
「最初は、父の使い込んだ分を帳消しにするためのお金だって。それから旅行に行った時に、少しその中から自分で使えば良いって。そして通帳と判子を渡してくれました」

「そうだよね。それじゃ、俺が由美ちゃんを騙したことと、由美ちゃんがお金を使ったことの間に関係はある?」
「ない」
「そうだよね?関係はない。だから、由美ちゃんは自由にお金を使えるはずでしょ?もっと言えば、俺は由美ちゃんに代償を払わなくちゃいけない。お金に換算できることじゃないけど、お金でドライにはっきりさせるのが一番良いんだよ。だから、その意味でも由美ちゃんはお金を使うことができる。そうだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ちがう?」
「わかりません・・・・・・。でも、もっとあって・・・・・」
「何が?」

宏一がそう言ったのを聞いて由美は少し怒った表情になった。

「宏一さんだって分かってるはずです。私が宏一さんを好きだって事です。そしてたぶん、宏一さんも私のことを少しは・・・・・」
「少しじゃないけどね。大好きだよ。でも、今の由美ちゃんは、もう俺のことを好きじゃないだろ?あんなことしたんだから」
「好きじゃないですけど・・・・・・・・・でも、やっぱり・・・・・・」

由美はやっと話が確信に入ったと思った。それこそが由美がずっと悩んでいたことだった。宏一に騙されていたことが分かっても、やっぱり好きなのだ。

「きっと私って、馬鹿な女ですね」

そう言う由美は、心から悲しそうな顔をした。

「宏一さんのことは大嫌いだけど、でも・・・・やっぱり好きだから・・・」
そう言われて宏一はなんと言って良いのか分からなかった。単に由美に責められるだけなら、謝って済むことではないが、できるだけ謝罪するしかないし、それから由美の好きなように訴えるなり何なりすれば良いと思っていた。しかし、その由美の心が揺れているのだ。
「今でも・・・・・やっぱり宏一さんに優しくして欲しい・・・・・・どうしてこんな気持ちに・・・・・どうして・・・・・」

そう言うと、二つに引き裂かれている心の痛みにポロポロと涙をこぼした。宏一もなんと言って良いのか分からない。こうなってはもう二度と由美を抱くことはないし、償えるものなら何でも受け入れれば良い、それが宏一の正直な気持ちだった。

「由美ちゃんの思うとおりにすれば良いよ。訴えるなり何なり」
「そんなことじゃないんです」

由美はそう言いながらも泣き続けた。

「訴えるとか何とか、そんなことじゃないんです。私の頭の中、もうぐちゃぐちゃで、自分でも全然わかんないんです。どうすれば良いのか、何をしたいのか、全然わかんない。宏一さん、どうしてこんなことをしたんですか」
「由美ちゃんがとってもかわいいと思って、魅力的で・・・・・」
「またそんなこと言って・・・・・・もう・・・・・・そんなこと聞いたら・・・・」

由美は宏一が正直に話をしていることが分かっているだけに、そんなことを言われると更に憎めなくなると思った。実際、宏一に会えばどんどん憎めなくなることが分かっていたからこそ火曜日にはここに来なかった、いや、気持ちが揺れるのが怖くて来れなかったのだ。

そのまま二人はしばらく黙ったままだった。どちらも何を言って良いのか分からなかったのだ。しかし、黙っていても仕方ない。

「由美ちゃん、どうすれば良い?」
「分かりません。それが分からないから・・・・・・分かっていたら・・・・・」
「それなら、このまま帰る?」
「帰ったって何も変わりません。それならここには来ません」

それを聞いた宏一は、由美がここで何かをしたいのだと思った。しかし、ここですることと言えば決まっている。でも、さすがにそう言う雰囲気ではないことくらい分かっていた。

「それじゃ、もう少し話をしようか・・・・・・」

宏一がそう言うと、由美も仕方ないかのように答えた。

「はい・・・・・・・」

そうは言ったが、由美だって何を話して良いのか分からない。由美が宏一との間に持っている思い出と言えば、最初の時を除けば、後は楽しい、幸せな思い出しかないのだ。今までは自分がこんなに幸せで良いのだろうかと思っていた。父親の役にも立っていて、更に大好きな人ができて・・・・・。強いて言えば正式に付き合っていないことくらいだったが、経緯が経緯だけに由美自身もそれは今まで考えていなかった。ただ、告って付き合って、と言う普通の恋人同士が歩むプロセスに憧れてはいた。ただ、そこまで自信が無かっただけなのかも知れなかった。
それからも少しの間、由美は黙っていた。しかし、すっと立ち上がると宏一の前に立った。

「どうしたの?」
「確かめてみたいんです」
「なにを?」

宏一が自信無さそうに言うと、由美は驚くことを言った。

「キスして下さい」
「え?」

さすがにこの状況では宏一も驚いた。

「いいけど・・・・・・いいの?」
「はい」

そう言うと由美は宏一の前に立って目をつぶった。宏一は何となく不安を感じたが、由美がそういうのだから仕方ない。由美の前に立つと肩を引き寄せてそっとキスをした。そのままゆっくりと舌を差し込んでみたが、由美は全く反応しない。

「んん・・・・・ん・・・・んんん・・・・」

それでも、少しキスをしていると由美の身体が柔らかくなった気がしたので再度舌を差し込んでみると、今度はほんの少しだけ小さな舌が応答した。しかし、それだけだった。宏一がさらに由美を抱きしめ、首筋へと唇を移していくと、

「もう良いです」
と言って由美は離れてしまった。

「どうしたの?」
「なんでもありません・・・・・・・」

由美はそう言ったが、由美は自分の気持ちを確かめてみたのだった。宏一を好きな気持ち、憎む気持ち、いろいろな気持ちが渦巻いているため、キスをしてみればはっきりするかと思ったのだ。

ただ、キスをすると、予想通り身体が少しずつ反応を始め、うっとりとしたくなる気持ちが沸き上がってきてしまい、そのままだと愛されたくなってしまうことがはっきりした。やはり身体は宏一を求めているのだ。由美はそれをどう受け止めるべきか戸惑ってしまった。全然反応しなければ、宏一から離れれば事は済む。しかし、これだけ宏一が由美を騙していることが分かっても、まだ宏一が好きなのだ。

更に由美を悩ませているのは、たぶん、このままではまた宏一からもらったお金に手を付けないとやっていけなくなるだろうと言うことだった。父親は母に渡してあるお金で何とかなると思っていて細かい確認はしていないし、母親は由美に通帳を預けていて『足りなくなったら言ってちょうだい』と言っているだけで残額がどれくらいになっているかは知らない。

それに由美が『心配ないよ。何とか足りてる』と言っているのでそれを信じているのだ。それにもし仮に由美が『足りなくなったからお金をちょうだい』と言っても、この状況では他からお金が出てくるとは思えず、もしその結果、母が病院に行くのを躊躇えば母の身体が更に悪くなるのではないかと心配している。だから、母が病院に行くのを止めるようなことは何が何でも避けたかったのだ。

しかし、もし由美が宏一からもらったお金を使うことにしたとしても、今までのように単純に、純粋に宏一を好きになることもまた不可能なのだ。宏一はお金を使っても良いと言うが、それでは由美の気持ちの整理が付かない。自分を騙した男から援助を受けるというのは、どう考えても納得できそうにないのだ。


つづく

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