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89章 きっと それは 快感 (Surely it is a pleasure) 7月25日の土曜日。よく晴れた日で、気温は30度をこえた。 渋谷駅から3分の、タワービルの2階にある、イエスタデイでは、午後1時から、 川口信也たちのクラッシュ・ビートと、南野美菜がメイン・ヴォーカルのドン・マイの、 コラボ(共演)ライヴが始まっていた。 イエスタデイのホールは、100席、すべて満席である。 株式会社モリカワが経営する、ライヴハウスであった。 午後4時を過ぎたころ。 2つのバンドのすべてのプログラムも終了して、 メンバーたちは、テーブルを囲んで、会話を楽しんでいた。 「ドント・マインド(don`t mind)って、バンドの名前もいいし、 やっている音楽も、おれ好きですよ」 川口信也は、テーブルの向かいの南野美菜や、 ドンマイのリーダーの草口翔に、そういった。 「そうですか。しんちゃんに、そう言ってもらえると、すごくうれしいです」 南野美菜は、そういって、信也とその隣にいる落合裕子に、微笑んだ。 「しんちゃんに、そう言ってもらえると、光栄ですよ。あっはは。ありがとうございます!」 草口翔もそういって、微笑んだ。草口翔は、ベースギターをやっている。 「ぼくは、しんちゃんの作った、『きっと それは 快感』が、特に、好きなんですよ。 きょう、聴かせていただけて、最高でした!」 パーカッションで、ドンマイの演奏に参加していた岡昇が、満面の笑みで、信也にそういった。 岡昇は、南野美菜の彼氏である。 「あっはは。『きっと それは 快感』は、バンドのみんなが苦労した作品なんですよ。 16分音符の、16ビートの、ダンスミュージックに仕上がってますからね。 ドラムも、16分シンコーぺーションで、アース・ウィンド&ファイアーの、 宇宙のファンタジーみたいな感じで、この曲では、勉強させてもらいましたよ。あはは。 ねえ、裕子ちゃん、裕子ちゃんも、この曲のキーボードは、難しかったよね!あっはは」 クラッシュ・ビートのリーダーで、ドラムの、森川純が、そういってわらった。 「ええ、大変でしたわ。純ちゃん。正確なリズムをキープしなくちゃって、 からだ全体で、リズムとっていましたもの。でも、達成感もありましたわ。うふふ」 落合裕子は、澄んだ瞳を輝かせながら、微笑んだ。 「裕子ちゃんも、お疲れ様でした。でも、この『きっと それは 快感』って、 詩の内容は重い感じなんだけど、軽快で最高なダンスミュージックに仕上がって、 きっと、ヒットも間違いなしだよね。あっはは。 おれのギターや、翔ちゃんのベースは、乾いたサウンドのカッティングとかで、 リズムをクリアにするので、苦労したんだけどさ。ねっ、翔ちゃん」 そういったのは、ギターの岡林明であった。 「まあ、苦労したぶん、よく仕上がった作品だと思うよ。あっはは」 ベースの高田翔太も、そういって、豪快にわらった。 ーーーーー きっと それは 快感 (Surely it is a pleasure) 作詞作曲 川口信也 鳥たちが 風にのって 空飛ぶ 動物たちは 野や山で 遊ぶ 草や樹が 大地に すくすく 育つ 魚たちも 海や川を すいすい 泳ぐ Ah ah (ぁぁぁ) どんなときにも 大切にしたいこと きっと それは 快感 Surely it is a pleasure 人間だって 快感こそは 人生の活力源だよね? どんなに 仕事で 忙(いそが)しいときにだって 愛し合う 二人で 週末に ワインを楽しむときも 平凡だけど 楽しい 生活を過ごすときだって Ah ah (ぁぁぁ) どんなときにも 大切にしたいこと きっと それは 快感 Surely it is a pleasure 8月15日 戦後70年の 節目だというけれど たくさんの 尊(とうと)い 命が散った 悲惨な 戦争 二度と起こしてならないと 反省して 誓った 平和憲法 この憲法を 守るのが ぼくらの使命のはずだと思う Ah ah (ぁぁぁ) どんなときにも 大切にしたいこと きっと それは 快感 Surely it is a pleasure 世界に 愚(おろ)かな 犯罪や 戦争は 絶(た)えることがない! それは 人びとは 快感や 幸福を求めて 生きているはずで そんな他者を 自分のことのように 思いやることもできずに 他者への想像力や愛が 欠如(けつじょ)しているからなんだろう! Ah ah (ぁぁぁ) どんなときにも 大切にしたいこと きっと それは 快感 Surely it is a pleasure 長いような 短いような 時間が流れる この人生 おれたちにできる 悔いのない 生き方って言えば この世の中や 人間が 良くなることを願いながら おれたちなりの ベストで 楽しく歌うことくらいなのさ Ah ah (ぁぁぁ) どんなときにも 大切にしたいこと きっと それは 快感 Surely it is a pleasure ≪つづく≫ --- 89章 おわり --- |