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改訂版☆37章 川口信也の妹の美結(みゆ)、やって来る (1) 4月19日。東京の渋谷は曇り空で、冬の寒さに戻ったようだ。 「美結(みゆ)さん、お誕生日おめでとうございます。 それと、大学のご卒業、おめでとうございます。 それでは、カンパーイ(乾杯)!」 新井竜太郎の乾杯の挨拶(あいさつ)で、川口信也と妹の美結、 信也の恋人の大沢詩織、竜太郎の恋人の秋川麻由美の5人は、 黄金色(こ がねいろ)の輝(かがや)きを放(はな)つ シャンパンの グラスを持つと、お互いの目を見ながら微笑(ほほえ)んだ。 「竜太郎さん、みなさん、ありがとうございます」 少し頬(ほお)を紅(あか)くして感謝を込めてそういうと、 美結(みゆ)は、弾(はじ)けるような笑顔で瞳を輝かせる。 こうやって、やっと初めて、お会いするわけだけど、 美結(みゆ)ちゃんは、やっぱり、磨(みが)けば宝石のような女性だ。 兄の信(しん)ちゃんも、おれとしては、俳優にしたいような、抜群な いい男だけど、妹の美結(みゆ)ちゃんも、すばらしいモデルにだって、 女優だってなれる、いい女だ。おれの目に狂いはなかった。 竜太郎は、ベージュのロングジャケットに、グレーのフロントタック ジャージーワンピースが似あう、21歳になったばかりなのにセクシーな 長い黒髪も色っぽい、プロポーションもルックスも稀有(けう)な美しさの、 身長171センチの美結(みゆ)に、そう思う。 つい今さっき、竜太郎は初めて美結(みゆ)と対面したのだったが、 たくさんの美人を見ることに慣(な)れていて、それが竜太郎の 仕事でもあるわけなのだが、美結(みゆ)の美貌には、ちょっと緊張して 心拍数も上がり、冷や汗が出る、そんな興奮を覚えた。 5人は、煌(きら)びやかな 摩天楼(まてんろう)を望(のぞ)める 渋谷の夜景レストラン、ザ・レギャン・トーキョーに来ている。 渋谷駅を降りて徒歩で3分、12階ビルの最上階にある、 寛(くつろ)いだ気分で楽しめる フランス料理店である。 先週の4月12日の土曜に、新宿の池林坊(ちりんぼう)で、 楽しく過ごしたとき、以前から竜太郎が、ぜひ会いたいといっていた、 信也の美結(みゆ)のことが、話題となった。 4月16日が誕生日で21歳になる美結(みゆ)が、19日、20日の 土日に、信也のマンションに泊(と)まりで遊びに来るというのだ。 「それじゃあ、ぜひ、ささやかながら、美結(みゆ)さんの誕生パーティーを やらせてください」と竜太郎がいい出したのである。 美結(みゆ)は、この4月に山梨県の短期大学の食物栄養科 (栄養士コース)を卒業したばかりであった。 少し前、竜太郎は信也に、美結(みゆ)の写真を見せてもらう。 そして仰天(ぎょうてん)したのだった。予想もしていなかった、 とびきりに美しい魅力のあふれる女性が、その写真の中で、 竜太郎に微笑(ほほえ)みかけていたのだから。 竜太郎はその場で、信也を説得し始める。 「美結(みゆ)さんほどの、人の心を引きつける力のある女性は、 100万人に1人いるか、いないかの、すばらしい女性ですよ。 信じられないくらいだけど、これは確かなことです。 そんなオーラ(雰囲気)を美結(みゆ)さんは確実に出している。 もしできることならば、うちのエターナルで働いていただきながら でもいいですから、ぜひ、うちの芸能プロダクションのクリエーション に入っていただきたいのです。つまり、美結(みゆ)さんは、 いますぐにでも芸能活動を始めるべきだと、おれは感じています。 美結(みゆ)さんは、そんなすぐれた逸材(いつざい)です。 抜きん出ています。すばらしい美貌(びぼう)の持ち主なんです。 おれとしては、このまま、放(ほう)っておけないのですよ」 信也は最初、笑うだけで、その話に本気にはならなかったが、 情熱をこめて語る竜太郎の言葉が、真剣そのもの本気なので、 「じゃあ、美結(みゆ)に話してみます」と竜太郎に返事したのだった。 美結にこの話をしたら、美結は「わたしもお兄ちゃんみたいに、 本当は自分の夢を追いかけてみたいの。だから、この機会に、 ぜひ竜太郎さんには、1度お会いしたいわ!」 という返事で、きょうのパーティーが実現したのであった。 ≪つづく≫ --- この章の続きは、4月30日ころの予定です --- |