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26章 TOP 5入り・祝賀パーティー (4) 12月1日、日曜日、正午ころ。開演までは、あと 10分。 派手(はで)さはないが、温(あたた)かな 趣(おもむき)のある、 赤レンガ造(づく)りの、 ライブ・レストラン・ビートの、 エントランス(入口)の 石段を 上(あ)がった フロント(受付・うけつけ)は、 チケットを手にする 来場者で、順番を待って、 長々と続く、二人ずつの 行列(ぎょうれつ)だった。 清原美樹(きよはらみき)、松下陽斗(まつしたはると)、 小川真央(おがわ まお)と 野口 翼(のぐち つばさ)も、 2列(にれつ)に 並(なら)んだ。 「なんか、びっくり。わたしたちのバンドの祝賀会に、 こんなに、一般の人たちが、来てくれるなんて!」 そういって、美樹は、隣(となり)の 真央にいった。 「いつのまにか、美樹たち、人気者になっているのよね!」 と真央が、 美樹に、それを祝福するように、やさしく、ほほえむ。 「そうなのかしら」と 美樹。 「美樹ちゃん、おれ、計算を 間違っていたよ」 美樹と真央の、うしろに並(なら)ぶ、 松下陽斗(まつしたはると)が、 清原美樹(きよはらみき)に 小さな声で そういった。 「どうしたの!?はる(陽)くん…」 と 美樹は、 陽斗(はると)に 振り向く(ふりむく)。 「さっきの 印税の 計算だけど。 シングルの売り上げを計算に入れるのを忘れてたさ。 なんか、抜けてるよな、おれ。 シングルを 計算に入れると、 ひとりあたり、293万円くらいの収入になるよ。 すごい、金額だ」 「うん、スゴすぎ…。でも、お金って、 たくさんあっても、困らないよね! 無(な)くて、困(こま)るよりは いいことよね!」と 美樹はいいながら、 真央ちゃんたちが いるんだから、 いまは、お金の話は、止(よ)そうってば…、と思う。 「いいわよね。美樹ちゃん。まるで 宝くじが 当(あ)たっちゃったみたいに、急に、 お金持ちになっちゃって。とても 羨(うらや)ましいわ」 そばにいる、小川真央(おがわ まお)が、そういう。 「でもね、真央(まお)ちゃん、お金って、 いろいろと、トラブルというのか、心配事(しんぱいごと)や 不幸(ふこう)を 招(まね)く、素(もと)でもあるのよね。 うちの父親や 姉が弁護士でしょう。法律事務所に、持ちこまれてくる話は、 ほとんどが、 お金が関係することばかりなんだから。 事務所の、お手伝(てつだ)いを、たまにしてるじゃない。 お金って、扱(あつか)いが、難(むずか)しいんだなって、 つくづく 感じちゃっうのよね。 人間を、狂(くる)わしちゃうんだもの」 といって、美樹は、ちょっと 困(こま)った顔をして、 真央を見る。 ≪つづく≫ |