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22章 メジャー・デヴュー・パーティ ー(2) G ‐ ガールズのメンバー5人が、フロアから見て、 ステージの右(みぎ)にある、控室(ひかえしつ)から、 大きな拍手の中、うれしそうに、元気な姿(すがた)で、 現(あらわ)れる。 清原美樹(きよはらみき)、大沢詩織(おおさわしおり )、 菊山香織(きくやまかおり)、平沢奈美(ひらさわなみ)、 水島麻衣(みずしままい)。 5人は、それぞれ、個性的な、普段着(ふだんぎ)で、 ステージ むけの ファッションではないが、かわいらしい。 「きょうは、わたしたち、グレイス・ガールズのために、 ご来店いただきまして、 ほんとうに、ありがとうございます! もう、わたしたち、その感激で、 控室(ひかえしつ)にいるときから、 涙(なみだ)が 出たりしているんですよ・・・」 リーダーの 清原美樹(きよはらみき)が、すこし、 緊張(きんちょう)しているが、微笑(ほほえ)みながら、 キラキラと瞳(ひとみ)を輝(かが)かせて、 語(かた)りはじめる。 「メジャー・デヴュー しませんか?という お話を、 モリカワ・ミュージックの 森川良(もりかわりょう)さんから いただいたのが、今年の7月の終わりころだったんです。 夢のような、すてきな お話で、信じられませんでした。 それから、まだ3カ月も たっていませんけど、 みなさまの強力なサポートに、支(ささ)えられながら、 本日、ファースト・アルバムも、発売することもできました!」 ライブ・レストラン・ビートの、高さ、8メートルの、 吹(ふ)き抜(ぬ)けのホールの、会場(かいじょう)は、 歓声(かんせい)や拍手(はくしゅ)につつまれる。 「アルバムを制作をしていた、この 1ヵ月間は、 まるで 夢を見ているように 幸せな 気分(きぶん)でした。 苦労もありましたが、充実(じゅうじつ)した 日々でした。 アルバムは、全部で、10曲です! およそ1カ月間で、仕上(しあ)げることができました。 レコーディングの時間は、正味(しょうみ)で、 20時間くらいです! 日ごろから、練習に励(はげ)んでいましたから!」 そこで、また、感心する、ため息のような歓声と、 拍手がわきおこる。 「みなさまの、ご支援(しえん)が、あってこその、 G ‐ ガールズなんです! ほんとうに、ありがとうございます! あの、ビートルズは・・・、 ファースト・アルバムの、プリーズ・プリーズ・ミー (Please Please Me)を、 正味(しょうみ)、10時間たらずで、 仕上(しあ)げたといいますから、 ビートルズには、かないませんでした! ビートルズは、やっぱり、さすがだと 思います。 それに・・・、 ビートルズの、プリーズ・プリーズ・ミーは、 全部で、14曲あります。 やっぱり、ビートルズは天才ですし、偉大です!」 清原美樹は、そういって、ほほえんだ。 会場からは、惜(お)しみのない 拍手がつづく。 観客たちは、1階と2階のフロアのテーブルで、 ゆったりと 飲食(いんしょく)を 楽しみながら、 くつろいでいる。 「そうか・・・。ビートルズは、ファースト・アルバムを、 10時間で、仕上げたんだっけ?」 そんな話をするのは、モリカワ・ミュージック、課長、 今回のアルバム制作の、総指揮の、 森川良(もりかわりょう)である。 「ええ、そんな話は、ビートルズの専門誌で、 読んだことがあります。ビートルズも、 G ‐ ガールズも、ライブで、鍛(きた)えられた、 ロックバンドには、違(ちが)いないですが・・・」 と、語(かた)るのは、森川良の右(みぎ)どなりの 席の、レコーディング・スタジオ・レオの、 島津悠太(しまづゆうた)である。 悠太のとなりには、 悠太のスタジオの エンジニアの、山口裕也(やまぐちゆうや)、 そのとなりには、 スタジオ・マネージャーの沢木綾香(さわきあやか)もいる。 「彼女たちが、20時間で、レコーディングを、 完成させたことには、 正直(しょうじき)、超驚(ちょう おどろ)き、なんですよ。 わたし、 終始(しゅうし)、冷静を装(よそお)ってはいましたけど」 と、森川良に語りかける、 悠太が、声を出して、明るくわらった。 ≪つづく≫ |