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17章 世田谷区たまがわ花火大会 (2) 手を振(ふ)るのは、 クラッシュ・ビートのベーシストの、 ちょっとふっくらタイプの、高田翔太(たかだしょうた)、 ギターリストの、岡林明(おかばやしあきら)だった。 その二人(ふたり)のうしろには、 森川純と親(した)しくなった、菊山香織(きくやまかおり)、 岡林明と、仲(なか)よくなった、山下尚美(やましたなおみ)、 高田翔太と、急接近中の、森田麻由美(もりたまゆみ)の、 早瀬田(わせだ)の2年生が、3人、いる。 先日の、地上200mの、 イタリアン・レストラン・ボーノ(Buono)で、 お祝(いわ)いをしてもらった、 若々(わかわか)しく、新鮮(しんせん)な、 今年、20歳(はたち)の彼女たちだ。 女の子は、色も柄(がら)も、可愛(かわい)らしい、 甚平(じんべい)や浴衣(ゆかた)が多かった。 男子(だんし)も、甚平(じんべい)や、浴衣(ゆかた)が多い。 森川純は、菊山香織(きくやまかおり)の、飾(かざ)ったり、 気(き)どったりしない、 ありのままであるような、そんな、自分よりも、明るい性格や、 社交性(しゃこうせい)に、 いつのまにか、心が、温(あたた)まっているのであった。 岡林明(あきら)は、山下尚美(なおみ)の、 黙(だま)りあっていても、心がひきあうような、 そんな尚美の、女性らしい、好感度に、ひかれた。 高田翔太(しょうた)は、森田麻由美(まゆみ)の、 いつも、落ちついていて、 大人(おとな)の女らしい、 仕草(しぐさ)や、言葉や、声(こえ)に、 『このひとこそが、官能的(かんのうてき)で、 おれが探していた、女性だ!』と、感動していた。 そんな彼女たちのうしろには、 岡林明の妹の、高校2年、16歳の、香織(かおり)。 香織の友だちの女子高生が3人。 彼女たち4人は、去年の、たまがわ花火大会にも、 この駅に、集合(しゅうごう)した、 いつも、仲(なか)よしの、4人だった。 「こんにちは!」と、岡林明の妹の香織が、 森川純に、いう。 3人の女子高生も、それぞれが、 「こんにちは!」と元気よく、笑顔でいう。 「香織ちゃんたち、大きくなったね。 オトナの女性って感じになってきたね! 浴衣姿(ゆかたすがた)も、最高! よく似合(にあ)っているね!」 そういって、純も、ほほえんだ。 「ありがとう!」と、香織たち、4人は、素直(すなお)に、 無邪気(むじゃき)に、わらった。 洋服と、比(くら)べて、不便(ふべん)が多い、 浴衣(ゆかた)ではあろうが、 真夏(まなつ)の、花火大会とかには、格別(かくべつ)な、 風情(ふぜい)や魅力(みりょく)がある。 「明兄(あきにい)ちゃんたちって、なんとなく、 去年(きょねん)と、違(ちが)うよね! 森川純さんも、高田翔太さんも。ね〜、みんな」 そういって、岡林香織が、3人の女子高生に、 話を振(ふ)る。 「そうよね、なんか、明さんも、翔太さんも、純さんも、 しあわせそうな顔しているわ!」 と、女子高生のひとりはいう。 「きっと、すてきな、彼女ができたからよね!」 岡林香織が、そういう。 「正解!鋭(するど)い、観察力(かんさつりょく)!」 と、わざと、困(こま)ったような、顔で、森川純がいう。 みんなで、大(おお)わらいをする。 そんな話をしているうちに、時刻は3時近(ちか)くになって、 次々と、みんなが、中央改札口からやってくる。 流行(はやり)なのか、ほとんど、男子(だんし)も、 女の子も、 カラフルな、浴衣姿(ゆかたすがた)で、やってきた。 川口信也(かわぐちしんや)が、「よーっ」と、 笑顔で、現(あらわ)れると、 信也に、寄り添(よりそ)うように、 大沢詩織(おおさわしおり)がいる。 清原美樹(きよはらみき)と、美樹の彼氏の、 松下陽斗(まつしたはると)もやってきた。 清原美樹の姉(あね)の、清原美咲(きよはらみさき)と、 美咲が、交際(こうさい)している、 弁護士(べんごし)の岩田圭吾(いわたけいご)。 2年生で、今年20歳(はたち)の、 グレイス・ガールズのギターリスト、 水島麻衣(みずしままい)も、 かわいい浴衣姿(ゆかたすがた)だった。 その水島麻衣が、急接近して、仲よくなっている、 ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の幹事長の 矢野拓海(やのたくみ)。 MFCの会計をしている、岡昇(おかのぼる)。 その岡と、最近、交際(こうさい)を、 始(はじ)めたばかりの、 3年生、21歳の、南野美菜(みなみのみな)。 岡も美菜も、浴衣((ゆかた)だった。 MFCの、副幹事長の、谷村将也(たにむらしょうや)。 その谷村と、やはり、交際を始めたばかりの、 南野美穂(みなみのみほ)もやってきた。 南野美穂は、南野美菜の姉(あね)である。 今年、23歳で、 キャリア・ガールっぽく、仕事にも熱心な、 会社勤(つと)めの、社会人だった。 美穂の浴衣姿(ゆかたすがた)も、 人目(ひとめ)を引(ひ)くほど、かわいらしい。 美穂(みほ)と、美菜(みな)は、価値観も 似(に)ている、とても仲のよい、姉妹(しまい)だ。 谷村将也に、美穂を紹介した、 愛のキューピット役(やく)は、 岡昇と、美菜であった。 そんな世話好きな、岡と、先日までは、 デートしたりして、親しそうにしていた、 1年生、今年、19歳の、平沢奈美(ひらさわなみ)は、 3年生、6月に、21歳になったばかりの、 上田優斗(うえだゆうと)と、 いま、つきあい、始(はじ)めていた。 そのふたりも、なかよく、浴衣姿で、現(あらわ)れた。 ≪つづく≫ |