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16章 地上200mの誕生パーティー (3) 矢野拓海(やのたくみ)が、スピーチ(話)をつづけた。 「えーと、ことし、20歳(はたち)の方(かた)は、 男性が、谷村将也(たにむらしょうや)さん、 渡辺太一(わたなべたいち)さん、野口翼(のぐちつばさ)さん、 石橋優(いしばしゆう)さん、の4人の方です。 えーと、 女性は、菊山香織(きくやまかおり)さん、 水島麻衣(みずしままい)さん、山下尚美(やましたなおみ)さん、 和田彩加(わださやか)さん、桜井(さくらい)あかねさん、 森田麻由美(もりたまゆみ)さん、 杉田由紀(すぎたゆき)さん、の6人の方です。 みなさん、20歳(はたち)のお誕生日おめでとうございます」 みんなから、割(わ)れんばかりの拍手がわきおこる。 「それでは、森川純さんに、乾杯(かんぱい)の音頭(おんど)を、 頂戴(ちょうだい)したいと思います。 みなさんは、 座(すわ)ったままで、構(かま)いません。 お手元(おてもと)のグラスに、 お飲物(のみもの)をご用意(ようい)ください。 それでは、純さん、よろしくお願いします!」 「それでは、今年(ことし)、20歳(はたち)の誕生日の、 みなさまと、 ここに、お集まりの、すべてのみなさまの、 音楽活動のご発展や、 永久(とわ)のご幸福(こうふく)を、祈念(きねん)いたしまして、 乾杯(かんぱい)いたしたいと存(ぞん)じます。 それでは、みなさま、ご唱和(しょうわ)願(ねが)います! カンパーイ!」 純が、元気よく、乾杯(かんぱい)の音頭(おんど)をとった。 「カンパーイ!」「カンパーイ!」 フロアには、みんなの明るい声が上(あ)がる。 華(はなやか)やかな、若い男女が、あふれる、パーティーは、始まった。 「みなさーん。このイタリアン・レストラン・ボーノ(Buono)の、 総料理長さまから、お話があるそうです。 総料理長さまは、南イタリアで、10年間の修行(しゅぎょう)を、 積(つ)んでこられた、 本格的な職人さんであり、超一流の料理人さんであるんです。 どうぞ、総料理長さま」 と矢野拓海が笑顔で、総料理長を紹介した。 「わたくしが、総料理長を、おおせつかっている、 春山俊(はるやましゅん)です。 きょうは、みなさまの、ご来店を、心より、 感謝いたしております。 わたくしどもの、まごころをこめて、作っております、 ナポリ・ピッツァや、 素材(そざい)に、こだわった料理を、 ごゆっくり、お楽しみいただきたいと存じます。 特別・お誕生日・記念の料理と デザート盛合せなども、 ご用意させていただいております。 以上、簡単な、ご挨拶ではありますが、 きょうは、みなさま、ごゆっくりと、お楽しみください!」 深々と、一礼する、総料理長に、拍手はが、鳴(な)りやまなかった。 パーティーは、地上200mの高層ビルの、 開放感(かいほうかん)あふれる、大パノラマの空間ということもあって、 ムードも、満点で、 ナポリ・ピッツァも、最高においしく、大いに、盛り上がった。 そして、日も暮れる、7時を過ぎた。 「純ちゃんにも、いよいよ、恋の季節がやってきたのかな?」 そういって、森川純を、ちょっと、からかうのは、生ビールで、 気分もよく、酔っている、川口信也だった。 純のいるテーブルまわりには、男ばかり、いつもの、酒飲み仲間の、 クラッシュ・ビートのメンバーが、自然と集まっている。 「恋の季節か!?・・・かもしれないなあ!? おれって、どこへ飲(の)みに行っても、女の子のほうから、 近寄(ちかよ)ってくるじゃん。あっはっは」 「のろけるな、純」と、信也が純の頭を、拳骨(げんこつ)で突(つつ)いた。 クラッシュビートの全員が、わらった。 「確かに、純はいいよな。モリカワの次男だっていうだけで、 そりゃあ、女の子のほうで、ほっとかないよな」 と、ベース担当の高田翔太(たかだしょうた)。 「しかし、おれに近づいてくる、女の子って、おれよりも、 モリカワの次男っていうとこになんだよなぁ」 「あっはっは。わかっているじゃん!純ちゃん」と信也はわらった。 「まあ、わらわないで、おれの話をきいてくれ、みんな。 けどね、菊山香織ちゃんとは、何か違うんだよ。 こう、なにか、胸というか、ハートにくるものがあるんだ」 「純ちゃん、ごちそうさま。おふたりの、幸せを祈っていますよ!」 と、リード・ギターの岡村明が、ほほえんだ。 「しかし、まあ、男女関係、恋愛は、奥(おく)が深いというか、 人間の永遠のテーマ(課題)だよね。 男と女の、いろんな営(いとな)みがあるから、 子孫も繁栄するんだし、新しい芸術も、生まれるんだろうから」 と、酔っている、信也。 「おお、しん(信)ちゃん、きょうから、マンガ評論家から、 未来人類学者に、転向したのかな?!」と、酔っている、純。 ≪つづく≫ |