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タイトル:雲は遠くて <46>14章 美樹と詩織のテネシー・ワルツ (3)  2013/07/21


14章 美樹と詩織のテネシー・ワルツ (3)

「わたしね、詩織ちゃんが、この女の子だけのバンドに、
参加してくれたなら、バンド名を、グレイス・フォー
(GRACE・4)って、いいかなって、考えているのよ。
詩織ちゃん、抜群(ばつぐん)にかわいいし」
と、親(した)しげに、美樹は、話す。

「そんなことないですよ。わたしより、美樹さんのほうが、
すてきです。香織さんも、すてきですし、奈美ちゃんも、
わたしなんかより、かわいいですよ」
といって、詩織は、照(て)れた。

「じゃあ、わたしたち、みんな、かわいいってことにしましょう。
グレイスって、優雅とか、神の恵みとかの意味ですから、
優美(ゆうび)な、4人っていう、バンド名なんです・・・」

美樹は、詩織に、気持ちをこめて、そういった。

「すてきなバンド名だと思います!
ぜひ、仲間に入れてください。
美樹さん、香織さん、奈美さん、真央さん、岡くん」

大沢詩織は、みんなに、ていねいな、お辞儀(じぎ)をした。

「詩織ちゃん、ありがとう。感謝(かんしゃ)するのは、
わたしたちのほうよ。これからは、ずーっと、いつまでも、
よろしくお願いしますね。
あ〜、よかったわ、詩織ちゃんが、バンドに入ってくれて!」

よほど、相性も、良いのだろう、
みんなも驚(おどろ)くほど、
親友のように、なってゆく、美樹と詩織であった。

「でもさあ、岡くんてさあ、なんで、いつも、詩織ちゃんと、
一緒(いっしょ)なことが多いのかしら?」

菊山香織が、岡に、そう聞いた。

「それはですね。詩織ちゃんとは、お話ししていて、
楽しいからです」

といって、ちょっと、口(くち)ごもって、いうのをためらう、
岡昇(おかのぼる)であった。

「はあ、岡くん、それって、詩織ちゃんのことが・・・」

そういって、菊山香織も、言葉を止(と)める。

詩織ちゃんには、何かと、癒(いや)されるんですよ。
そっれで、知らず知らずのうちに、
詩織さんと親しくなってゆくんですよ」

なぜか、岡は、そういって、顔を紅(あか)らめた。

「なーんだ、それって、岡くん、詩織ちゃんのことが、
好きだってことじゃないの!?」と香織。

「ピンポーン!正解です。けど、これは、
おれの叶(かな)わない恋だったということなんです」

と、岡は、気持ちを切り替(か)えたように、声を大きくした。

「おれ、詩織ちゃんに、おれの気持ちを、
告(こく)ったのですけど。
見事(みご)に、フラれちゃったのです。
逆(ぎゃく)に、わたしのこと、ほんとに、好きならば、
わたしに、川口信也さんを紹介してくれないかな?
って、詩織ちゃんには、頼(たの)まれちゃいました。
それで、おれは、愛のキューピットの役(やく)を、
引き受けたんですけどね。
詩織ちゃん、信也さんと、うまくいっているようですし、
おれとしては、つらいところもあるんでしょうけど、
これって、しょうがないことですよね!」

そういって、岡は、みんなに同意を求めるから、
みんなは、うんうん、と、うなずいたりする。

だから、おれは、男らしく、身を引きながら、
詩織ちゃんのしあわせを、
いまも、願っているわけなんですよ」

岡は、うつむき加減に、言葉を確かめるようにして、
そんな話(はなし)を、締(し)めくくった。

「岡くん、偉(えら)いわ。男らしいわよ」

菊山香織は、隣にいる岡の左肩を、
励(はげ)ましをこめて、軽く、さすった。

「岡くんは、立派だと思うわ」と、美樹もいう。

「岡くんは、いまに、詩織ちゃんみたいな、
かわいい彼女が、絶対に現(あらわ)れるわよ!」

岡と、同じ1年の、ベースギターの、平沢奈美も、
そういって、励(はげ)ました。

≪つづく≫ 

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