|
12章 ザ・グレイス・ガールズ (3) そんな幹部の活躍もあって、健全(けんぜん)を保(たも)っている、 ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の中でも、 女の子だけが、4人という、バンドは、現在はなかった。 ドラムができる女の子は、なかなか、いなかった。 そんなわけで、グレイス・フォー(GRACE 4)は、目立(めだ)った。 ドラムスの菊山香織(きくやまかおり)の場合は、 3つ年上(としうえ)の兄が、バンドで、ドラムをやっている。 その兄から、1から10まで、ほとんどを、習(なら)った。 サザンオールスターズ・祭(まつ)り、のための、 サザンのカバー、『私はピアノ』の練習をしているとき、 「やっぱり、もうひとり、ギターが欲(ほ)しいよね・・・」と、 メイン・ヴォーカルとギターやっている、 1年生の大沢詩織(おおさわしおり)がいい出した。 ふたつのパートの掛け持ち(かけもち)は、きついよね、と、 メンバーのみんなも認めて、ギターを探(さが)すことになった。 グレイス・フォー(GRACE 4)に誘(さそ)えそうな、 ギターが弾ける女の子は、MFCのなかに、3人ほどいた。 そのなかのひとり、水島麻衣を、メンバー全員が推(お)したのだった。 「わたしたちのバンドに入ってくれて、うれしいわ、本当(ほんとう)に、 麻衣ちゃん」 水島麻衣(みずしままい)と、同じ2年生の、 ドラムの菊山香織(きくやまかおり)が、 ドラムのスティックを、高く放(ほう)り投げて、 空中で回転させながら、そういって、ほほえんだ。 「これから、ずーっと、よろしく、お願いします。 わたしたちのバンド、結成して、まだ半年ほどですけど、 社会人になっても、ずーっと続けたいねって、 みんなでいっているですよ」 ヴォーカルとギターをやってきた、1年生の 大沢詩織(おおさわしおり )が、笑顔でそういった。 これからは、ヴォーカルをもっと、がんばれそう・・・と、詩織は思う。 「グレイス・フォー(GRACE 4)という、バンドの名前も、 麻衣(まい)さんの加入の、お祝(いわ)いも兼(か)ねて、 ザ・グレイス・ガールズ ( THE GRACE GIRLS )に 変えるんですよ。 GRACEという英語は、 上品で美しいこととか、優雅(ゆうが)とか、 恩寵(おんちょう)という意味がありますから、 優美(ゆうび)な少女たちとか、 神の恵(めぐ)みの少女たちという意味なんですものね。 すてきなバンド名で、わたしも気に入っているんです!」 はずんだ声で、ベースギター・担当の、1年生の、 平沢奈美(ひらさわなみ)が、 2年生の水島麻衣(みずしままい)に、そう話した。 「わたしも、すてきな名前だと思います。 わたしたちに、ピッタリじゃないでしょうか?! ちょっと、いいすぎでしょうか。 でも、みなさん、バンド名にふさわしい、 すてきな人ばかりで・・・。 わたしも、ギターとか、はりきっちゃいます!」 「麻衣ちゃん、本当によろしく」といって、 清原美樹(きよはらみき)が、 水島麻衣(みずしままい)の手をかたく握(にぎ)った。 「美樹さん、みなさん、こちらこそ、よろしくお願いします」 水島麻衣(みずしままい)の瞳が、うっすらと、潤(うる)んだ。 ≪つづく≫ |