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11章 ミュージック・ファン・クラブ (4) 「それにしても、MFC(ミュージック・ファン・クラブ)には、 女の子がたくさんいますよね。 早瀬田(わせだ)の中の、かわいい子ばかりが、 集まっている気がします。 おれって、女の子には、いつも、奥手(おくて)なんですけど、 このサークルで、知り合った女の子たちで、 すてきだな思うのは、あのへんの子たち。 いつも笑顔がかわいい、児島(こじま)かおるさんとか。 長い髪がチャーミング(魅惑的)な、和田彩加(わださやか)さん。 あと、あそこの、ミニスカートが抜群、足のきれいな、 桜井(さくらい)あかねさん。 彼女のとなりにいる、おんなっぽい、森田麻由美(もりたまゆみ)さん。 あと、あそこにいる、 杉田由紀(すぎたゆき)さん、山下尚美(やましたなおみ)さん 男心をくすぐる、何かを持ってますよね、彼女たちはみんな・・・」 と、森隼人(もりはやと)は、好きなように、しゃべりまくった。 おいおい、そんなことまで、聞いてないって、森ちゃん。 と、岡は心のなかで思った。 矢野拓海(たくみ)も、谷村将也(たにむらしょうや)も、 おたがいに、顔を見合わせて、困ったように、わらった。 戸山(とやま)キャンパスの西隣(にしとなり)、 西早瀬田(にしわせだ)キャンパスの、理工学部で学んでいる、 森隼人(もりはやと)は、コンピュータやデジタル技術に詳(くわ)しく、 自分の部屋にあるデジタル機器を使って、 音楽の編集やアレンジ(編曲)をすることが好きであった。 そのうえ、森隼人(もりはやと)には、家柄のいいような、 気品もどことなくあって、容姿も整(ととの)っているから、 サークルの女子の部員にも、ほかの女子学生にも、人気があった。 森隼人(もりはやと)は、中田ヤスタカ、が好きだった。 パフューム(Perfume)や、きゃりーぱみゅぱみゅの歌の、 プロデューサー(製作責任者)の、中田ヤスタカは、 楽曲制作のほとんど、すべてを、 ソフトウェア音源で行(おこな)っていて、 森隼人(もりはやと)もそんな音楽制作に深く共感している。 「ところでさ、おれにはどうも、わからないんだけど。 あそこにいる、ふたり、大沢詩織(おおさわしおり)ちゃんと、 清原美樹(きよはらみき)ちゃんなんだけど。 最近、女の子たちだけ、4人で、ロックバンド組(く)みましたよね。 バンドの名前、グレイス・フォー(GRACE・4)っていって、 美女4人に、ふさわしい、いい名前だと、ぼくも思うけど。 グレイスって、優美とか、神の恵みとかですからね」 といって、森隼人(もりはやと)は、声を出してわらった。 森の話に聞き入っている、みんなは、それでどうしたの? という、興味津々(きょうみしんしん)って顔をした。 「それって、なんか、おれには、信じられないんですよ。 だって、美樹ちゃんは、川口信也(かわぐちしんや)さん と、つきあっていたんですすよね。 でも、いまは、詩織(しおり)ちゃんが、 川口さんと、つきあっているっていうのが、事実ですよね。 ひとりの男性をめぐって、美樹ちゃん、詩織ちゃんは、 気まずくなっているんだろうな?と思ちゃうんですよ、ぼくなんか。 ところが、美樹ちゃんと詩織ちゃん、ふたりとも、 前より、親しくなっちゃって、仲(なか)いいじゃないですか!?」 理工学部1年、19歳の、森隼人(もりはやと)が、小声で、 同じく、理工学部3年で、21歳の、サークルの幹事長の矢野拓海(たくみ)、 商学部2年、20歳の、谷村将也(たにむらしょうや)、 商学部1年、19歳の、岡昇(おかのぼる)の3人に、 そんなふうに、問(と)いかけた。 ≪つづく≫ |