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[情報の評価]原発推進派の大勝利は驚きだ(英タイムズ)への回答=日本国民 は騙された/約7割の反原発意思封殺とフクシマの根本アポリア(2/2) <注記>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。/ http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20130102 2 12/16衆院選で記者クラブが封印した原発政策の根本的アポリア(二つの 解決不能問題) (1)「使用済核ゴミ捨て場の不在/トイレなきマンション」 (2)「使用済核燃料プール保管の超リスク」(フクシマ4号機超リスクの 根本) ●特に、(2)「使用済核燃料プール保管の超リスク(フクシマ4号機超リス クの根本)」は、これが一般国民の共通認識レベルで一気に表面化すると世界 中の原子力平和利用(原発利用)政策の全てが直ぐにも瓦解しかねない大政治 問題化する可能性が高いので、各国政府は秘匿に腐心してきた。(画像『使用 済み燃料の貯蔵プール』は、http://urx.nu/2RTs より) ●しかし、当然ながらフクシマ3.11原発過酷事故(特に、4号機事故/問題の 核心は建屋倒壊の可能性よりもプール保管そのものの是非という点にある)が 此の問題の発火に直結する可能性があることを百も承知の各国政府(特に、 IAEAのリーダー米国)は神経を尖らしており、日本政府(民主・自民の如 何に関係なく)は米国側の意向に従うしかない微妙な立場に立たされている、 と考えられる。 ●冷泉彰彦氏(詳しくは、以下の(2)を参照乞う)は、一定の原発利用は必 要とする立場であるが、日本がフクシマの事故原因(特に、4号機=プール保 管の超リスク!)について原因検証が不十分なまま原発を再稼働し推進しよう としていることについては厳しく批判している。 ●冷泉彰彦氏が以下(該当レポート)で指摘し、懸念する「使用済核燃料プー ル保管の超リスク(フクシマ4号機超リスクの根本)」は、(1)の問題と共 に今回の総選挙の争点から外されただけでなく、その後の民主党⇒自民党への 政権交代セレモニーの喧騒の中で経済マター最優先の空気を演出する記者クラ ブメディアが、再び総掛かりで中途半端なウヤムヤの形で(1)、(2)の一 般国民レベルでの顕在意識化を先送りしており、この様な異様な環境下で原発 推進が再起動しつつあること自体が日本の最大の危機である。 (1)「『東陽町(高知県)核最終処分場問題』が象徴する使用済核ゴミ捨て 場の不在(トイレなきマンション問題) ◆「東陽町(高知県)核最終処分場問題の概要」(ウィキペディアより) ・・・2007年(平成19年)、田嶋裕起町長(当時)が高レベル放射性廃棄物最 終処分場の候補地選定に向けた文献調査を町議会に諮らないまま原子力発電環 境整備機構(実際に最終処分場として受け入れるかは別として、調査を受け入 れることによる補助金が目当てだったと真相報道 バンキシャ!(日本テレビ 系)及びワイドスクランブル(テレビ朝日系)の取材で明らかにしていた)に 申請していた。このことは「ワイドスクランブル」が最初に取り上げたことか ら発覚した。 ・・・推進派と反対派で町政が混乱し、橋本大二郎高知県知事(当時)や、隣 接する徳島県の飯泉嘉門知事も反対し、機構理事長の山路亨に対し直接受理の 撤回を求めるなどの状況のなか、田嶋が「町民の真意を問いたい」として辞職 したことに伴う4月22日投開票の出直し町長選挙では、反対派の沢山保太郎が田 嶋の2倍以上の票を得て初当選。4月23日に応募撤回を表明、原子力発電環境整 備機構側もこれを受け、取り下げる方向で話を進めるとしており[1]、事態は終 息に向かいつつあるが、町民同士の間に出来た溝が埋まらなかったため、その 時期に行われる予定だった300年の歴史がある五社神社大祭が初めて中止になっ た。 ・・・以下は、[原発政策ってこんないい加減なものだっだんですか(マル激 第317回)2007年04月27日、http://www.jimbo.tv/videonews/000375.php ]よ り転載・・・ <見えてきた原発政策の限界/ ゲスト伴英幸氏(NPO法人原子力資料情報室共 同代表) > 今度の地方選挙には、隠れたもう一つの争点があった。それは、今後日本が、 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の処分場を見つけることができる かどうかだった。いわゆる「トイレ無きマンション」問題である。 現在日本の原発で発生する核のゴミは、暫定的に青森県の六ヶ所村や茨城県東 海村の再処理施設にプールされている。しかし、どんなに遅くても2030年まで にはガラス個体で固めた放射性廃棄物を半永久的に埋めておく最終処分場を見 つけなければならない。 しかし、原発推進側の最初で最後の望みだった高知県の東洋町はこの選挙で、 20億円と引き換えに町の土地の300メートル地下に「核のゴミ捨て場」を提供 する方針を打ち出した前町長を落選に追い込み、誘致反対派の候補が新町長に 当選した。これで日本の原発政策の「トイレ探し」はまた振り出しに戻ってし まった。 実際、日本政府は最終処分場探しに躍起になっている。「手を挙げるだけで2 億円」と揶揄された立候補地に対する事実上の報奨金も、2億円では過去5年 間どこからも手が挙がらず、ご褒美を20億円に増額したところ、ようやく日 本中でただ一つ東洋町が手を挙げていた。 これは文献調査を行うことのみに対するインセンティブということなので、文 字通り報奨金と呼ぶべき性格を持つ。今回争点となった東洋町の前町長は、こ の立候補が財政難に苦しむ町財政を救うための報奨金目当てであることを明言 し、自ら職を辞して選挙に訴えることで、民意を問うていた。 もっとも東洋町の場合、活断層が近くを通ると言われ、実際に処分場が建設さ れる可能性は低いとの見方が強かった。つまり、本当に「手を挙げただけで2 0億円」で終わる可能性が高かった。にもかかわらず立候補地一つ現れないの が、現在の日本の原発政策の実情なのだ。 日本に限らず、核廃棄物を最終的にどこにどう処分するかは、世界中で問題に なっている。原発問題に長年関わってきた伴氏によると、日本以外の国でも、 まだ最終処分場が確保できている国は一つも無い。しかし、それでも先進国の 多くが依然として原発にこだわる理由を伴氏は、「日本以外の原発大国はほと んど例外無く核兵器保有国であるため」と説明する。核保有国は安全保障上の 理由や軍事的な理由から、原子力政策を継続していく必要がある。しかし、核 兵器の保有を明確に否定している日本には、本来はその必要性は無いはずだ。 伴氏は、相次ぐ事故や処分場の問題などを考慮に入れた場合、必ずしも合理的 とは言えなくなってきている原発に日本政府が依然としてこだわり続けること の真意は、核オプションを維持したいとする一部の政治勢力の思惑にあるとの 見方を示す。核兵器を製造する上で必要になるプルトニウムを抽出するための 核燃料の再処理に日本がこだわり続ける理由も、「アメリカが認めてくれてい る数少ない既得権益だから」と伴氏は言う。 しかしそれにしても、昨今明らかになった400件を越える事故隠しや、市民 社会が監視機能を果たすことを困難にしている明らかな情報公開の不備、安全 性や事故の深刻さを中立的な立場から「リスク評価」できる食品安全委員会の ような第三者機関の不在、そして極めつけとも言うべき「トイレ問題」など、 日本の原発政策はあまりにも多くの問題を抱えたまま、見切り運転を続けてい る実態が今明らかになってきている。 ここは一つ取り返しのつかない事態に陥る前に、原子力政策を今一度しっかり 再考しておく必要がありそうだ。伴氏とともに、日本の原発政策の現状と今後 の課題を考えた。・・・以下、番組内容は省略・・・ (2)「使用済核燃料プール保管の超リスク」(フクシマ4号機超リスクの根 本) ・・・以下は、[フクシマ3.11を無視して原発推進を勇ましく叫ぶ安倍政権の 関係者あるいは財界人など非常に無責任な日本の国策原発の責任者たちはヤッ コ米NRC前委員長のコトバ(下記、NHK/BS1ドキュメンタリーWAVE、 12/23)を真摯に聞くべきだ!/同時に、原発推進派であれ反対派であれ、核 燃サイクル(使用済核ゴミ捨て場の不在の問題に関わる)と共に「使用済み核 燃料保管リスク(フクシマ4号機問題と繋がる)」に関わる意識の共有化が肝 心であることに目覚めるべきだ!それは、一般メディアは殆ど報じないが此れ こそが全世界の原発利用国に共通する、隠された(しかもアポリア化した)非 常に深刻な政治マターであるからだ、そして日本は其の隠された超リスクの最 先端に立たされていることを強烈に自覚すべきだ!(詳しくは、末尾へ転載し たUSAレポート/冷泉彰彦氏、http://urx.nu/2Q4K 配信日:2012-06-02)] 、http://urx.nu/2RTh より転載・・・ <注>NHKは、番組『原発の安全を問い直す/詳細、下記』で「ヤッコ氏は原 発反対派の人間ではないが、自分の目で見たフクシマの現実(プラント被害 (最大の関心事は、フクシマ4号機超リスク(使用済核燃料プール保管問題の 核心)の究明)と考えられる)および周辺の人的被害者らについて、つまり原 発事故全体の現状)を米政府へ伝えて原発の安全についての根本を考え直す契 機にしたいと思っている。」と総括している。 (ヤッコ米NRC前委員長) ・・・多くの人がここ(フクシマ)に来て、何が起きたのかを自分の目で見る べきです。 このような事故を招いてしまったことに、原発業界の人間として弁解の余地は ありません。 今回の事故から学んで、世界中で二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。 ・・・私は、これからも日本政府に協力し支援の方法を模索したいと思います。・・・ 出典:『NHK/原発の安全を問い直す』ドキュメンタリーWAVE▽原発の “安全”を問い直す〜米NRC前委員長 福島への旅 BS1 放送日時: 2012年12月23日(日) 午後0:00〜午後0:50(50分)http://urx.nu/2Q4F 番組HP http://www.nhk.or.jp/documentary/ ・・・この夏、アメリカNRC(原子力規制委員会)のグレゴリー・ヤツコ前 委員長が福島への旅に出た。今も放射能汚染に苦しむ被災地の実情を直接に見 て、避難を強いられている人々の声に耳を傾け、さらに事故の調査検証委員会 のメンバーと議論を交わすためだった。原発大国アメリカの原発の安全に関す る責任者だったヤツコ氏。原発事故によってもたらされた現実に、何を感じ、 何を考えるのか…。ヤツコ氏の福島への旅を追った。・・・ 「福島第一4号機の謎と、米NRCヤツコ委員長の辞意」(from 911/ USAレポート / 冷泉 彰彦) 大飯原発の再稼働問題に関して、動きが急になってきました。私は、エネル ギーの多様化を進める中での、変動のない電源供給の一つである原発の供給力 は維持したほうが社会全体のリスクが低くなるという立場です。ですが、福島 第一の事故原因が曖昧なままの再稼働というのは、いかにも拙速な印象を与え ます。 と言っても、主要な原因は震災と津波による全電源喪失だということは分か っているわけです。とりわけ、福島の1号機から3号機に関しては、詳細の経 緯はともかく「非常停止時の全電源喪失」を避けることができれば、再発は防 げるという中核の部分に関しては原因に関する専門家と社会の合意はできてい るわけです。 ですが、私がどうしても気になるのは4号機です。4号機に関しては、事故 当時は定期点検中のため原子炉内の燃料棒は全て除去されて、使用済み燃料棒 と定期点検のため使用中の「熱い」燃料棒が、建屋内の上部(オペレーション フロア)にある「燃料プール」で冷却されていました。事故当初は、この冷却 水循環が止まり、加熱した燃料棒のジルコニウム皮膜から水素が発生して爆発 したという理解がされていたのです。 この燃料棒の加熱を防止するために、何よりも東京消防庁や自衛隊の「決死 隊」が編成されて注水の作業が必死に行われたことから考えて、4号機の水素 爆発に関しては「プール内での燃料棒加熱」という説明、また「燃料プール空 焚き」という解説もされています。 ですが、その後に東電は何度も「燃料棒の写真を見ると損傷していない」と いうことから、「燃料プール空焚き説」を否定しています。私はこの説明に関 しては、一度も信じたことはないのですが、信頼できる人物で、この事件を現 在に至るまで綿密に取材しているジャーナリストの方からも「空焚きはなかっ た」というコメントをもらっています。どうやら「空焚き」や「燃料棒の冷却 停止による加熱」というのは「なかった」というのが政府と東電としては、強 固な公式見解であるようです。 その代わりの説明としては「3号機の燃料棒加熱で発生した水素が配管を通 じて4号機の建屋に回った」というのです。確かに3号機と4号機はタービン 建屋でつながっていますが、3号機と4号機には稼働時期にも2年の差がある 中で、配管は独立していると考えられます。また、仮に行ってはならない水素 が遠くの4号機まで回った、そんなことが起きるまでに「配管に損傷があっ た」のであれば、事故の位置づけが「全電源喪失事故」ではなく、地震と津波 による物理的な破壊という面からの分析を要求することになってしまいます。 更に冷静に考えれば、水素というのは非常に比重が軽いわけです。ですから、 配管にズレや漏れがあれば、その場所から抜けてすぐに上方に行ってしまいま す。配管にはトラブルがあって、3号機からタービン建屋経由で水素が回った けれども、その経路を通じては水素が抜けるようなことのない「密閉性」が保 たれていたというのはどうにも腑に落ちません。 もっと言えば、3号機の水素爆発が3月14日で、4号機での水素爆発が 15日、その後何度か4号機では発火があったと報告されています。また、そ の後は20日前後になって「決死の注水作戦」が4号機に対して行われていま す。 更に妙なのは、昨年の後半から今年にかけて、この4号機のプールの「耐震 性」の話が何度も蒸し返されています。報道によれば、プールの底に鋼鉄製の 支柱を設置して周りをコンクリートで固める工事を行い、耐震性を20%高め たとか、注水の際に入った海水によってプールが腐食するのを防ぐため、塩分 を取り除く装置も設置したそうです。更に東電は、最近になって燃料プールの 水位を測定したり、建屋の壁の傾きを光を当てて直接調べたり、プールのコン クリートの強度を特殊なハンマーを使って調べたりするなど、色々なことをし ているのです。 更に、政府も4月23日には復興庁の中塚一宏副大臣が「4号機の建屋の中 を視察し、健全性を確認したと強調するなど、不安の払拭(ふっしょく)に全 力を挙げていた」(NHKによる)などという報道もあります。こうした報道 においても「政府と東電の公式見解」は貫かれています。 しかし、これも不自然な話です。まず1号機や3号機など水素爆発を起こし た建屋の損傷状態を見れば分かるように、福島第一の各炉は「万が一の水素爆 発」を想定して、建屋上部のオペレーションルームの外壁は薄くしてあるので す。4号機もこの点に関しては同じだと考えられますし、事故後の外観写真か らもハッキリ、オペレーションフロアから上の外壁が吹っ飛んでいるわけです。 勿論、水素が濃ければ相当な爆発となり建屋全体に負荷がかかるでしょう。 ですが、上部の外壁が特に薄く作ってあり、そこが吹っ飛んだ場合に、固いコ ンクリートの建屋下部は崩壊しないという設計になっているのです。しかも繰 り返しになりますが、水素というのは比重が軽いので建屋の最上部に充満し爆 発したと考えられます。その場合に、爆発によって外壁が吹っ飛んで爆発エネ ルギーが放出されるより前に、エネルギーが建屋のコンクリート造りの下部を 破壊したり、水があった(という説明ですが)プールの水を爆発の衝撃波が圧 迫してプールの底や側壁が破壊されるというのも不自然です。 この4号機の問題に関しては、3号機から回った水素が混入して爆発したの ではなく、4号機の燃料プールの燃料棒が加熱したと考えるのが自然です。燃 料棒から水素が発生して建屋の爆発になったし、燃料棒が加熱することでプー ルの構造から建屋全体の構造が劣化したと考えれば辻褄が合うからです。爆発 の後に発火が見られたということの説明もつきます。 では、仮にそうした可能性が強いとして、どうして「水素は3号機から回っ た」という説を公式見解にしなくてはならないのでしょうか? それは当初考 えられた「4号機では全電源喪失により、燃料プール内の燃料棒が加熱し、水 素が発生して爆発に至った」というシナリオは、仮にそうだとすると、大変な インパクトを持つからです。 まず、1号機から3号機に関しては稼働中の原子炉を緊急停止したところ、 全電源喪失により冷却ができなくなり、炉内の燃料が高温となって圧力容器損 傷に至ったというのが事故の要約です。従って、現在一部に議論があるような 「原子炉を稼働させない」という措置を取れば、この種の事故は避けられる、 その点に間違いはありません。 ところが、使用済み核燃料の冷却というのは、「脱原発」を即刻やるにして もやらないにしても、原発を一旦利用した社会は背負っていかねばならない問 題です。仮に原子炉建屋内のプールに貯蔵しておこうが、そこから隔離した敷 地内のプールに集めようが、あるいは各々の原子力発電所の近くではなく集約 して管理するにしても(一旦相当冷やさないと運ぶのは不適当ですが)水の循 環冷却が必要だという現実から逃げることはできないのです。 また、1号機から3号機の事故は、ある意味ではこの世代の原子炉が持って いた脆弱性に原因があるとも言えるわけです。少なくとも、現在新しく販売が されている「第三プラス世代炉」では、受動安全性つまり全電源喪失を想定し た緊急時の自動停止機能を持っているわけで、福島第一と同じような負荷がか かった場合にも同様の事故を起こすとは考えにくいわけです。 一方で、使用済み燃料プールの構造というのは、ハッキリ言って原発が実用化 されて以来、何の進歩もないのです。水を満たしたプールに燃料棒を入れてポ ンプで水を循環させて熱を取る、その基本的な構造は全く変わりません。進歩 があったとすれば、炉に近い建屋内に燃料プールを設置するのは危険だから少 し離れた場所にしようというぐらいの話です。しかも、この使用済燃料プール というのは、全世界の原発には必ずあるわけです。 歴史上、大きな原発事故というのはチェルノブイリ、福島、TMI(スリー マイル島)が有名であり、その他にも原子力関係の開発に伴う事故というのは、 米国、ソ連、英国などでかなり深刻な事故の歴史があるのです。ですが、原発 の歴史の上で、商用に供されていた原発から出た使用済み燃料の冷却失敗によ る加熱、そして水素爆発という事故は、いまだに発生したことがないのです。 他に起きたことがない一方で、どこでも起きる可能性のある事故、仮に燃料プ ールの冷却失敗というのが現実に起きたとしたら、そうした深刻性を持ってい るわけです。 問題はプールでの冷却時に全電源喪失が起きたら大変だというだけではあり ません。この問題は、そもそも使用済み核燃料をどう処理するかという、原子 力のエネルギー利用の長期的な政策に関わってきます。これまで、フランスも アメリカも日本も、使用済み核燃料に関して悩み続けてきました。 この中では、フランスと福島以前の日本(その他にもロシア、中国など)に 関しては、世論はともかく政府と電力業界の方針は比較的ハッキリ決まってい ました。それは、使用済み核燃料は、再処理工場で化学処理をしてプルトニウ ムを抽出するという方向性です。抽出したプルトニウムは、中長期的には炉内 の中性子速度を減速させない高速増殖炉(ブリーダー)で高効率の発電に利用 するか、短期的にはウランと混ぜたMOX燃料にして「プルサーマル炉(和製 英語ですが)」で使用するのです。いわゆる「核燃料サイクル」です。 一方でアメリカは、プルトニウムという物質は核兵器に転用できることから、 世界全体におけるプルトニウムの総量を減らすことが核テロや「ならず者国家」 の核武装の危険を下げることになるという立場であり、これを率先垂範すると いう名目で「核燃料サイクル」に否定的でした。もっとも、最近は化石燃料の 枯渇や高騰という危険を意識する中で、MOX燃料の製造を試験的にやろうと いう動きはあるのですが、基本的には「再処理しない」という立場です。 さて、この「再処理しない」という政策を前提としますと、膨大な使用済み 燃料棒をどうやって保管するかというのは、エネルギー政策上の大問題になる わけです。勿論、再処理をするにしても高濃度の放射性廃棄物は出ますが、再 処理をしないで全量を冷却保管するとなると、やはりその量の問題は違ってき ます。 このように、仮に4号機の水素爆発について、使用済燃料が加熱したという のが原因であるということになれば、それは大変なインパクトがあるのです。 従って、日本政府、東京電力に関しては、仮に核燃料サイクルを止めた場合に 使用済燃料の処分という大問題と向かい合わねばならず、その際に「加熱事故」 があったという現実があるのとないのとでは、自分たちの施策の自由度は全く 違ってくることになります。 もっと言えば、アメリカの場合は、そもそもこの「使用済み燃料問題」につ いて、ここ10年ぐらいの間、色々な形で政治的な対立があり、極めて敏感に なっているという事情があります。選択肢を狭めないとか、余計なコストをか けたくないという立場に立って考えると、アメリカの場合は日本以上に「使用 済み燃料プールの加熱事故」というのは「起きて欲しくない」と政府や業界が 考えていると見て良いでしょう。 以上のストーリーは、水素爆発と4号機の損傷という問題をめぐる考察に関 しては、私なりに真剣に検討した結果ですが、日本とアメリカの政府や業界の 思惑という話に関しては、全くの状況証拠的な推測を積み重ねただけです。で すが、先月5月の21日に、そうとも言えないと思わせるニュースが飛び込ん できました。 アメリカの原子力政策に関する独立機関、NRC(原子力委員会)のグレッ グ・ヤツコ委員長が辞意を表明したというニュースです。報道によれば、ヤツ コ委員長は委員長を含む総勢5名で構成される委員会の中で完全に孤立してお り、他の委員との間で修復不可能な認識の相違があったとされています。他の 委員は、昨年この問題に関して、ヤツコ委員長を更迭してほしいという請願を ホワイトハウスの大統領補佐官に文書で申し立てているというのですから、穏 やかではありません。 具体的な対立というのは、例えば今年に入ってNRCはアメリカの2箇所の 原発の新規建設を認可しているのですが、その際の評決では他の4名は賛成、 ヤツコ委員長のみが少数意見を述べて反対という結果になっているのです。ち なみに、ヤツコ委員長の反対理由は「福島第一の事故原因が十分に究明され、 事故を受けた米国での対策が十分でない以上、新規建設は時期尚早」というも のでした。 実は、ヤツコ委員長は同僚の委員たちとの確執にとどまらず、委員会の事務 局の女性に対して恫喝に近い暴言を吐いたとか、色々なトラブルが伝えられて います。その中でも、有名な確執というのは、オバマ政権の閣僚である、ステ ィーブン・チュー・エネルギー長官との対立です。 これが、他でもない福島第一の4号機の問題なのです。事故発生の直後であ る3月16日にヤツコ委員長は、アメリカ議会の下院エネルギー・商業委員会 で証言しているのですが、4号機について「燃料プールの水は沸騰し、カラに なっていると思う」と述べているのです。これに対して、順序としては「政権 側のチュー長官が否定、両者が対立、ヤツコ氏本人が福島第一を視察して空焚 き説取り下げ」というプロセスを踏んでいます。 勿論、この話も政府東電の公式見解とは辻褄が合うわけです。チュー長官も、 そして説得された後のヤツコ委員長も「空焚きはなかった」というのが現在の 公式見解なのですから。但し、今回、ヤツコ氏が辞任表明したということにな ると、そこにはどうしても強い政治性を感じざるを得ないのです。 ところで、今回の辞任劇(ちなみに後任が指名されるまでヤツコ氏は留任し ますが)の際に、最も大きな原因とされたのはヤツコ委員長が「ユッカ・マウ ンテン貯蔵施設計画」を潰した際に暗躍しているのであり、その際に「施設の 建設に不利になるデータだけを、不法に公表した」という問題である、そう報 道されているのです。 さて、この「ユッカ・マウンテン」の施設ですが、先ほど申し上げたように アメリカは「再処理」を基本的には否定しているので、使用済みの燃料棒は最 低5年間は「プールで冷却(ウェット貯蔵)」の後は、「金属キャスク」とい う容器に入れ、不活性ガスを充填したコンテナに密閉すること(ドライ貯蔵) になっています。 一方で、911の同時多発テロを受けた「ポスト911」の「空気」を受け て、「核物質の盗難」や「貯蔵場所への攻撃」に対する危機感が増す中で、こ の際、半永久的な「地層処分」をやろうということになったのです。その結果 として、ブッシュ政権はネバダ州の「ユッカ・マウンテン」という堅い岩盤の 中に施設を作る、しかも「100万年」という長期間の保管を前提に計画を立 てたのです。 ところが、この場所が商業都市のラスベガスに近いことなどから、反対運動 が激しくなり最終的には、2010年に中止が決定されています。この時に、 反対論の急先鋒に立っていたのは地元選出のハリー・リード上院院内総務(民 主)であり、実はリード議員はこの2010年の中間選挙が改選に当たり、テ ィーパーティー系の女性候補に追い詰められて苦しい情勢の中、ユッカの施設 への反対論を選挙戦の決め手に使ったという状況もあったのです。ヤツコ氏は、 その反対論に極めて近い立場にいたわけです。 つまり、ヤツコ委員長という人は、相当に一貫して「使用済み核燃料の危険 性」について強い懸念を持っていたということが言えます。そのヤツコ委員長 が今回5月に辞任に追い込まれたということ、その一方で、今年に入って福島 第一の4号機では「燃料プールを含む建屋の構造の劣化」という懸念が増して いる、この2つを結びつけて考えると、どうしても「空焚きはなかった」とか 「3号機からタービン建屋経由で大量の水素が4号機に回って爆発」というス トーリーには疑いが残るのです。 既に原発を相当期間稼働して大量の使用済み核燃料を抱えている社会として は、その安全な冷却のためには24時間365日コンスタントに電力を安定供 給できる原発はゼロにはできないというパラドックスを抱えているのもまた事 実です。ですが、この機会に使用済み核燃料問題への議論を深め、具体的には 建屋内プール保管の禁止、炉だけでなく燃料プールに関しても電源の三重のフ ェールセーフ体制の徹底などを実現してほしいと思うのです。燃料サイクルの 問題、中間貯蔵やその先の問題も避けては通れません。 |