フルーツアートクリエイター
生活にはアートが必要だが、アートは往々にしてささいなところから生まれる。毎日食べる果物は、人によって食べ方も様々だ。オレンジを例に取れば、皮をむいてかぶりつく人もいるし、切り分ける人もいる。もうちょっと工夫するとしたら、例えばカットして、皮を取り除いて、サイの目に切って、ガラスのボウルに入れてフォークで刺して食べる。普段の生活では、このようにすれば時間も省けるし、無駄になる部分も少なく、実用的な食べ方と言えるだろう。だが特別な日には、いつもとはちょっと違ったアートの手法を取り入れて、自分の手でフルーツアートを作ってみたら、優雅で注目を集める作品が生まれるに違いない。
フルーツアートとは何だろうか?その名称から考えると、果物を使って美しい造形を作り出す芸術ということになるだろう。果物には特別な魅力がある。みずみずしく、色が鮮明で、甘い香りを周囲に放つ。フルーツアートの作品は、視覚的な美しさを楽しめるだけでなく、口に入れた時に爽やかで酸味のある甘い果汁が口の中を満たすという魅惑的な想像ももたらしてくれる。フルーツアートとは、身近なフルーツを材料として、爽やかさと鮮やかさで生活を美しく彩り、さらには作品を食べることもできるアートなのである。
北條清美さんは、フルーツアートクリエイターである。例えば、殆どの人が皮をむいてかぶりつくだけのバナナも、彼女の手にかかればフルーツアートとなる。皮の半分を器にし、そこへ輪切りにしたバナナの実を乗せ、両端にミントとブルーベリー。これだけでいつものバナナが立派なおもてなしの一皿に。バナナだけでなくオレンジやパイン、メロン等なんでも。使う用具はペティナイフ1本のみ。しかも短時間で、通常捨ててしまう皮や葉等も巧みに利用し、フルーツの美しさ美味しさ、そして食べやすさを出し尽くし、見ている人食べる人全員を魅了する、ペティナイフの魔術師である。
北條さんは自分の経験と得た知識を多くの人と共有し、多くの笑顔を生み出す為、東京や神奈川等でフルーツアートレッスンを行っている。フルーツアート入門編として基礎・応用レッスン、クリスマスやバレンタイン等のシーズンレッスン、キウイ等の小さなフルーツから、メロン等の大きなフルーツを使ったレッスンも受講者の希望に合わせて随時行い、3名からであれば出張レッスンも行っている。レッスン以外では、女子の祭典『東京ガールズコレクション』でモデルに500食のフルーツアートを提供したり、築地青果市場やお祭り、イベント、展示会等でデモンストレーションも披露している。
アートを生活の身近なものにするために、フルーツアートという生活に密着した芸術は、それを学ぶ人々にも、それを理解する人々にも、さらなる楽しさと美しさを与えてくれるに違いない。 (清明執筆)
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