デザインについての物語
我々は毎日の生活の中で、大きなものでは家具や家電、小さなものでは台所用具や生活小物など、様々な製品に接している。それらは毎日の生活とあまりにも密接であるため、芸術品として鑑賞することは難しい。だがそれらは、美しい芸術品と同じように、デザイナーたちがあれこれと思索を凝らし、心血を注いで作り上げた「アート作品」なのである。
柴田文江さんは、優れたインダストリアルデザイナーとして、我々が日常生活のあちこちで目にする多くの製品をデザインしてきた。柴田さんは武蔵野美術大学を卒業し、1990年に東芝デザインセンターに入り、その後、自分でDesign Studio Sを設立した。2011年にグッドデザイン賞を受賞した彼女は、これまでに家電、児童用携帯電話、体温計、カプセルホテルなどの製品をデザインしている。女性の独特な視点と感性で製品に柔軟な要素が注ぎ込まれ、細部にも気が配られており、彼女のデザインした製品には女性的な柔らかさと細やかさが込められている。みなさんが現在使っているものの中にも、柴田さんの手によるものがあるかもしれない。
有名なインダストリアルデザイナーである柴田さんが、12月13日に作品集「あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ――柴田文江のプロダクトデザイン――」を出版する。この本では、柴田さんが製品をデザインする時の、製品開発の発想から、何度も検討と修正を繰り返し、最後に決定して生産され、製品が発売されるまでの全過程を記録している。また柴田さんは、作品集の中で自分の言葉で評論を行うという初めての試みを行っている。今回の作品集で紹介された製品には、無印良品の「体にフィットするソファ」、JR東日本の「次世代販売機」など、我々がよく知っている製品も含まれている。
今回の作品集の刊行を記念して、12月14日に東京のサントリー美術館でトークイベントが行われる。柴田さん本人の他、作品集のブックデザインを担当した葛西薫さんが登場する。モデレータは、作品集に寄稿したデザインジャーナリストの藤崎圭一郎さんである。この三人はそれぞれの分野で卓越した才能を発揮している人々であり、彼らのトークイベントはきっとすばらしいものとなるに違いない。プロダクトデザインに興味のあるみなさんは、是非この機会を逃さないように!(小雅執筆)
会場:東京ミッドタウン/サントリー美術館内 日程:12月14日(金)18:30〜20:30
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