2012年11月16日 第44号(通巻第338号)

吉祥寺の糸モノまつり

東京都武蔵野市の吉祥寺と言えば、まず何を思いつくだろうか?街角のカフェに漂うコーヒーの香りかもしれないし、古本屋から流れてくるシャンソンかもしれない。あるいは、たい焼きを手に通り過ぎる大学生だろうか?このようにゆったりとした温かいイメージを持つ要素が、吉祥寺特有のスタイルと雰囲気を作り出し、この街を東京のサブカルチャーの発信地にしているのである。そして今、織物や布地をテーマとしたイベントがここで行われている。

今月11月1日から12月2日まで、吉祥寺の一部のギャラリー、手芸品店、カフェなどが共同で「糸モノまつり」を開催している。「糸モノ」とは、織り、編み、刺繍、紡ぎ、キルトなどの技術を用いて、糸や布で表現した平面や立体の手芸やアート作品を指す。吉祥寺にはたくさんの個性的な雰囲気を持つ「糸モノ」の店がある。今、これらの店が手を取り合って、我々のために吉祥寺らしい独特なスタイルの「糸モノ」のつどいを開いてくれたのだ。今回の「糸モノまつり」の主催者の一人である城達也さんはこのイベントについて、吉祥寺全体をギャラリーにして展覧会やワークショップを行うことを通じて、吉祥寺を「手芸クラフトの街」にしたいと語っている。また「糸」と吉祥寺の「吉」を合わせると「結」という漢字になるので、吉祥寺に遊びに来た人も、展示を行う人も、この漢字が表すように、今回のイベントを通じてすばらしい縁を結んでほしいと言う。

このイベントでは、たくさんの糸や布のアーティストたちが自分の作品を展示し販売している。城達也さんの「手織工房じょうた」では、工房メンバーによる作品展を開催し、手織りマフラーや服などを展示販売する。さらにアトレ吉祥寺にて、ワークショップとスタッフ展の開催も。寒い冬の日に吉祥寺の夕日の下で、温かい手織りのマフラーを身に付けたら、心の中まで温かくなるだろう。また、A.K.Laboのカフェスペースでは、じょうたのスタッフの阿部由布子さんの初の個展を開催。こちらはさをり織りとなっている。、さらにA.K.Laboでは、カフェオリジナルの「糸モノまつり」期間限定「糸モノお菓子」、糸巻き型のマロンサンドを楽しむことができる。このお菓子は可愛らしく柔らかそうで、味の方もきっとすばらしいに違いない。ここは温かく、自由なアートの気分に満ちた街、吉祥寺である(小雅執筆)

写真提供:手織工房じょうた

Kichijoji ArtWalk http://kichijoji.tokyo-artwalk.com/news/topics_20111115-2.html

晩秋の横須賀の印象

早朝の横須賀は静けさに包まれている。柔らかなオレンジ色の逆光の中では、「水と光と音の公園」と呼ばれる三笠公園の中の、昔は戦場で活躍していた軍艦三笠と将軍の像も、毅然とした重厚さがいくらか和らげられ、歴史の流れに感慨を覚える。それぞれデザインの異なる広々とした噴水が三つあり、中でも緑の丘を背にしたヨーロッパの城壁風の噴水は、切り出した褐色の石で作られ、重々しい雰囲気の階段が、濃いブルーから淡いブルーへと変化する海に向かっている。公園全体に、平和で温かい気分が満ちている。

都市の雰囲気は子供たちによって決定されると言われるが、うみかぜ公園は正に子供たちのための公園だ。走り回る子供たちが、公園の風景を動きのある絵画のように見せている。一面ブルーのスケボーエリア、ヨーロッパ庭園のような花壇、海岸には釣りを楽しめる場所が長く続き、銀色の柵に沿って釣り人たちの椅子が並んでいる。丘の上には、バーベキューを楽しむ人々が見られる。この公園は名前が示すように、大自然の贈り物として、人々に太陽の光、海、そして爽やかな海風を与えてくれる。

横須賀と言ったら、まずカレーを挙げなければならない。百年前にイギリスから伝わった海軍カレーは、横須賀の誇りになっている。横須賀はロマンチックな音楽の街であると共に、カレーの街でもあるのだ。日本のカレーは横須賀が起源であると言っても言い過ぎではない。横須賀中央駅近くの海軍カレー本舗は、多くの観光客が選ぶナンバーワンの店で、百年前のオリジナルの味を再現し、栄養バランスも整えられた海軍カレーは、横須賀を訪れる人々が絶対味わうべき美食である。

最後に、アメリカ海軍基地についてご紹介しなければならない。かつて基地の入口について、何度も想像してみたことがある。想像の中の基地の入口には、幅のある重厚な鉄柵の門があって、そこには見る者を圧倒するようなアメリカの国章や白頭鷲のマークが彫られ、黄色の地色に英語と日本語の黒く太い文字で書かれた警告パネルが掛けられ、その前には実弾入りの銃を持った迷彩服の白人の警備員が立っている、というようなものだった。だが実際の基地の入口は、門前に巨大な錨のモニュメントがある以外は何の特色もなく、立ち入り禁止の警告パネルも普通の白いもので、あまり目立たない。警備員は中年の日本人が4〜5人のんびり立っているだけで、私がモニュメントの写真を撮るのを見て、挨拶してくれた。

横須賀はこのように純朴な雰囲気の港町で、友好的な気分に満ちており、米軍基地の警備員も例外ではない。横須賀は軍港として有名で、ガイドブックにも威風堂々とした軍艦についての記載が多いが、私が訪ねた中で最も穏やかで平和な場所だった。(李薊執筆、撮影)

ここはヨコスカ http://www.cocoyoko.net/ 横須賀市観光協会 http://yokosuka-kanko.com/

10年目の岡田ひとみ

子どもたちにねんどによるミニチュアフードの作り方を教えている人気アイドル、岡田ひとみさんは、1998年に芸能界にデビューした。その後、1年間の活動休止中に、彼女は「どうやったらみんなを楽しませることができるだろう」とじっくり考え、粘土で心を込めてミニチュアフードを作ることを少しずつ学んでいった。そして2002年に「ねんど職人+アイドル=ねんドル」宣言を行い、表参道同潤会アパートで個展を開いて、歴代の動員数を塗り替えた。

2010年夏に、ねんど教室の参加者が2万人を超えたので、それを記念する活動の一環として、子どもたちと著名人による、ボトルキャップを使ったねんどの作品展を開催した。岡田さんはいつもピンクの服を着て、優しく細やかに、気軽で楽しい雰囲気でねんどの使い方を教えているので、子どもたちはたいへんリラックスして楽しみ、学校の図画工作の時間とはまったく違う楽しさを体験している。作品は本物の食べ物とそっくりで、サイズだけがとても小さい。これらの作品を一斉に並べると、色も形もすばらしく、誰もが楽しい気分になってしまう。

2011年に岡田さんは、積極的に被災地や病院やカンボジアなどでワークショップを行った。また同年、日本記念日協会に申請して、「901」と「クレイ(ねんど)」のごろ合わせから、9月1日は「ねんどの日」に制定された。今年の記念すべき第1回の「ねんどの日」に際して、岡田さんは特別ねんど教室を開催し、その時の様子をYoutubeにアップしたところ、非常に好評であった。ねんど教室は日本を飛び出し、アメリカやシンガポールの幼稚園でも行われ、外国の子どもたちにねんど細工の作り方を伝えている。「ねんドル」は世界各地の子どもたちの心の中の「アイドル」になったのである。

表参道同潤会アパートで開催した個展から10年経った今年は、岡田ひとみさんが「ねんドル」となって10年目でもある。アーティストでもなくタレントでもなく、教育者とも異なる、アイドルとしての、この特別な立場を保ち続けるのは簡単なことではない。「ねんドル」の活動がこんなに長く続くとは、誰が予想しただろうか?だが岡田さんは、毎回子どもたちの笑顔に出会い、自分を信頼してくれる人々の気持ちや愛情を受け取って、10年の間、やめようと思ったことは一回もないという。

11月7日は岡田さんの誕生日だ。この日から6日間にわたって、10周年記念の個展「ねんどでミニチュアワンダーランド」が、表参道ヒルズで開催された。処女作から最新作までが並んだ展覧会場に立って、岡田さんは言う。「10周年の個展は、お祝いでも目的でもなく、通過点に過ぎません。ねんどというツールを使ってやりたいことは、一生きっと終わらないのですから。」(ff執筆)

写真提供:株式会社チーズ

ひとみュータント http://www.radical-planet.com/hitomi/

下町のキャラクター銅像たち

東京の繁華街と言えば、すぐに浮かぶのは銀座、新宿、渋谷などであろう。しかし江戸時代には、浅草や上野を初めとする下町こそが最も繁華な地域であった。現在の下町には往時の繁栄は見られず、住宅地になってしまっているが、生活の息吹や人情味に満ちており、昔の東京の風情を残しているため、多くの観光客を惹きつけている。東京の東部にある葛飾区も下町に属しており、ここには葛飾区から生まれた三人の「イメージ大使」がいる。

まず最初に、寅さんを紹介しなければならない。寅さんは、松竹の製作した長編映画「男はつらいよ」の主人公である。最初の1968年のテレビドラマから1997年の最後の映画まで、29年の長きにわたり、さらには現在に至るまで人気が衰えない。寅さんは葛飾区柴又に住み、いつも柴又駅でヒロインと出会って恋に落ちる。現在では、柴又の駅を出ると寅さんの銅像が見られるが、まるでヒロインを待っているかのようである。

二番目は、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する「両さん」である。つながった太い眉毛の警察官「両さん」は、物事に無頓着で、商店街の人々にいつも面倒をかけているが、彼の人助けが好きな性格とナンセンスな表現が、日本中の子供たち、さらには大人たちの人気を集めている。JR亀有駅のそばには、両さんと彼の仲間たちの銅像が14体もある。アニメファンではなくても、親と子が一緒に回れる銅像の散歩道は、なかなかの人気である。

三番目の銅像は、2013年春に建てられる予定だ。それは、アニメで一世を風靡した「キャプテン翼」の大空翼である。翼は楽観的で明るく、積極的に向上しようとする少年で、サッカーの技は一流である。どんなに多くの少年たちが、彼のようなドライブシュートを打ちたいと夢見たことだろうか。銅像は、作者の故郷である葛飾区四木公園に建てられることになっている。

この他、「アニメ王国」葛飾区では、寅さんや翼の絵がついたナンバープレートも発行している。みなさんも手に入れたいと思われるのではないだろうか?(秋桜執筆)

下町観光ガイド http://www.j-kochikame.com/special/map/

一生に一度は行きたい直島

直島については以前から聞いたことがありましたが、10月末にフェリーに乗ってこの島に渡り、自分の目で直接見た景色は、雑誌で見た写真に比べてやはり何百倍も美しいものでした。

直島は瀬戸内海にある島で香川県に属しています。元々はまったく無名の、面積8.13km2、人口3千人余りの小島でしたが、自然とアートが共存する島に改造されてから、国際的に有名になりました。ベネッセアートサイト直島は、瀬戸内海に浮かぶ直島、豊島、犬島を舞台として、ベネッセコーポレーションと公益財団法人福武財団が展開するアート活動の総称です。最初は、福武書店が建築家の安藤忠雄を招いて、1989年に、従業員や子どもたちのために国際キャンプ場を設計してもらったのですが、思いがけず大きな反響がありました。その後、やはり安藤忠雄が設計した美術館とホテル機能を兼ね備えた「ベネッセハウス」が1992年に開館し、様々なアート展が開催されるようになって、直島の知名度は大いに高まりました。現在、年間平均20万人がここを訪れ、2010年の瀬戸内国際芸術祭の期間には93万人もの観光客が訪れました。

2004年、直島の南側に「地中美術館」が開設され、大きな話題を呼びました。直島の美しさを壊さないために、建築物の大半が地下に建設されています。館内ではモネの睡蓮や現代作家のジェームズ?タレル、ウォルター?デ?マリアなどの作品が常設展示されています。安藤忠雄が得意とする、建築と自然が共存する独特の採光デザインによって、館内のアート作品は一日の光と影の変化につれて異なった雰囲気をかもし出しており、こうした展示空間と手法が、来館者を驚嘆させています。この他、島には李禹煥美術館、ベネッセハウスミュージアムなどがあり、屋外にも18点の作品が展示されています。その中には、香港や台湾の若者に人気のあるデザイナー蔡国強の「文化大混浴」や、日本のデザイナー草間彌生の立体作品「南瓜」などがあり、直島を代表する風景の一つとなっています。

この島は、本当に言葉にできないような神秘的な魅力があります。船が通らない時の瀬戸内海は穏やかで波もなく、島全体もとても静かで、風と雲が流れる気配と、自分の心臓の音だけが聞こえるという感じです。芝生の上に置かれた像も、青空の下に建つ建築物も、調和を保ち、大自然と融合して美しい風景画になっています。この島に一歩足を踏み入れた時から、心の中の感動が爆発の瞬間に向かってカウントダウンを開始します。一生に少なくとも一度は訪れたい癒しの島、それが直島なのです。(哈日杏子執筆、撮影)

ベネッセアートサイト直島 http://www.benesse-artsite.jp/ (日、英)   哈日杏子のブログ http://harikyoko.wordpress.com/ (中、日)

第44回 柴又

【柴又の概要】東京都葛飾区の地名であり、京成電鉄金町線の柴又駅附近である。昔は題経寺(柴又帝釈天)の門前町として広く知られていた。「男はつらいよ」の舞台になってからは、さらに有名になった。下町の住宅街だが、周辺には農業用地が多く、浄水場などもある。帝釈天付近は、環境省によって「日本の音風景100選」に選ばれている。

【柴又の景観】帝釈天の参道は、有名な草だんごを初めとして、江戸から伝わる食べ物の店が連なっている。柴又帝釈天は古色蒼然とした寺院で、すばらしい彫刻ギャラリーがある。山本亭は1500坪の和洋折衷の建物で、古いものと新しいものが混在している。寅さん記念館は、主人公だけでなく、彼に関わったマドンナたちの服装も展示されている。矢切の渡しは、東京23区で唯一残っている渡し船で、寅さんも何度も乗っている。

【寅さんの物語】30年の間に、48もの喜劇作品が製作され、これは現在のところ最長の映画シリーズである。故郷を愛しているにも関わらず、あちこちを放浪し、失恋を繰り返すフーテンの寅次郎の、軽妙で面白いストーリーが、美しい日本の自然と文化を貫いて展開される。渥美清は1968年に初めて寅さんを演じ、1996年に亡くなるまで演じ続けた。これは、世界で放映された、同一の俳優が主人公を演じた映画シリーズの中で、最も長いものである。(姚遠撮影、執筆)

タイトル:「駅前で」
場所:柴又駅前
撮影のポイント:寅さんの写真の多くは正面から撮られているが、寅さんの顔は誰もが知っていて再現する必要はないので、あえて像のすぐ前にしゃがんで見上げる姿勢で撮影し、彼の心の中の迷いと失望を強調した。
使用フィルタ:Lo-fi+彩度+左右のぼかし(青空と銅像のコントラストを強調した。フレームの装飾効果。)
タイトル:「全財産」
場所:寅さん記念館内
撮影のポイント:これは記念館内でしか見られない「財産公開」である。できるだけ被写体に近づき、テーマと関係のない要素をすべて画面の外に排除した。撮影スタジオのような撮影効果になった。
使用フィルタ:Hefe+彩度(革かばんの質感を強調した。フレームの装飾効果。)

タイトル:「沸き立つ」
場所:柴又帝釈天内
撮影のポイント:祭りの場面は往々にして人物が多く、事物が雑然として、楽しい気分を表現するのを妨げる。楽隊の後ろ姿が画面の半分を占めることによって、場面に立体感が生まれ、映画のシーンのような効果を上げている。
使用フィルタ:Sutro+彩度(外側の建築物などを暗くし、中心になる人物の楽しそうな様子を際立たせる。)
タイトル:「夕陽の下で」
場所:帝釈天の参道
撮影のポイント:iPhoneを頭の上に挙げ、レンズで街を行く人々を俯瞰するように捉えた。逆光によって、人の頭が金色に縁取られ、店の看板に立体感が生まれるなどの効果が生まれ、見る者にその場に行きたいような衝動を与える。)
使用フィルタ:Lo-fi+彩度−フレーム(斜めの太陽光線が影を作る効果を強調する。フレームを除去して情報量を増加する。)

葛飾柴又ホームページ http://www.shibamata.jp/   寅さんのいる町 http://www.torasan.org/

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