神田サオリは幼い頃から多くの国を転々とした。当時戦時下で物資が少なく、食べ物も充分ではなかったイラクで子ども時代を過ごしたのだ。貴重であるためにポッキーを一日一本しか食べられなかったし、絵を描く時も表に文字が入っている電報の紙を使っていた子ども時代も、彼女の記憶の中では楽しみに満ちている。今後最も絵を描きに行ってみたい国はどこかと聞かれて、彼女は第二の故郷であるアラブ諸国に行って、砂漠や当時の日本人学校を見て、あの頃の生活を思い出したいと言う。
これは、生活に対して大きな愛情を抱いていてこそ言える答であろう。日々の暮らしを心から愛しているから、どんなものも正面から見たり考えたりできるのだ。「物事のいいところを探すのが得意」と、神田サオリは言う。「アラブは美しい。アラブだけでなく、すべての国、そして日本にも美しいものが沢山ある。私はいつもこのことを忘れないようにしています。」と彼女は言う。
神田サオリは、台湾への旅のことを思い出す。もともと大規模な屋外ライブをする予定だったが、ちょうど台風が来てしまったので、風景の美しい野外公園をあきらめて室内で行うしかなくなった。スタッフたちは緊急の事態に忙しくて休む暇もなく疲れていたが、彼女に対しては暖かい笑顔を見せてくれ、彼女はそのことにとても感動し、心から感謝の気持ちが湧いたと言う。「みんな大好き!」ライブの時、このような気持ちによって神田サオリの心からは満開の花が生まれ、音楽と絵筆の下で花びらは次々に開いていった。まるで天の意志のように、ちょうどライブが終わった時、台風はすでに去っており、会場の外に出ると雲が切れて太陽が現れていた。まるで画布の上に花が咲いたように、明るく温かい情景だった。
 
人との交流や人との出逢いを重視する神田サオリは、このように言う。出逢った人と「一緒にうれしい!」っと感じあえるように、自分のエネルギーを絵画と舞踊の形で表現している。また、みんなの情熱に触れることが自分に大きなパワーを与え、更にエネルギーが湧いてくる。音楽を尊敬している彼女は言う。神田サオリは踊絵師であり、音楽は彼女にとって欠かすことのできない創作と生活の伴侶なのである。異なる音楽の背後には、異なる文化のバックグラウンドがあり、異なる情緒や情感を引き起こすことができる。一人のミュージシャンとの出逢いが、人生の重大な扉を開くかもしれず、観念を転換してくれるかもしれない。まさにこうした出逢いや縁を重視することが、神田サオリらしさである。
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