華麗な古典楽器
尺八、筝(こと)、三味線などの古典楽器は、高尚で距離を感じるようなイメージがつきまとっている。確かに「古典」という言葉からして、難しくて理解しにくいという意味を含んでおり、それらを鑑賞するには、まず香をたいて沐浴し、襟を正して端座しなければというような気分がしてくる。だが高尚で上品であることによって、古典楽器は現代人の生活から遠いものになってしまった。若者がMP3で音楽を聴きながら歩いている時、一体何人の耳元にこうした古典楽器が伝承する千年の音色が流れているだろうか?
AUN Jはこの点において、間違いなくすばらしい貢献をしている。彼らは日本の古典楽器演奏者から構成される若者のバンドで、和太鼓、三味線、筝(こと)、笛、尺八、鳴り物から成っている。バンドを始めたのは井上良平と井上公平の兄弟で、彼らは日本でも世界でも名声を誇る「鬼太鼓座(おんでこざ)」のかつてのメンバーである。日本の古典楽器を通じて日本の伝統文化を海外に伝えたいという信念を持って、二人の兄弟は2008年にAUN Jを創設し、志を同じくする六人と共に、八人で活動を繰り広げている。
AUN Jは純粋な昔ながらの路線にこだわることなく、オリジナル曲を元に、古典楽器を使って多くの人の耳に馴染んだ現代の曲を改編し、人々に「ああ、聞いたことがある!」という気楽な気持ちで古典楽器の表現力に親しんで、親近感を持ってもらおうとしている。宮崎駿の「となりのトトロ」、「崖の上のポニョ」、伝統的な曲である「さくら」、「ふるさと」などから、彼らの古典楽器によって興味深い味わいが引き出される。また、演出においても軽快で生き生きとした雰囲気を作り出し、情熱によって一瞬のうちに人の心の扉を開き、人の心を奮い立たせる古典楽器の力強い面を充分に表現している。
6月18日に青山の草月ホールで開催された「美しき日本の響き」というコンサートでは、若い力に満ちた演奏が最後まで続き、国民的な歌である「ふるさと」をAUN Jが演奏して、会場にいた全員が合唱した。遥か遠くにある自分の故郷を思い出したのか、あるいは一年前の大地震がもたらした悲しみと歌が共鳴したのか、老若男女すべての人が真剣な表情で、大きな声を出して歌っていた。そしてAUN Jはステージの上で日本の楽器を使って、唯一無二の音色で、優美かつゆるぎない音楽を演奏し、会場全体を支えた。この情景に、誰もが深い感動を味わった。
AUN Jのサイトには、和楽器の演奏を「もっとポピュラーに、もっとシンプルに、もっとかっこよく」したいと書かれている。高尚すぎて難解なものは一般の人に理解されにくく、伝統文化が人の心をつかむには、普及と伝承が欠かせない。AUN Jはこのような方法で、若者や海外の人々に日本の伝統の美を伝えようとしている。2013年1月4日、AUN Jは日本青年館で新春公演を行い、正月を祝う。その時には、会場にきっとたくさんの若者や外国人の姿が見られるることだろう。(李薊執筆)
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