2012年4月6日 第13号(通巻第307号)

放射性物質を撮影するカメラ

放射線物質に関する話題が、去年の東日本大震災以来ずっと続いている。福島第一原発で起こった数回の爆発のために、放射性物質の人体への影響が改めて全世界の注目の的となっているのだ。この一年の間、震災後の復興に力を尽くす一方で、放射能汚染の深刻な地区で、いかにして迅速かつ効果的に大気と土壌の放射線の値を検出して人々にわかりやすく伝えるかについて、各界で討論と研究が重ねられている。

被災地だけでなく、あるいは福島の放射能汚染事故だけでなく、実際我々の日常生活の中には、大小様々な放射線源が存在している。例えば病院で使われているX線やCT、飛行機、工場の大型機械などである。日常生活でもコンピュータ、携帯電話、さらには冷蔵庫までが放射線を放出している。そのため、大都市の放射線指標は農村に比べてはるかに高くなっている。

震災以後、秋葉原などの電器販売店では様々の携帯式放射能検出器が販売されるようになり、最小のものでは万歩計程度のサイズのものまである。だが測定の誤差などの問題だけでなく、放射性元素の成分は非常に複雑で、一般の検出器ではどれが福島第一原発から漏れた放射性物質なのかわからない。その土地の放射線データを正確に知りたければ、巨大な専門機器を使うしかないのだが、こうした機器は大きくて重い上に、一つの家の南側の塀と北側の塀を正確に区別するのも難しい。正確に検出することができないのならば、住民にとってそのデータは実際に参考にする価値を持たない。

先ごろ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、ある広角カメラを発明し、この難題を基本的に解決することができた。この「コンプトンカメラ」を使って撮影すると、放射線のある場所が一目でわかる。また、「ガンマプロッターH」という装置を使うと、地表5cmおよび100cmの位置から放射性物質がある場所を検出し、色づけしてはっきり表示することができ、異なる放射性物質は異なる色で表される。またGPS機能も備えており、放射線量を地図上にプロットして周辺の放射線量を俯瞰する形で表示し、周囲の放射線の具体的な状況が一目でわかるようになる。(凱特執筆)

(C)2012 Japan Aerospace Exploration Agency

宇宙航空研究開発機構プレスリリース http://www.jaxa.jp/press/2012/03/20120329_compton_j.html (日、英)


面白い移動販売車

移動販売車は、日本ではさほど珍しいものではない。最も一般的なのは「石焼いも〜」と呼びかける焼芋屋と赤提灯を下げた焼鳥屋だろう。最近見かけるようになったものとしては、メロンパンの移動販売車がある。だがおいしくて便利な食べ物や飲み物の移動販売車はこれだけではない。特に東から西まで面積が広い高知県は、一人で好きな場所に行って販売場所を選ぶことができる移動販売車にとって最も適した場所と言えるだろう。種類も様々で、中にはちょっとびっくりするような販売車もある。一体どんな販売車に出会うことができるのか、期待する気持ちが湧いてくる。

「ピッツェリア リベルタ」の車内には、何と本格的なピザ窯が備えられている。窯に火を入れると、温度は450度まで上がり、注文が来ると一枚一枚その場で焼き上げる。材料は精選したイタリアの小麦粉、水、そして生イーストである。県内各地で焼きたてのピザを食べてほしいと、夜須町出身の29歳の店主、清遠政栄さんはわざわざ東京まで行って修行を積んだ。2010年4月に移動販売を開始。最も人気があるトマト、バジル、モッツァレラチーズのマルゲリータの他に、毎日県産野菜を使ったピザを3種類用意する。田舎に行くと、車のステップに坐っておしゃべりをするおばあちゃんも多いそうだ。

高知県の個性的な移動販売車の先駆者の一つが、2009年5月に活動を開始した「リールグーテ」である。たこ焼きと50種類のクレープを売る2台の車がスーパーの入口や各種イベント会場に登場する。クレープが珍しがられる地域もあり、週末は車の前に長い列ができ、嬉しそうに何個も買っていく人もよく見かける。

この他の販売車には、カフェ、ハンバーガー、ドーナツなど様々のものがある。2009年には県内に数台だった移動販売車も、現在は15台に増えた。店の前に停めると場所代を取られることもあるので、利益を得るのはなかなか簡単ではない。しかし普通の店だと来店する顧客の数は多かったり少なかったりだが、移動販売車だといつでも人の多いところに移動できるのが魅力の一つだそうだ。心引かれるいい香りが漂う車で、その場で作ったおいしいものを味わうことができ、冬は温かいもの、夏は冷たいものを売る移動販売車。おなかがちょっとすいた時に、販売車の誘惑に打ち勝つのは難しい。屋台文化は東南アジアや中国にはかなわないが、衛生に対する要求が高い日本では、新しい移動販売車の市場ニーズが今後ますます高まるに違いない。(緋梨執筆)

Pizzeria Liberta http://kiyopizza.blog3.fc2.com/  リールグーテ http://riregouter.shichihuku.com/



思い出という名の箱子(シャンズ)

ごく普通の休みの日の午後。暖かい日の光が窓から室内に差し込む、温かくてちょっと怠惰な時間。テーブルのコーヒーからいい香りが漂い、CDプレイヤーから大好きな曲が流れてくる。こんな心地よい午後に、一冊の本があったらとてもすばらしい。午後の時間が過ぎるのも忘れ、本の中に浸りきり、著者の思い出を味わうと同時に、自分が子供の頃に家族と一緒に過ごした楽しい時間を思い出す。この本は、一青妙さんの「私の箱子(シャンズ)」である。

著者の「一青妙」という名前を聞いて、どこかで聞いたことがあると思われるかもしれない。そう、彼女は有名な歌手である一青窈さんのお姉さんである。歯科医である一青妙さんは女優でもあり、多芸多才だ。今回のエッセイ「私の箱子」は彼女の初めての本である。冒頭には、この本を書くことになったいきさつが書いてある。家の物を片付けていた時、ふと一つの赤い箱を見つけた。箱の中に入っていたものは、どれも記念としての意味があるけれど、普段は忘れていたものばかりだった。

すでに亡くなった母親の日記、両親の結婚前の手紙など。これらの物を通じて、両親や妹との少しぼんやりとした、しかし温かい気持ちにさせてくれる記憶がよみがえってきたのだ。著者はインタビューを受けた時、この本を書くために、母親が書いたたくさんの手紙や病気の時の日記などを読み、両親に関するすでに遠くなってしまっていた記憶が呼び起こされたと語っている。お互いに遠く離れていても、自分たちが常に「家族」という二文字で強く結ばれていることを感じたという。この本を読む私たちも、自分の家族を改めて見つめて、家庭の大切さを再び感じることができるのではないだろうか。

これは、家庭のような温かい雰囲気が感じられるエッセイ集である。この本を手にとってゆっくり味わう時、我々は一青妙さん一家の小さなぬくもりを感じると同時に、自分の家庭や家族に関する、些細だけれども心温まる記憶を思い起こすことができる。陽光に満ちた午後、一冊のすてきな本、大好きな音楽、香りのよいコーヒー、これだけで充分幸福な気持ちになれる。でも本当は、思い出のために微かに笑みの浮かんだ口元こそ、この美しい午後の最も幸せな情景と言えるだろう。(小雅執筆)

(C)2012 Kodansha Ltd.

講談社BOOK倶楽部/「私の箱子」 http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2174251



清水久和のフルーツ時計

芸術の美は自然の美から生まれた。古代ギリシャのアリストテレスは、芸術は自然に対する模倣に過ぎず、自然は何よりもすばらしい芸術的創造力を持っており、他のすべてのものより完璧であらゆるものを内包している自然と比べたら、最も手の込んだ芸術も遠く及ばないと考えた。自然界の美には様々なタイプがある。春の花や秋の露は精緻ではかない美、枯れ果てた蔓や夜の烏はもの寂しく深遠な美、実った作物は豊かさと安逸の美である。甘酸っぱくて香り豊かであると同時に、収穫の喜びを象徴する果物も、同じように抵抗しがたい独特の美を備えていると言えよう。

果物店の店先でビニールのバスケットいっぱいに盛られていた瑞々しいフルーツが懐かしく、フルーツが与えてくれるイメージを表現してみたくなった。2011年夏に、デザイナーの清水久和さんはフルーツをテーマとして、セラミック製のスイカとメロンの時計と、ガラス製の様々なフルーツの形のランプをデザインした。これらの爽やかで甘い雰囲気のある作品は、2011年にスイスとオランダで展示された。そして2012年3月末から4月上旬にかけて、1925年創業の果物の老舗「サン?フルーツ」の六本木のフラッグショップ、ミッドタウン店で、開店五周年を記念してスイカとメロンの時計が展示されている。明るく美しい色彩、軽快な造型、温かく可愛らしい二つのフルーツ時計が本物のフルーツと並んでいるのを見ると、調和している一方、ユニークさも感じられる。ちょっと見たところは全く違和感がないが、ちょっと珍しい感じも与えてくれるのだ。

果物の美しさは、その豊かさにあり、明るさにあり、安心をもたらしてくれる収穫の楽しさにある。展示してあるこれらのフルーツをテーマとした小さな作品を見ると、デザインの巧妙さと見た目の美しさを感じると同時に、心が開放され、ゆったりした気持ちになれる。もし一つ購入して家に置いたなら、普段は緊迫感を与える「時計」のイメージが変わり、時間を知ることができると共に部屋の装飾効果も生まれ、我々も次第にフルーツのように活力と生気に満ちてくるかもしれない。この可愛いフルーツ?クロックは製造数も限られており、価格が高いだけでなく、たとえ財布を取り出したとしても家に持ち帰ることはできないかもしれない。しかし、果物店の果物をすべて食べられる人はいないが、それでもいっぱいに盛られた果物の瑞々しさに惹きつけられて思わず見つめてしまうのと同じように、美しさとは本来心に深く染み入るものであって、手に入れなければならないわけではないのだ。

スイカとメロンの時計は軽快で明るいデザインだが、デザイナーの清水さんはちょっと考えさせられることを語っている。「フルーツをテーブルの上に置いておくと、どんどん熟してきて、放っておくとやがて腐ってしまいます。それも考えようによっては時計みたいじゃないですか。」正にフルーツのように、すべてのものは無から生まれ、盛んな時代から衰退してやがては消えていく。だが正にフルーツのように、人生の持つ意味も、必ず全盛期を迎えて、活力いっぱいに真っ直ぐな力を発揮して、他者を楽しませ安心させる爽やかで甘い香りを放つことにあるのではないだろうか?(李薊執筆)

(C)2012 SABO STUDIO

SABO STUDIO http://www.sabostudio.jp/



日本の紙幣に印刷された有名人は誰?

日本の紙幣の人物を皆さんは何人ご存知ですか?面白いことに、日本に50回以上行っている私は、毎回美しい日本の紙幣を取り出して消費し、日本経済に貢献しているというのに、そこに印刷されている図案を真剣に見てみたことがありませんでした。印刷年度が異なると、紙幣の図案も異なっています。皆さんがよく接する紙幣の多くは、1984年11月1日発行のバージョンが多いと思います。このバージョンのデザインでは、一万円札の人物は福沢諭吉、五千円札は新渡戸稲造、千円札は夏目漱石です。にせ札が作られるのを防止するために、日本の紙幣は20年ごとにデザインが変えられます。2004年発行の一万円札の表は前と変わらず福沢諭吉でしたが、裏面の図案はキジから平等院鳳凰堂の鳳凰像に変わりました。また、五千円札の人物は樋口一葉に、千円札は野口英世に変わりました。

まず一万円札の人物からご紹介しましょう。武士出身の福沢諭吉は、明治六大教育家の一人に数えられる教育者であり、慶應義塾大学の創立者です。彼は欧米に渡って現地の文化を学び、自ら体験した文化の衝撃を日本に持ち帰って多くの視点を提供し、明治維新に影響を与えました。また、彼は近代保険制度を日本に伝えた最初の人物でもあります。五千円札に登場した新渡戸稲造は著名な農学者で教育者であり、倫理哲学者でもあります。拓殖大学名誉教授となり、「武士道」などの多くの有名な著作があります。千円札の夏目漱石は近代の有名な小説家で評論家でイギリス文学者です。代表作は、1905年に発表した長編小説「吾輩は猫である」です。

さらに、日本の紙幣に登場した最初の女性についてお話ししましょう。樋口一葉は明治初期の重要な女性小説家で、平安時代以降、千年以上を経て現れた最初の女性作家です。その作品には古典文学の深い味わいがあり、多くは擬古文です。明治28年から、病死する明治29年までに多数の傑作を発表し、この期間は「奇跡の14ヶ月」と呼ばれています。ここまではすべて教育者か作家でしたが、最後にご紹介する野口英世は有名な医学者で、細菌学者でした。彼はアメリカで病原体を特定する数々の発表を行い、世界の医学界を揺るがしました。

これらのお札の有名人について知ってみて、みなさんはどんなことを考えましたか?どの有名人も、他人より優れたところがあるからこそ成功したのですね。今度お札を取り出した時は、支払う前にちょっとお札をご覧になって、自分を励ましてみてはいかがでしょうか?皆さんも、いつか紙幣の上の人物になれるかもしれませんよ。(哈日杏子執筆、撮影)

京都/嵯峨野古銭 http://www.saganokosen.jp/index.html  哈日杏子のブログ http://harikyoko.wordpress.com/ (中、日)



第13回 原宿

【原宿の歴史】60年代には、アメリカ占領期の文化の影響を受けた若者たちが高級な外車に乗って現れた。70年代初めには、ファッション雑誌「anan」が「東京の街で外国を発見する原宿物語」を特集した。80年代に入ると、「少年少女文化」が次第に花開き、原宿の流行は成熟期に入る。ここを行く人の流れと街のすべてが、活力に満ちた「ファッションの生態圏」を構成し、若者の個性を歌い上げている。
 
【竹下通り】JR原宿駅を出て、ゆっくりと明治通りに向かう全長約350メートルの狭い道。両側には若者向けの華やかな流行のファッションやグッズの店がひしめき合っている。常に流行の最先端を行く店もあり、伝統の看板を約30年守り続けてきた老舗もある。個性的なファッションの街として広く知られ、地方からの修学旅行生だけでなく、外国人観光客も絶え間なく訪れている。
 
【裏原宿】神宮前から千駄ヶ谷にかけての服飾洋品店が集中する一帯で、特に「原宿通り」と「渋谷川遊歩道」を指す。「竹下通り」に比べると発展が遅かったが、道路が複雑であるため賃料が安く、「竹下通り」に開店できない若者たちにチャンスを提供している。テレビ番組では1980年代から1990年代にかけて、「竹下通りの裏側にある道には、竹下通りの喧騒とは全く異なる静かでおしゃれなカフェやレストランがある」として、「裏原宿」と名付けた。(姚遠撮影、執筆)

タイトル:「包まれた顔」
場所:裏原宿
撮影のポイント:道端に立つ、人間そっくりのマネキンが、頭と顔を厚いガーゼで覆われている。被写体にできる限り近づくと、彼らの呼吸が感じられるようだ。それでこそ見る人にインパクトを与えることができるのである。
使用フィルタ:He-fe(顔の布と服の質感を強調する。フレームの装飾効果。)
タイトル:「宇宙の自動販売機」
場所:デザインフェスタギャラリー
撮影のポイント:自動販売機が画面の三分の二を占めているのは、夢のような落書きを示すためだけでなく、しっかりとした重量感を表現するためでもある。周囲の壁、ゴミ箱などは引き立て役になっている。
使用フィルタ:Lo-fi(カラフルな色彩をより鮮やかにする。フレームの装飾効果。)

タイトル:「祈りを捧げる」
場所:竹下通り附近
撮影のポイント:両手でカメラを頭の上に挙げた瞬間を捉えたら、まるでお祈りをする姿のように見えた。色も形も様々なシャツにできるだけ多くの空間を与え、もちろん人物の位置にも気を配る必要がある。
使用フィルタ:Lo-fi(カラフルな色彩をより鮮やかにする。フレームの装飾効果。)
タイトル:「サラリーマン」
場所:デザインフェスタオフィス
撮影のポイント:しゃがんで撮影し、サラリーマン群像を画面の対角線上に配置する。エスカレーターを上がっていく動きを表現すると共に、人物像の大から小への変化による奥行きの視覚的効果がある。
使用フィルタ:Lo-fi(壁の質感と黒い色を強調する。フレームの装飾効果。)

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