満月のライブ「あ い」
「踊絵師」は、踊りながら絵を描く絵師である。音楽の中で自然に身体が動き始め、手にした絵筆からラインと色が流れ出す。まるで音楽と人と絵が一つに溶け合うように・・・。踊絵師であり、ボディペインティングアーティストでもある神田サオリさんは、抽象と具象を完璧に結合し、その絵筆から生まれるものには、水墨画のような精神性を持った流れるような色彩もあり、少女の瞳のような繊細なイメージもある。逆巻くような黒雲も、咲き誇る花々も、絵師の心から溢れるように流れ出し、筆が下ろされた瞬間に華麗な風景が花開く。
林明日香さんは13歳でデビューした天才的な歌姫で、谷村新司に「心に響く歌を歌う歌手」と言われた。一般のアイドル歌手と異なり、歌声は低くのびやかで、声の強弱を思いのままにコントロールすることができ、まるで心の深奥ではじけた音楽が喉と唇を通って、色も形もない枝葉を飛ぶような速さで伸ばしていくようだ。
サオリさんが踊絵師になったきっかけは、10年前に偶然明日香さんの歌を聞いたことだった。彼女の歌声が一瞬のうちにサオリさんの頭をつき抜け、涙が止まらなくなって、歌声に含まれるエネルギーを色彩と形にせずにいられなくなった。それ以来、音楽の中で絵を描くことに夢中になって続けるうちに、ついに踊絵師になったのである。「音の波に魂が湧いて、身体が踊り、踊りの先に絵が生まれる。現在の私自身の創作スタイルの原点は、彼女の歌声との出逢いからスタートした。」とサオリさんは語る。
明日香さんも同じように言う。12歳の時にサオリさんに出会って、その後は神田サオリ×林明日香でこそ創れる空間があると知り、互いに欠かせない存在、他のものには代えられない存在になった。「私が発する声、波動を受け、サオリさんはそれを何倍にも鮮やかに色を乗せ返してくれる。そのエネルギー波動は、私も予測できない声を生み出す。その2人の波動が重なり、大きなものになった時、彼女となら海を越え空をも越え、奇跡を起こせる。」――明日香さんは、このように心の中の気持ちを語った。
――これは、踊絵師・神田サオリと歌姫・林明日香の運命の出逢いである。
3月10日、かすかに春の息吹を感じる満月の夜、神田サオリと林明日香は再び共にステージに上がり、「あ い」という名の、音楽と絵画のパフォーマンスを展開する。「あ い」とは「逢」であり「合」であり、「愛」でもある。最初から現在までの10年間の歳月の中で出逢い、共鳴し、互いを大切にしてかけがえのない存在になった二人を表現しているのかもしれない。あるいは、世界のすべての出逢いから惹かれあうまでの縁を表しているのかもしれない。今回、林明日香の力に溢れる歌声の中で、真っ白な空間にどんな華やかな風景が展開するのだろうか?神田サオリが踊りながら咲乱させる色彩は、どんなに高らかな熱唱を導き出すのだろうか?(李薊執筆)
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