眠らない目:新宿(その三)
西新宿の高層ビル街の深夜も消えない灯りは、かつて無数の経済繁栄のバブルを意味していた。現在のように不景気な世の中であっても、依然としてそれは、たゆまぬ向上の象徴である。初冬の寒風が身にしみるような季節になった丑三つ時を過ぎた頃。サラリーマンが続々とビルの中から退勤してくるのにすれ違う。この時間には終電もすでに行ってしまい、駅の巨大な鉄の扉もしまっている。再びやって来る明日のために、「小さくてもすべてが揃っている」カプセルホテルこそ、最も経済的、且つ安全で確かな居場所である。
日本で最初のカプセルホテルは「商売の都」大阪で生まれた。1979年2月1日、梅田のカプセルインが営業を開始したのだ。有名な建築家の黒川紀章の手によるこの大作は、元々遅くまで残業して終電に間に合わなかった会社員が一泊するためのものだったので、「カプセルホテル」は一般的に交通の主要なポイントとなる駅のそばにあった。概観は目立たず、広告の看板もないが、探そうと思えば簡単に見つかった。
02:00 グリーンプラザカプセルホテル
新宿西口から六、七分歩くと、日本最大級の、630の客室を持つ「グリーンプラザカプセルホテル」に着く。部屋と浴室以外に、マッサージ室と光明石温泉など7種類の温浴施設がある。追加料金を40分あたり3000円支払うと、マッサージ師の巧みな技で、全身の疲労を取り去ってもらえる。24時間いつでもチェックインとチェックアウトができる。快適、快眠、安全、大規模……どの点をとっても他のカプセルホテルとは比べものにならない。
身体を海老のように曲げないと入れず、衝立はあるが部屋を閉め切るようなドアはなく、隣の人のせき、いびきなどいろいろな音が耳に入る。……カプセルホテルではぐっすり寝るのは難しい。だが600円を支払ってパソコンと椅子だけで夜を過ごす、名高い「ネット難民」に比べたら、ここは身体を休める真の港と言えるのではないだろうか?
資源の節約と空間使用の巧みさで、カプセルホテルの人気は衰えない。以前は、終電に乗り遅れたサラリーマンが主要な客層だったが、最近は失業者やアルバイターが身を寄せる場所となり、三分の一が一ヶ月単位で支払う長期滞在客で、失業者が一年半も住んでいるというカプセルホテルもある。無料でサウナや温泉に入れて、寝具も換えてもらえるのだから、狭い部屋に慣れた都会人が最高のわが家と考えるのも無理はない。カプセルホテルは、新宿の本当の意味での夜の世界が凝縮されている。これこそ、本物の夜の都市なのである。(つづく)(姚遠執筆)
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