脱線し暴走する好奇心
地味な服の女性が朝霧のたちこめた住宅街に静かに立っている。彼女は家政婦の三田である。突然の事故で阿須田家は母親を失い、残された父親と四人の子どもたちが一緒に暮らしている。そこで、炊事、洗濯、掃除などすべての家事に精通するが、「笑わず、泣かず、媚びない」三田がすべてを毅然として引き受ける。時が経つにつれて、阿須田家に隠された深い問題が次第に浮かび上がってくる・・・。
「家政婦のミタ」は、日本テレビの連続ドラマのゴールデンタイムに登場すると同時に、日本中から大きな反響があったドラマである。冷血な家政婦を演じる松島菜々子の、今までとはまったく異なる役柄の演技には本当に驚かされたが、脚本家の遊川和彦の苦心のシナリオの功績も大きい。第五回の視聴率は22.5%を突破し、木村拓哉主演の「南極大陸」の第一回を超えて、堂々と人気ナンバーワンに輝いた。
ロボットのような三田にはできないことがないだけでなく、おそらく日本のドラマ史上で最も感情に欠けた人物であるだろう。阿須田家の人々の出す命令のすべてに彼女は従う。長男の無理な要求に対して、自分から「キスにしましょうか?それとも脱ぎましょうか?」と聞いて、ためらうことなく下着姿になる。長女の「私を殺して」という要求には、本当に包丁を持って立ち向かう・・・。ドラえもんのポケットを思わせるような何でも入っている革のバッグを持ち、愛人の偵察に行ったり、隣の家の壁に落書きをしたり・・・これが家政婦の三田のイメージである。
ドラマに出てくる不倫、離婚、いじめ、自殺、誘拐などの深刻な社会問題は、すべて三田という氷のような美人の冷たい表情と忍者のような奇行の中で合理化されていく・・・。なるほど、ネット上でも日中両国の若い視聴者たちが異口同音に発する「面白い」、「結末を知りたい」という意見が絶対多数を占めるのも理解できる。わざと意表をつくようにストーリーを作り、身の上の謎や先の読めない展開などの面白さを用いて、善悪の観念の混乱や道徳的な脱線を覆い隠しているのだ。正直に言うと、「家政婦のミタ」の高視聴率には心配な気持ちになる。
同様に視聴者の感性を刺激する要素を持ちながら、ストーリーの中で社会問題に正面から向き合っているのが、NHKで深夜に放送されている、江國香織の小説をドラマ化した「カレ、夫、男友達」である。三姉妹の日常生活を通して、それぞれ異なる人生と愛情観を描く。別れ、疑惑、孤独、家庭内暴力などの様々な苦痛の中にあって、人生の真実を謳歌しているのである。ふだんは女性たちの生活の現状を深く知ることができないが、このドラマによって真実や信頼を感じることができ、彼女たちに深く共感すると同時に、次の放送を待ち焦がれるようになったのは、自分でも意外なことである。(姚遠執筆)
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