メルマガ:jp-Swiss-journal
タイトル:jp-Swiss-journal Vol. 130 - October 18, 2011  2011/10/18


■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
┃  Multi Lingual Internet Mail Magazine

★  jp-Swiss-journal - Vol. 130 - October 18, 2011 (Swiss Time)

☆   http://www.swissjapanwatcher.ch/
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■


【 目次 / INDEX / INHALTSVERZEICHNIS 】

【J】 2011年連邦議会議員選挙概況         明子 ヒューリマン
   
【E】 Federal parliament elections 2011 overview  Akiko Huerlimann


□━━━━━━━━━━━━【 日本語 】━━━━━━━━━━━━━━□


     2011年連邦議会議員選挙概況

     明子 ヒューリマン


2011年10月23日に連邦議会議員選挙 *1) の投票が行われるので、スイス
政治の現状を概観してみよう。2011年1月28日付ターゲス・アンツァイガー
紙の一面トップに民主主義の質がスイスは14位で中程度という記事が掲載
された。ツューリッヒの民主主義研究の調査結果だ。民主主義の模範国を
自認するスイスがこの程度の評価を受けた事にスイス国民は驚愕し反発し
、調査の信憑性を疑う意見が多数新聞紙上に寄せられた。憲法裁判制度が
無い事がスイスの評価を低めた要因らしいと報じられたが、同紙のDaniel
Foppa編集長は論説で、「選挙の年なので議論を喚起する目的だ。」とこの
評価を否定し、言論の自由が保障されているスイスでは、議会に対する裁
判所の過剰な介入を避ける意味でも憲法裁判所は不必要と一蹴した。国民
議会の法務委員会はこの問題について、現行法との整合性の検討を始めて
いると報じられている。

スイスは民主的連邦制故、地方政治の基盤であるカントン(州/県)がか
なりの自治権を握っている。上院議会に相当する「全州議会(シュテンデ
ラート/Staenderat)」*2) は州益を背負う代議員46名で構成される議会
だ。各カントン *3) から2名、半州からは1名づつ選出される。各カント
ンの議員数は大都市を抱えるカントンも郡部のカントンも同じ数の代表を
ベルンの連邦議会に送る。農業が主要産業のカントンがあり、化学産業、
精密機械産業、金融・貿易が主要産業のカントンもあるので、国に求める
重要政策はカントンに依って異なるのは当然だ。代議員を均等に配分する
扱いは、ドイツ語、フランス語、イタリア語等主要な公用語が異なる国民
の権利にも一定の配慮が出来る。

ベルンは農業カントンなので代議員は保守政党から出ている。ツューリッ
ヒは大都会故中道保守政党が代表を出している。概してフランス語圏は革
新政党の代表が多い。カントン・ジュネーヴ、カントン・ヴォーはその典
型だ。アッペンツェル・インナーローデンは既に今年5月に、ニドゥヴァル
デンは9月に其々CVP(キリスト教民主党)出身代議員が承認されている。
「盲腸」と揶揄される日本の参議院と違って、スイスの全州議会は相当の
権限があり、従って全州議会議員と国民議会議員とでは、前者の方が格段
に格上と目されている。現状では中道政党CVPが14議席を占めてトップ。中
道右派のFDP(自由民主党)が12議席、左派のSP(社会民主党)が8議席、
保守のSVP(スイス国民党)は7議席、中道左派の緑の党は2議席、緑の党と
FDPの中間に位置するグリーンリヴェラルは2議席、SVPから派生したBDP
(市民民主党)は1名という勢力図だ。ターゲス・アンツァイガー紙は、
今回の選挙で全州議会の政党別議席数に大きな変化は無いという見方をし
ている。

選挙戦の争点は何と言っても、原子エネルギーの扱いと持続可能なエネル
ギー政策だった。此の事が各政党の支持率に確実な変化をもたらした。が、
極端なスイスフラン高が進行する中で経済への懸念が高まり、危機感を募
らせて大量の移民阻止を訴えるSVPの宣伝が至る所で目に入ってくる。他に
も、税制、健康保険制度、年金制度、外交・防衛と重要課題が多数控えて
おり、選挙戦の終盤では争点が多極化してくるのはいつもながら当然と言
えば当然の傾向だ。国民議会議員 *4) の各政党の現有議席数は、SVPが59
議席、SPが41議席、FDPが35議席、CVPが30議席、Grueneが20議席、BDPが5
議席、グリーンリヴェラルが3議席、その他が7議席。選挙前の趨勢は、カ
ントンに依って事情は異なるものの、大勢は脱原発のグリーンリベラルが
支持を増やし、中途半端な政策のFDPが支持を下げると予想されている。他
方SVPから追い出されたBDPが支持率を最も急速に伸ばしていると報じられ
ている。BDPの寛容さと知的な姿勢が支持されているように思える。

スイスの選挙で未解決な課題として、政党への献金が不透明と言われて久
しい。法整備が未だ整っていないからだと言われている。各政党の選挙運
動の費用が増えていると報じられる中、透明性を求める意見が高まってき
ているようだ。これについては法務・警察担当のシモネッタ・ソンマルー
ガ連邦評議員が、諸外国の例も参考にしながら透明性を高めたいと表明し
ている。圧倒的に潤沢な資金力が伺えるSVPの過剰なまでの宣伝には反発も
見られ、ポスターに落書きが頻発して、党幹部は腹を立てているそうだ。
SVPの危機感を多くの国民が共有している現実は得票率に如実に表れている
一方で、全州議会の代議員が少ない事がSVPの辛い所だ。当面はこの情勢が
変わる気配は無いと報じられている。

その他の現象では、現職閣僚の選挙運動への参加に批判が寄せられている
事から、自粛する動きが出ている。女性の投票率低下を懸念するメディア
の報道が目立つ中で、政党も選挙の行方を左右する女性票の減少傾向には
危機感を表明している。しかし若い世代特に主要政党の青年部が存在感を
示し始めており、ベテラン議員に対抗して出馬する若手候補が目白押しだ。
党の方針に反するキャンペーンを開始した豪胆なSVPの若手候補も出て来て
おり、メディアの脚光を浴びている。議員在任期間が長い事や、高齢の議
員の立候補も槍玉に挙げられている。

気になる有権者の投票動向だが、2011年10月12日付ターゲス・アンツァイ
ガー紙が報じた同紙のオンライ調査によると、697名の回答者の内、53%が
既に郵便投票を済ませており、37%が確実に投票すると答えている。オンラ
イン調査は関心を寄せる人々が回答をする傾向はあるにしても、投票用紙
は10月初めに届いたばかりで、既に過半数が投票を済ませているのは、や
はり人々が選挙に並々ならぬ関心を寄せているからだと推察する。地元の
市役所から政党と候補者のパンフレットも送られてきた。決断を迫られて
いる有権者としてはっきりしているのは、脱原発を表明していない政党や
候補者には投票しない、と言う事だ。スイスでも、核エネルギーに依存し
なくてもエネルギー問題は大丈夫だと言う説が報道されている。いずれに
せよ、ツューリッヒの作家チャールス・レヴィンスキーはスイスの政治制
度を擁護して、「余りに長い間上手くっているので退屈だが、効率は良い。
」と、2011年10月3日付ターゲス・アンツァイガー紙のインタビューで語っ
ている。成熟した民主主義国家はこうだという証左ではないか。


【 参照 】

*1) 連邦議会議員選挙:
http://www.ch.ch/abstimmungen_und_wahlen/02186/index.html?lang=de
*2) 全州議会議員: 
http://www.parlament.ch/d/organe-mitglieder/staenderat/miglieder-sr-a-z
*3) カントン別全州議会議員:
http://www.parlament.ch/d/organe-mitglieder/staenderat/mitglieder-
kanton/Seiten/default.aspx
*4) 国民議会:
http://www.parlament.ch/e/organe-mitglieder/nationalrat/pages/
default.aspx


【 編集後記 】

連邦議会議員は4年間法整備に取り組み、随時国民にその活動や発言が報じ
られ、4年後の選挙で国民の信を問う、という環境がスイスでは成立してい
る。更にスイスの国家元首は輪番制で、政府を構成する7名の閣僚も各政党
が推薦して議会が承認する。このように権力の配分がきめ細かく制度化され
ていて、絶妙のバランスが取れている。こういう成功例を長年見ていると、
総理大臣が衆議院の解散権を持つと言われている日本の制度は怪しいと思う
ようになった。司法が政治家に対して違法な捜査と裁判を行い、マスコミが
これに協調する異常事態が続いている現在、日本でまともな議会制民主主義
が成立していない現実を憂えているのは筆者だけではない。兎に角、今回の
連邦議会議員選挙の結果 *4) に興味深い現象が見られるなら、後日お伝え
したい。


□━━━━━━━━━━━━━【 English 】━━━━━━━━━━━━━□


     Federal parliament elections 2011 overview

     Akiko Huerlimann


Federal elections *1) are going to take place on October 23, 2011,
therefore, let's have an overview of Swiss politics. The top page
of Tages-Anzeiger dated January 28, 2011 reported that the quality
of Swiss democracy is ranked around middle with a ranking as number
14. Swiss people were startled and acted repulsively by such a level
of judgment as Swiss avouch itself as the model of democracy. Many
letters were sent to newspapers with questions to the believability.
The missing of a constitutional court seems the major reason for the
lower judgment of Switzerland. Mr. Daniel Foppa, editor of the
newspaper, wrote in his editorial "the purpose was to provoke
dispute for the election year" and deny the evaluation. He
concluded that Switzerland is assured freedom of speech and press,
a constitution court is not necessary in order to avoid overmuch
interference to the parliament by the court. Reportedly the matter
is under the review by the legal committee of National Parliament
for consistency with the present law.

Because of the democratic federal system, the canton as the base of
local politics has great deal of autonomy. The "Council of States"
*2) is considered as upper parliament that is formed with 46 members
who represent the cantons. Two representatives are chosen from each
canton *3) and one representative is chosen from the half Canton.
The same number of representative are sent to the parliament no
matter the canton has a big city or is a rural district. Each canton
has different major industries such as agriculture, chemical
industry, precision machinery, financial and trade, therefore key
policies to demand to the central government are different. The
measurement of equal representative allocation can make certain
consideration to the peoples' rights in different major official
language such as German, French, and Italian.

As Bern is an agricultural canton, therefore, their representatives
are from a conservative party. Zurich is the biggest city that's why
the representatives are from a middle conservative party. In
general, French parts have representatives from radical parties,
such as the canton of Geneva and the canton of Vaud. The
representatives of the canton of Appenzell Innerrhoden were approved
in May, and the representatives of the canton of Nidwalden in
September, both from the CVP. The Japanese upper house is to be
cynical a "blind gut", but the Swiss Council of States has proper
power, therefore, comparing both parliament members, the former is
considered with a much higher prestige. Presently the power
landscape is as follows: the middle party CVP occupies 14 seats as
top, the middle-right party FDP occupies 12 seats, the left party
SP occupies 8 seats, the conservative SVP occupies 7 seats, the
middle left party Green occupies 2 seats, the Green Liberal
positioned between Green and FDP occupies 2 seats, and the BDP
spin-offs from SVP occupies one seat. The Tages-Anzeiger estimates
that the number of representative of the Council of States in each
party will not show a big change after the election.

After all, the point of dispute at the election was the atom energy
issue and sustainable energy politics more than anything else. This
led to a clear change of the support rate to the political parties.
However, the extreme increase of the Swiss Franc amid mounting
concern of the economy, heighten the sense of crisis. The SVP
campaign can be seen everywhere appealing to stop mass immigration.
Apart from that, many important issues should be considered such as
the tax system, health insurance system, pension fund system,
foreign affairs and national defense; as the usual final phase of
the election campaign tends to be multipolarized that is natural.
Present number of seats at the National Council *4) in each party is
as follows: SVP has 59 seats, SP has 41 seats, FDP has 35 seats, CVP
has 30 seats, Green has 20 seats, BDP has 5 seats, Green Liberal has
3 seats, and others are 7 seats. The trends before the election are
different in each canton, though it is estimated that major trend is
the breaking with the nuclear power generation, therefore, the Green
Liberal will get more support and the half-baked policy of FDP will
fall out of favor. On the other hand, it’s reported that the BDP
which is excluded from SVP gains the most rapidly support ratio. I
think that tolerance and intellectuality of BDP seems to receive the
support from people.

It's been said for many years that the unsolved issue of election
in Switzerland is the opaque political donation to the parties.
It's said that due to legal provisions, it has not yet settled
down. Reportedly the cost of the election campaign is increasing by
political parties, and claiming voices for the transparency seems
louder. About this matter, the Federal Councilor Simonetta
Sommaruga who is responsible for the Federal Department of Justice
and Police expressed that she will increase the transparency by
referring to the example of other countries. The nearly excess
campaign of SVP with seemingly the absolute fat budget can be seen
certain a backlash; often scribbled on their poster, therefore,
it's said that the party executives are angry about it. As a matter
of fact, the critical feeling of SVP is shared by many people, and
that's showed the share of the votes. On the other hand, the
trouble of SVP is that they occupy only few representatives at the
Council of States. Reportedly there is no sign of change about this
situation for the time being.

About the other phenomena, the presence at the election campaign by
the incumbent Federal Councilor is criticized and a movement of
voluntary restraint can be seen. In reports of media is visible a
decreasing voting ratio by women, political parties have also
expressed their concern about a lower trend of women's voting that
could govern the election result. The younger generation, especially
the youth groups of major political parties have started to appeal
their existence, and many young candidates compete with old-stagers.
There is dauntless the SVP young candidate who was started a
campaign against the party policy and was under the spot light of
media. The candidacies of long tenure or elderly representatives are
also under fire.

About voting the trends of constituency, the online questionnaire of
Tages-Anzeiger dated October 12, 2011 reported that out of 697
persons, 53% have already voted by postal ballot, and 37% of them
are certainly going to vote. The online questionnaire tends to be
answered by the people who have interests about the matter, however,
ballot papers were just delivered the beginning of October; more
than half of the answered had already finished ballot, and I guess
people have a great deal of interest on election. The brochures of
parties and candidates were sent by the local administration office.
As a constituency who is pressed for a decision, a clear point is
that I do not vote a party or a candidate that does not openly
aspire to break with nuclear power generation. Also in Switzerland,
a message was reported that energy has no problem without depending
on the nuclear energy. Anyway, writer Mr. Charles Lewinsky in Zurich
said in an interview with the Tages-Anzeiger on October 3, 2011,
protecting the Swiss political system "It's boring that the
political system is going on well too long, but efficient." The
evidence of a matured democratic country is like that.


【 Reference 】 

*1) Federal elections 2011:
http://www.ch.ch/abstimmungen_und_wahlen/02186/index.html?lang=de
*2) Members of the Council of States:
http://www.parlament.ch/d/organe-mitglieder/staenderat/miglieder-
sr-a-z/Seiten/default.aspx
*3) Members of the Council of States by canton:
http://www.parlament.ch/d/organe-mitglieder/staenderat/mitglieder
-kanton/Seiten/default.aspx
*4) National Council:
http://www.parlament.ch/e/organe-mitglieder/nationalrat/pages/
default.aspx


【 Editor's comment 】 

Parliament members work for the development of legal systems for
four years, during this period, their activities and opinions are
constantly reported to the nation, and seek voters response through
the next election; Such conditions are established in Switzerland.
In addition, the Swiss head of state follows a rotating schedule,
and seven government members are selected upon parties'
recommendation at the parliament. The power distribution is
carefully systemized like that and very well balanced. When I see
such a successful example for years, I doubt about the Japanese
system that says the premier has the right to dissolve the Lower
House. Now, Japan is in abnormal circumstances that the judicial
branch of the government acts in illegal search and judgment to
politicians and the major press cooperate with them. I am not the
only one who worries about the fact that in reality the
parliamentary democracy in Japan is not functioning reasonably.
Anyway, when I find interesting phenomena of the results in the
coming Swiss federal parliamentary election, I’d like to make a
report later.


□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□
We are intending to offer you current topics, based on Switzerland
and Japan with global view as a multi lingual magazine. Irregular
release: Weekly Swiss News Headlines will inform Issuing schedule.
Please subscribe both mail magazines. Some amendment can be made
later.

スイスと日本を基点にグローバルな視点で、ニュース性に重点を置きなが
ら、適宜日英独仏語の多言語でお届けします。不定期発行: 発行案内は
Weekly Swiss News Headlines からも随時お知らせしますので、両誌共に
ご愛読お願い致します。 後日修正が加えられる場合があります。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃【 jp-Swiss-journal 】  Number of readers: 462
★ Melma:         http://www.melma.com/backnumber_41022/
★ Melonpan:
┃ http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=002537
★ Mag2:          http://www.mag2.com/m/0000044048.htm etc.
★ E-Magazine:    http://www.emaga.com/info/jpchjrnl.html & etc.
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
☆ If you wish to refer our text, please send your mail to the
 issuer for permission.

無断転載・転送は固くご遠慮下さい。掲載のお問い合わせは発行元まで
メールでお願いします。 jp-swiss-journal@bluewin.ch

☆ Issuer / 発行元: the editors' Group of jp-Swiss-journal
Editor & web-master: Akiko Huerlimann
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ Sister Mail Magazine:
┃ 【Weekly Swiss News Headlines】 Number of readers: 1,619
┃ Subscribe & Unsubscribe / 登録・解除・アドレス変更
★ Melma:      http://www.melma.com/backnumber_40438/ (J)
★ Melonpan:
┃ http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=002526 (J)
★ Mag2:       http://w.mag2.com/m/0000025024.htm (J)
★ E-Magazine: http://www.emaga.com/info/chnews.html & etc,
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。