新しいヘッドマウントディスプレイ
いつの日か、ポータブルオーディオプレイヤーで音楽を聴くのと同じように、テレビのスクリーンが目の前に広がって、しばし世の中と隔絶したようにその世界に没頭して映画を鑑賞することができたら、どんなに面白いことだろう。実は「ヘッドマウント式テレビ」という発想は数十年前からあったのだが、SF小説の中の空想から電子製品の実験室での無数の試みに至るまで、満足できるヘッドマウンテンディスプレイは世界でこれまで一台も現れることがなかった。
早くも1995年には、任天堂が「バーチャルボーイ」というゴーグル型のゲーム機を発表したが、その意図は、ユーザーがゲームの中に身を置いて楽しんでほしいということだった。しかしこの試験的な製品は、体験の感覚があまりよくなかったので、コストを取り戻すほどには売れなかった。それから時はあっという間に流れ、今年の9月、日本の家電大手企業であるソニーが、最新の科学技術を搭載したヘッドマウントディスプレイを発表した。任天堂の失敗から16年。このHMZ−T1という新しいディスプレイは、我々を本当に夢に見た不思議な世界に連れて行ってくれるのだろうか?
まずは、この新しい商品がどんなものか見てみよう。白い本体を持つこの製品のサイズは、多くの人の想像を超えて驚くほど小さく、頭に載せるとアメリカの漫画「X−メン」に出てくるサイクロップスのようだ。ヘッドマウントディスプレイのスクリーンは目のすぐ近くにあるので、二つの目が焦点を失うという問題を解決するために、二つのスクリーンを配置する必要がある。だがソニーがこのディスプレイの中に二つの1280×720画素の液晶スクリーンを内蔵した意図は、その点だけを考えたのではない。そう、HMZ−T1は、裸眼3Dディスプレイなのだ。
そればかりではない。従来の3D表示方式は左右の目が見る画面を同時にディスプレイに表示し、眼鏡や回折格子でそれぞれ画面を左右の目に投影して、3Dの効果を作り出していた。だが、ヘッドマウントディスプレイは直接二つの目が見る画面をそれぞれの目に投影した、正真正銘の「本物の3D」なのだ。この3Dハイビジョンディスプレイの視覚効果は、20メートル離れて750インチの超大型スクリーンを見るのと同じで、劇場なみのインパクトのあるビジュアル効果を得ることができる。ソニーはテレビにおける高い技術によって、このディスプレイの色彩の美しさやコントラスト、残像などの面での優位性を保障している。
この時代を画する意味を持ったヘッドマウントディスプレイは、11月11日に発売される。価格は59800円である。一方、ソニーのEVP/CEOである加藤勝さんは、ヘッドマウントディスプレイの音と光の効果は未成年の脳の発育に悪影響を与える可能性があるので、15歳未満の子どもは使用を控えるようにと忠告している。(凱特執筆)
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