秋風吹く銀座の夜に
夕焼けが少しずつ和光の時計塔を暗赤色に染めていき、中央通りの両側のネオンが星のように輝きだす。たくさんの華やかな看板や、気のきいた言葉が並んだ広告。ゆっくりと浸透していく夜の色の中で、不思議な国からやってきたような濃厚な香りが四丁目交差点に集まり、華やかで高貴な気分を四方に撒き散らしていく。……ああ、銀座よ、巨大でまばゆい不夜城よ。
この「世界で三つの指に入る豪華な街」の夜景を空から俯瞰できたら、目に入るのは交差する二本の輝く銀河だろう。4つの大型百貨店、30の映画館、100の画廊、500の高級専門店、1600以上の広い範囲に分布するバーやナイトクラブ……灯りが光り輝き、ヨーロッパ式、日本式、レトロ、モダンなどの様々な建築物、行き交う人の流れなどが秋風の吹く夜の中に調和して溶け合っていく。
しかし、この絢爛豪華な街が何度も災害に見舞われていることをご存知だろうか?140年前の大火が銀座を焦土に変えたのは、ガス灯がもたらす文明開化の予兆と言えるだろう。88年前の関東大震災も免れることができなかったが、目覚しい復活によって日本一の街の構造が打ち立てられた。3.11東北大震災後は、数百軒のバーやナイトクラブがつぶれ、被災地から200キロ離れた銀座の夜は勢いを失ったかのようだ。
秋の色に満ちた銀座の街をそぞろ歩きながら、周囲のものを一心に感じるように努めた。にぎやかな人々の声でいっぱいのビヤホールの閉店前、店の前で女性たちが楽しげにサンバを踊っている。静かな街角に、灯りの前で、道行く人々が手相を見てもらいに来るのを占い師が待っている。ユニクロ、H&M、ZARA……ショーウインドウからは、若々しく、今風で、活発な雰囲気が伝わってくる。……レンガと柳の街が、ガラスとアルミニウム合金の透明感に覆われ、ゆったりと落ち着いた街を醸成している。
銀座を取材して気がついたのだが、街灯一つの選択にも、商店街の人々は苦心を重ねている。ショッピングや散歩をする人々を、暗い夜でも肌の色がもっと美しく見えるように、口紅がもっと鮮やかになるように、彼らは常に繰り返し討論し、何度も実験したという。――美を極致まで追求する民族なのだ!辛く苦しい時代を経過しても、銀座はやはり銀座であり、銀座の夜空は依然として輝き、人々を魅了する。もう少ししたら、クリスマスを迎えるための灯りがいっぱい付けられたクリスマスツリーや、新年の鐘の音と共にゆっくりと目覚めるショーウインドウが、再び華麗な楽章を奏でることだろう。今夜の秋風が伝えてくるものは、その復興の序曲に過ぎない。(姚遠執筆)
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