一歩を越える勇気
青く澄みきった大空、朝日が少しずつ地平から上ってくる…これは飛行機の窓からよく見られる光景ではないだろうか。表紙の写真と「一歩を越える勇気」という題名に引かれて、この本を書棚から手に取った瞬間、栗城史多(くりきのぶかず)という見覚えのある著者名が目に入った。この写真は飛行機から撮影したものではなく、著者が世界の屋根を歩き、大地を踏みしめて青空を仰いだ感動の一瞬をカメラに収めたものだったのだ。
この28歳の、普通のスポーツマンより小柄で、肺活量も腕力も脚力も平均男性以下の若い挑戦者は、これまでに世界の七大陸のうち六大陸の最高峰を制覇し、ヒマラヤ山脈の8000メートルを超える三つの峰で酸素ボンベなしの単独登頂に成功している。栗城史多さんという勇敢さとパワーのシンボルは、アイドルグループ「嵐」を初めとする現代の日本人青年たちの無限の憧れを集めている。
ブルーの山頂の表紙をめくると、我々は栗城さんと一緒に、彼が学生時代に初めて登った北アメリカのマッキンリーに入っていく。彼が背負った重い器材と、世界最高峰でネットワーク実況中継を行う大変さが直接に感じられる。強い感動に襲われると同時に、著者の「登山の技術を教えるためではなく、もっと多くの人々に一歩を踏み出す勇気を伝えたい」という「冒険の共有」という出版の意図が伝わってくる。
我々が栗城さんの登った山についてよく知らなかったとしても、彼の苛酷な体験と、夢から一歩一歩成功への道を歩んだ行程は、私たちのそれぞれの人生とも通じ合うものがある。現実生活の中で、誰しも様々な「山」に直面し、自分のいる「位置」を把握するのが何よりも大切になる。自分のいる場所をはっきりと認識して勇敢に一歩を踏み出せば、どんなに険しい山でも踏破できるに違いない。だが、恐がって元の位置に留まれば、困難を恐れて逃げ出すという運命を変えることはできない。
「一歩を越える勇気」の最後には、七大陸の最高峰の最後の一つとして去年の9月にエベレストに挑戦し、7950メートル地点で健康状態のために登頂を断念した時のことが描かれている。1年前の残念さを思いながら、今月再挑戦する彼に大きな期待を抱き、最高の瞬間を共有できることを楽しみにしている。ここまで書いてきて、ふと気がついた。登山家栗城史多が立っている場所は、実はエベレストではなく、彼の屈することのない永遠に挑戦し続ける心にあるのだということを。(姚遠執筆)
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