宿泊で日本の心を体験する
8月になると、京都は旅行シーズンに入る。この時期に観光をする場合、まずしなければならないのは部屋の予約である。京都の宿は大きく二種類に分かれ、一つはみなさんよくご存知の西洋式ホテルである。京都には世界的に有名なホテルチェーンがいくつかあり、規範化された管理とサービスで、安心して宿泊できる。しかし今回みなさんにご推薦したいのは、伝統文化を備えた日本式旅館である。優美で品のある環境が京都の景色と融け合って、部屋からも食事からも、これぞ本物という京都を体験することができるのだ。
予算が充分で、日本語がわかる場合は、百年以上前の建築を改修して使用している日本旅館を選ぶこともできる。だがもし快適な環境や、至れり尽くせりの日本式サービスを希望するならば、新式の日本旅館を選ぶのが最もよいだろう。京都の繁華な地域にある「平新」は、そのような日本旅館である。地下鉄「四条駅」で下車し、徒歩3分のところにある。黒と白を組み合わせた外観は、素朴で清潔感に溢れている。明るく広いロビーや、従業員の中国語によるサービスは、異郷にいることをしばし忘れさせてくれるほどである。
チェックインの手続きが終わって旅館に入っていくと、ジムもバーもなく、豪華なシャンデリアもシルクのじゅうたんもないのが、普通にイメージするホテルとはまったく異なるところだ。ここの部屋はすべて日本式のたたみの部屋であり、どの部屋も10畳以上で、風呂と手洗いが設置されていて、非常に広くて快適である。
日本式のふすまを開けると、たたみ独特の爽やかな香りが漂ってくる。扉を閉めると、たちまち周囲の静けさが感じられる。座卓の前に坐って、熱い日本茶をいれ、窓の外の日本庭園のよく手入れされた草花を眺める。こんな静かな気持ちは、何年も味わったことのないものだ。疲れた心が静かな雰囲気の中で癒され、旅の疲れも一気に吹き飛んでしまう。
大都市の華美に慣れた心でここに来ると、「簡素」ということを改めて深く考えさせられる。部屋はたいへん清潔で、しつらえも非常にシンプルだ。伝統的なたたみ、部屋には座卓が置かれ、壁には絵がかかっている。昼間は部屋の中に寝具の類は見当たらず、夜になると従業員がたたみの上にふとんを敷いてくれる。
食事の中に細やかさを味わう
平新に泊まったら、絶対にはずせないのが出される料理である。人気最高の平新の夕食は、京都の会席料理としゃぶしゃぶだ。日本旅館の夕飯は、それぞれの部屋でいただく。従業員が、精緻に作られた食事を一つずつ運んでくれる。前菜から始まって最後のデザートまで、ひとつひとつの料理が美しく精巧に作られて、まるで芸術品のようだ。味の方も、その外観に負けてはいない。最も新鮮な季節の食材を選び、丁寧に組み合わせて調理した美食は非常に繊細で、味も重層的である。細かく丁寧に味わってこそ、そのすばらしさを感じることができる。
朝食の京都のおばんざい料理も、是非味わうべきおいしさだ。「おばんざい」とは、京都の長い歴史と伝統の下で育まれた家庭料理である。その内容は、えび芋と棒鱈で作られた最も代表的な京都料理である芋棒、さらには冷奴、あなご、かぶ、油あげなど、京都料理では不可欠な新鮮な食材がそろっている。早朝に起きて、朝食で京都の民間の味を味わえば、満足感いっぱいになるだろう。
サービスに人々の気風を感じる
日本旅館は気持ちのこもった丁寧なサービスで有名だ。平新のすべての従業員の手厚いもてなしに、まるで家にいるような気分になれる。彼らはお客さんのためにすばらしい料理を運び、寝床を丁寧に準備してくれる。もし旅行について質問があれば、中国語のできる従業員が親切に答えてくれ、京都の歴史や風土、人情、さらには旅館周辺の観光スポットも説明してくれる。旅館についての面白い話もいろいろ話してくれ、友達と話しているような気持ちになれる。
平新に泊まったら、従業員とおしゃべりをしないのはもったいない。外国人観光客にとっては、現地人の生活を深く知ってこそ、その国全体の魅力を体験することができる。言葉の壁に阻まれて、多くの場合、日本旅行で一般の人と交流するのは難しい。中国語サービスのある平新では、この絶好の機会を逃さないでほしい。
また、平新のサービスにおいては、お客さんのプライバシーはできる限り尊重してくれる。何もない時は、旅館内はたいへん静かで、従業員同士の話し声も聞こえない。従業員は、お客さんが必要な時だけ登場するのである。 |