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タイトル:点描ポーランドの風景・クラクフ編(Appendix)、2010.7(ポーランドから衆愚政治に踊る日本への手紙)  2010/08/12


[机上の妄想]点描ポーランドの風景・クラクフ編(Appendix)、2010.7(ポー
ランドから衆愚政治に踊る日本への手紙) 


<注記0>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100811

<注記>当シリーズ記事の「クラクフ編(1)、(2)、(3)」については
下記を参照のこと。なお、右上の画像はhttp://passionplay.tabata3.com/index2.htmより。

点描ポーランドの風景・クラクフ編(1)、2010.7(ポーランドから衆愚政治
に踊る日本への手紙)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100731

点描ポーランドの風景・クラクフ編(2)、2010.7(ポーランドから衆愚政治
に踊る日本への手紙)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100803

点描ポーランドの風景・クラクフ編(2)、2010.7(ポーランドから衆愚政治
に踊る日本への手紙)
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100806

【参考画像】ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世(位1978- 2005)・・・画像はウ
イキメディアより
 

(ハマコ―逮捕に象徴される日本政治の“場に流れるままの貧相”と対比すべき、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世のシュラフタ民主主義の伝統による積極意思の迫力)

背任容疑で逮捕された民放テレビ・オチャラケ政治番組の人気コメンテータ・
ハマコ―は、噂によれば三十数億円の借金を背負っているらしい。これ以外の
低劣な芸能化政治トークショー出演者や人気コメンテータ&芸能人らも恐らく
似たり寄ったりの連中なのであろう。

これら民放テレビの低劣さの根底にあるのは、その低劣さ故の大衆一般(衆愚)
向けの表層的な分かり易さということに止まらず、ソコには実はそれより忌む
べきモが隠されている。それは、我われ日本人が、どのような局面であっても
確固たる自己の考え・主張よりも“その場かぎりの親密な空気を最優先させる”
という悪しき習性を身に帯びており、そこから絶対に逃れられぬという現実が
あることだ。

言い換えれば、低劣な民放テレビの政治ショー番組の内容(コメンテータや芸
能人化した政治家らが一方的に語り、わめき散らしているだけであるにもかか
わらず、恰も視聴者自身が、その場その場の討議に参加しているとする錯覚に
満ちた空気)に視聴者ら(一般の日本国民の多く)が上っ面だけのめり込み、
殆ど無意識に付和雷同し、かつそれに満足してしまい、何一つ新たな変化・革
新への意志が芽生えず、巧妙に誘導された過去の呪縛へのまどろみの中で、ほ
ぼ完璧に満足させられてしまうということだ。

ところで、ヨハネ・パウロ2世は、ポーランド出身の第264代ローマ教皇で本名
はカロル・ユゼフ・ヴォイティワ(Karol Józef Wojtyła)、クラクフの南西ヴ
ァドヴィツェの生まれであり、その在位期間は、近現代における歴代教皇のな
かで最長の27年で、これは全教皇の中でも3番目の長さである。

ヨハネ・パウロ2世は、在位期間中に計14回の回勅(全世界の聖職者・信徒あ
てに書簡の形で発信する基本文書)を発信しており、その内容は「教義、信仰、
教会史、生命、人権、家庭、女性、倫理、労働、環境、平和、発展」など、広
範囲の問題に及ぶ。

 
これには、現代世界に生きるローマ教会が、新たな道標(みちしるべ)を全世
界の人々へ示すとともに教会が直面する場以外の諸問題に対しても真理と正義
の光を、そして教会としての発言と行動を積極的な意思で示すという意味があ
ったのだ。

特に、ポーランド人指導層の一人としてシュラフタ民主主義精神を引き継ぐヨ
ハネ・パウロ2世(クラクフ・マリア教会の司教を務めていた)は、戦前のポ
ーランド内に約330万人(1934年/全ヨーロッパには約600万人)が居住してい
たとされ、その多くがアウシュビッツなどで辛酸を舐めたユダヤ人との和解と
対話に真摯な取り組みを行ったことが知られている。

例えば、1994年4月8日にバチカンで行われた「ナチスの大虐殺で犠牲になった
数百万人のユダヤ人を追悼する教皇庁主催のコンサート」(カトリック教会主
催の追悼行事はこれが初めて、約7500人のホロコースト生存者が世界中から列
席した)で、“ユダヤ教とカトリックの和解が確実に進んでいることに喜びを
表し、人類は二度とこのような罪を犯してならない”と語った。

また、1997年10月30日〜11月1日には、教皇庁の紀元2000年大聖年神学・歴史委
員会が「キリスト教世界における反ユダヤ主義の根源」をテーマとする教会間
会議をバチカンで行っている。

当然ながら、ヨハネ・パウロ2世が他の宗教や異文化との交流にも非常に積極
的で、プロテスタント諸派や東方正教会、あるいは仏教界との和解と対話への
努力を継続的に行い、大きな成果を上げたことは周知のとおりである。

因みに、冷戦体制下の東欧全般で有効だったはずの共産主義もシュラフタ民主
主義とカトリックを伝統とするポーランドでは基本的に体質に合わなかったた
め、ソ連支配下の共産主義体制に対するポーランド国民の本心は事実上の面従
腹背というのが現実であったと思われる。

このような中、ポーランドの共産党政権は、狡猾にも、ヨハネ・パウロ2世が
ローマ教皇になる(1978〜)とカトリック教会を国民を宥めつつ政権を安定化
させる道具に利用することを考えた。このためカトリック教会は一種のサンク
チュアリ(聖域)化して、共産党政権にとっては皮肉なことだが、その後は独立
自主管理労働組合「連帯」の幹部が逮捕されてもカトリック教会(ヨハネ・パ
ウロ2世)の介入によって彼らの命は守られることになった。

ここで見られるのは、やはりポーランドのシュラフタ民主主義という名の“理
念型政治優位の伝統”ということである。この精神と比べれば、我が国の政治
が、ひたすら「新自由主義、市場原理主義」の作為から抜け出せず「『単純な
意味での“小さな政府”=財務官僚体制』>『政治=民主主義理念の重視』」
という錯誤(政治の適正配分の責任を放棄したトリクルダウン幻想)のドグマに
嵌り、まことに貧相な非リアリズム政治のレベルで停滞し続けていることが分
かる。

<注記>シュラフタ民主主義については、冒頭に掲げた当シリーズ(1)~(3)
の記事を参照のこと。

(2010年オーバーアマガウ・キリスト受難劇の成功に見る、ポーランド出身ロ
ーマ教皇ヨハネ・パウロ2世の先見性)

【画像】オーバーアマガウ村の景観・・・一枚目の画像はウイキメディア、二
枚目はhttp://www.globalvipvacations.com/searchtoursdetails.aspx?id=138。
三枚目は
http://passionplay.tabata3.com/index2.htm、四枚目は
http://www.oberammergau-passion.com/en-us/photo-and-video/pictures/passion-play-2010/slideshow-passion-play-2010.html、五枚目はhttp://passionplay.tabata3.com/index2.htm、より 
 
 
2010年で41回目を迎えるドイツ・バイエルン州・オーバー・アマガウ(フレスコ画で彩られた美しい町並みと木彫りで有名な人口・約5千人の村)で行われる「キリスト受難劇」の歴史(原則、10年ごとに行われてきた)は1633年に始まり、377年目にあたる今回(2010年、約3千人の村民が出演)も、その行事は無事に開催中である。

しかし、この「受難劇公演」そのものが“受難の歴史”であり、特に20世紀初頭のヒトラー(ナチス)・ドイツ時代〜今回・公演までのプロセスは辛酸を味わう歴史であった。なぜなら、これを観劇したヒトラーが悪徳なユダヤ人迫害の“確固たる口実”をソノ中に発見し、ソレを悪用してしまったからだ。

「受難劇公演」の主催関係者(演出、脚本担当)およびミュンヘン大学・神学部ののルートヴィヒ・メーデル教授(カトリック神父)らの努力によってカトリック的解釈とユダヤ人側の解釈の溝は埋まりつつある。

しかし、絶対に見逃せないのは、何よりもこのようなカトリックとユダヤ教の間の溝が狭まりつつある背景には1965年以来の約20年にもおよぶ、ポーランド・シュラフタ民主主義の精神に裏付けられたヨハネ・パウロ2世のユダヤ教との関係改善と対話努力という実績が存在することだ。つまり、そのあいだローマ教皇庁は「ユダヤ人はイエスの死に責任がない、イエスもユダヤ人であった」とする歴史的「回勅」を発行し、同じ趣旨の「演説」と「宗教関連行事」を繰り返してきたのである。

<参考資料1/オーバー・アマガウ受難劇関連>

アルプス山麓、祈りの大舞台(NHKスペシャル)、
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/00/l0007/l0722s.html

オーバーアマガウ・キリスト受難劇、http://passionplay.tabata3.com/

ドイツ大使館/オーバーアマガウのキリスト受難劇、
h

ttp://www.tokyo.diplo.de/Vertretung/tokyo/ja/09__D_20Info/PD/Ku/Event__
Tourismus/Passionsspiel.html

Passion Play Oberammergau,http://www.passionplay-oberammergau.com/

オーバーアマガウの観劇ツアー、
http://passionplay.tabata3.com/index2.htm

生まれ変わったキリスト受難劇、h
ttp://passionplay.tabata3.com/myrtos.htm

<参考資料2/当シリーズ(3)、
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100806へのコメント&レスの転載>

(FMdMRKf5Fwより転送)

01. 2010年8月06日 23:55:28:いつもながらの博識と的を射る論評に感服して
います。

小生も15年前、アウシュビッツを訪ねる機会がありました。まだポ−ランド
が旧ソ連支配から脱して日が浅く、失業とインフレの進行で国民生活は危機的
と聞いていて、物見遊山的な旅行団に加わることに、すこし戸惑いがありまし
た。


しかし、ワルシャワやクラクフに行って意外な感じを受けました。「悠久のポ
ーランド」と題した小文を某誌に投稿しましたが、「ゆったりと広がる広がる
田園に併せて、時もゆうゆうと流れているような豊かさをかんじた。」ことを
思い出しました。

その背後に、ご紹介のような「歴史」の裏付けがあるということなのですね。 
toxandoria 2010/08/07 18:37 

( YqqS.BdzuYk56:35Lt1MOeqIより転送)

2010年8月07日 16:51:51: YqqS.BdzuYk56: 35Lt1MOeqI「悠久のポーランド」
・・・美しい森と平原が拡がるあの広大な景観にまさに相応しい言葉ですね。
せっかちでキョロキョロする日本がボタンを掛け違えた国とすれば、ポーラン
ドは地道にその歴史・風土に見合うペースでボタンを掛けてきた国という印象
です。


日本の約8割に匹敵する国土は殆どが平原(あるいは緩やかな丘陵地)で、そ
の約42%が農地という農業国であること、および非常に高い教育水準(大学進
学率はヨーロッパ最高レベル)、この二つの条件を現代ポーランドは活かして
います。

共産主義政権下でも国有化・集団化されなかった個人経営中心の農業を逆に生
かしつつ、土地に合った麦類の栽培(ライ麦生産量は世界第二位)を主軸に世
界一の 生産量を誇る生鮮イチゴ、フランスの消費量の9割以上を供給するエス
カルゴ、あるいは各種ハーブ類など欧州向けオーガニック食材等に特化した農
業生産の シェアも拡大中のようです。

また、比較的高い農村部を中心とする合計特殊出生率(農村部1.53、都市部1.30/2008)の維持と解 放・自由化後(1990〜)の順調な経済成長、および先
進的な金融・財政政策という三つの好条件が「35才以下=50%」という若年層
構成の大きさ(平均 寿命=男72歳、女80歳)をもたらしたようです。

そして、このように個性的なポーランドという国の基盤が更に欧州における開
発研究部門 の集中(現在、外資系研究開発センターが40カ所設立され、それは
旧東欧諸国で最大規模)と国民の起業精神の活発化(国の支援体制が充実)、
あるいは西欧 各国における人材の活躍(非常に多くのポーランド人ホワイト
カラーの成功など)という好循環をもたらしているようです。

無論、良いことず くめではあり得ませんが、この他にも日本は色々と学ぶべき
点があるようです。結局、「歴史」の裏付けを取りそれを現在に十分活かすた
めには、教育を通して 主権者意識に目覚めた国民自身が、まず自国の歴史を正
しく客観的に学ぶ努力に傾注することが先だと教えられたような気がしました。

toxandoria 2010/08/08 10:36 

但し、安全・有望な投資先としてのポーランドへの欧米の投資が加速する現況では、 EU先進諸国自身の例に漏れず、グローバリズムの進展と市場原理へ過剰に
急傾斜する経済環境トレンドを放置すれば、必ずや大都市集中化と農業の疲弊、

村 部の過疎化、IT・ソフト&金融経済化への傾斜、核家族化、格差拡大傾向な
どとともに、約30年後にはポーランドと雖も必ずや少子高齢化社会になるという 
推計もあります(http://www.rc11-sociology-of-
aging.org/system/files/Poland.pdf)。

従っ て、かつてソ連支配の共産主義一党独裁体制下で苦難の歴史を経験した東
欧・ヴィシェグラード諸国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロヴァキア)
の盟主 たるポーランドにおいて、全く新たなタイプの社会・経済・財政政策に
かかわる知見が創発されることを期待したいところです。 

ぴっちゃん 2010/08/09 11:08

はじめまして。興味深く拝読させていただきました。

「・・・無論、それは、あの映画のような瑞々しい美少年(映画ではスウェー
]デン人のビョルン・ヨーハン・アンドレセンが演じた)ではなく、もはや老
醜をまとった“美少年”であったということらしいが。」とのことですが、ネ
ットで調べてみますと「本物のタージオ」はお歳を召しても、老醜どころか、
驚くほど上品な美男子でありましたhttp://www.fotoinfo.pl/sobstr067.htm 

toxandoria 2010/08/09 21:27 

“ぴっちゃん”さま、コメントありがとうございます。

池内 紀氏がクラクフで邂逅したのが“老齢で何歳のタージオ”であったのか
分かりませんが、たしかに60代頃の「本物のタージオ」は上品な美男子ですね。

“非公開”にさせて頂いた情報ありがとうございます。これから良く勉強させ
て頂きたいと思いますので、今後とも宜しくお願いします。 

【エピローグ画像】Chopin Nocturne

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