10年間の東京の夢
しとしとと降り続く雨、ぼんやりと遠くに見える地平線。聞き慣れた歌声が雨をかいくぐって、かすかに私の耳に届く―「10年たったら、なにしてるかな、変わらないでいられたなら、変わっていけたなら、めんどうだけど、たいせつなもの、増やしながら生きることが、いつか誇りになる…」KinKi Kidsの「10 years」、その濃厚な青春の心情が、私の深い想いを引き出してくれる…。
10年前の暖かな風の吹く夏の夜に、パソコンの前で静かに帆を揚げ、未知のインターネットの海に乗り出した。そして東京の海へと舵を取り、この大都市と心と心の対話を試みた。10年の風雨、10回の春秋、世の中は移り変わり、様々な想いがよぎる。10年は、歴史の大海原のほんの一滴、ほんの一瞬に過ぎないが、その間に日本は行きずりの異郷ではなく、ネット上の無数の人々と共有するもう一つの温かい故郷になった。
花はひっそりと咲き、歳月は痕跡を残す。航程が佳境に入り、旅人である私はふと気がついた。日本を訪れたり日本に長く住んだりするすべての人々を感動させるのは、六本木のミッドタウンや丸ビル、秋葉原、そして日々高くなっていく「東京スカイツリー」などを包み込む都会の光ではなく、まさに1300万人の東京人と彼らの喜怒哀楽の物語なのではないだろうか。10年間、誠実に助け合い、10年間、苦労を共にしてきた…、それは東京人たちだったのだ。彼らの海のように広い心が、漂泊する一人一人の不安に揺らぐ心を慰めてくれたのである。
10年間に、この青い地球という星には8億人が増え、57万人が自然災害で命を落とし、320万人が戦争やテロで殺され、6000万人が飢餓で死んでいった。10年間に、インターネットユーザーは3億5千万人から17億人に増加し、携帯電話ユーザーは10%から66%に増加した。ウェブサイトは1兆に達し、ウィキペディアの項目は1300万も増加した。10年間に、東京都内の路線価は11.3%下降し、東京の人口は100万人増加した。東京在住の中国人も8万人から倍に増えた。
どんな変化にしても、10年の月日は人生の中で非常に重要な節目である。どこの海を航行していたとしても、10年の月日でその土地の息吹や生活は人の血肉に入り込む。今夜は10年の帰結であり、そして新しい10年の始まりでもある。この航海は一人の漂泊者の高い理想を掲げた夢から始まったが、これからも無限の願いを乗せて、理想の航路を漂っていくことだろう。
ベランダに出て、胸を大きく開いて東京湾の雨の夜を抱きしめてみる。あの懐かしいメロディが、この時次第に大きくなり、天地の間にKinKi Kidsの感動的な歌声が響くようだった。「10年たったら、なにしてるかな、予想なんて現実には追いつかないけれど、近道しても、遠回りでも、並びながら歩く道が、すべて歴史になる。ひとつひとつ重ねてゆく、それが未来になる…」(姚遠執筆)
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