アモイに捧げる小夜曲
まだ発売前の、インクの匂いも真新しい本を手に取った時、「中国で最も美しい島のガイドブック」という文字に心が浮き立った。表紙をめくるとアモイの風が感じられた。コロンス島のピアノの音が聞こえてくる…、心はあっという間に、一年前の忘れがたい出会いの夜に引き戻された―。
東京の小石川の、築70年の古い家を改装して作られたおしゃれな喫茶店で、集まりがまもなく終わろうとしている時に遅れてやってきた日本人女性の意外な一言が、この感動的な物語の始まりだった。このあやこさんというライターは、申し訳なさそうにみんなに向かって言ったのだ。「中国のアモイから帰ってきたばかりで、忙しくて。私はコロンス島が大好きなんです。」
コロンス島は、懐かしい故郷の青い海の上に浮かぶ、2平方キロメートルにも満たない島だが、中国では屈指の「海上の花園」であり、多くの世界的ピアニストを育んだ「音楽の島」でもある。しかし日本人観光客には、まだほとんど知られていない。目の前に突然現れた女性がそのコロンス島から帰ってきたばかりというのは、実に不思議な「縁」ではないだろうか?
数ヵ月後、メールボックスを開けた私は、自分の目を疑った!それはあやこさんからのメールで、中国語を一言も話せない彼女が、先日初めて足を踏み入れた小島に再び出かけて、初めて日本語でコロンス島を紹介するガイドブックを書くという計画を、ある出版社が受け入れたというのである!
私は三連休を利用して、あやこさんと共に再びコロンス島を訪れた。そして、この日本女性に現地の友人たちを紹介し、彼女と一緒に島を一巡りした後、私は東京に戻った。だがあやこさんは島の民宿に留まり、1ヵ月にわたる情報収集を開始した。11月の爽やかな海風の中、朝早くから夜遅くまで、観光地や路地を歩き回り、150年前の租界時代が残した教会や西洋建築などをくまなく訪ねた。出版経費は非常に少なく、できる限り食費を倹約した上、手伝ってくれた大学生たちのために自分のお金も使わざるを得なかった。コロンス島を発つ朝、あやこさんは分厚い取材ノートと写真を整理し、コーヒーを飲みながら、民宿の庭に静かに座って、時間の流れるのに身を任せていた。人生の中の普段とは異なる1ヵ月を深く胸に収めるように……。
鷺島(アモイ)は鳳凰花の咲く季節になった(アモイでは鳳凰花は出会いと別れの季節を象徴する)。「コロンス島散歩――猫とピアノの楽園」を携えて、あやこさんは花いっぱいのコロンス島に再び向かった。1年前に初めてフェリーを降りたとき、彼女は好奇心でいっぱいだった。だが今の彼女は、ここのすべてについて現地の人よりよく知っている。アモイ市長は「アモイ日報」で、首席記者があやこさんをインタビューした時の記事を読んで、この異国のライターと会うことを熱望している。それは、あやこさんの満面の笑顔に、「実現できない夢はない」という言葉が書かれていたからに違いないと私は思う。(姚遠執筆)
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