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☆。・゜゜・。♪゜・。。・゜☆。・゜゜.。.:* ◆∞◇ ◆∞◇ ◇∞◆ クリスタルノベル〜百合族〜 ◇∞◆ ◆∞◇ Vol. 053 2010.6.27 ◆∞◇ ♪゜・。。・゜☆。・゜゜♪・゜゜・。☆。゜・。.。.:* ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ ♪ − 星の降る夜空の向こう 最終章 私は卒業まで、梨香とはほとんど会えなかった。たまにすれ違っても、お互 いの友達と一緒だったから目で軽く合図を交わす程度だった。 幸い、私の受験は成功した。来年からは夢にまで見た音大生だ。 何か言おうか。 会ってから旅立とうか、迷った。 でも今さら会っても、つらさが増すだけな気がして、私は梨香に何も告げず に東京にいこうと決めた。 なのに、梨香から偶然出発前日に連絡が入った。 「そろそろ東京に行くんでしょ?」 「知っていたの」 梨香は私が東京の音大に合格したことを知っていた。 「……明日なの」 「何時?」 聞かれて、時間を教えた。 もう二度と会わない方がいいのかと思ったけど、梨香の声を聞いたら会いた くなった。 出発の日、やっぱり家族が馬鹿みたいにそろって送り出しに来てくれた。私 はうっかり泣きそうになって、それを誤魔化すように早めに改札に入って家族 に別れを告げた。 時間を教えてあったけど、梨香は顔を見せなかった。 何かあったのかと思ってメールを送ってみたけど、返事がなかった。 ホームに降りて、一人で新幹線を待った。次にこのホームに立つ時、私は何 を考えているんだろう。そんな事をぼんやり思っていた。 「美紀さん!」 ぼうっとたたずむ私の後ろから、梨香の叫ぶ声がした。 どうやって新幹線乗り場に入ったのか分からなかったけど、薄いコート1枚 で、寒そうに梨香が大きな紙袋を持って立っていた。 「梨香……」 私は手にしていた荷物を放り投げて、梨香のいる方へ駆け寄った。 「これ……カイロ入れとくとあったかいんだよ。寒くて寂しくて……泣きたく なったら、これを枕にして寝てね」 そう言って手渡された紙袋。 中には、カイロを入れると温まるしかけになっている枕が入っていた。 私は……一人になる……。 ずっと考えないようにしていた現実が見えてしまって、私の心は大きく揺さ ぶられた。 私は泣いた。故郷を離れる寂しさと、梨香と本当に別れるんだという感覚が 同時に襲ってきて、耐えられなかった。 「忘れないでね……私も……梨香を一生忘れない……」 梨香が私にキスをした。彼女の頬に涙が伝っているのに気づいた。乗客の何 人かが私たちを奇異な眼で見ていたが、気にしなかった。 発車のベルが鳴る中で、梨香は最後まで私の身体を抱きしめていた。 「梨香!」 もうドアが閉まった列車の中から、私は彼女の名前を叫んだ。 忘れるわけない……こんなに大好きな人を、どうやって忘れられるっていう の。 梨香……また、会えるわね? 絶対……会えるよね? どんどん小さくなる梨香の姿を見て、私はそう思いながら情けないほどに泣 いていた。 ≪無料メールマガジン:アーケロン通信≫ オリジナル官能小説メールマガジンです。 濃い口の官能小説Tiny paradiseを連載中です。 登録は無料です。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ http://www.alphapolis.co.jp/maga.php?maga_id=1000563 オトメ文庫 ガールズラブ 電子書籍 http://www.dmm.co.jp/digital/book/lovelymei-001 レズビアンコミック http://www.dmm.co.jp/digital/book/-/list/=/article=keyword/id=4013/media=comic/ lovelymei-001 ♪======================================================= ご意見ご感想ご質問等々お待ちしております。 発行者 : 春野 水晶 * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』 * 発行周期:不定期(週2回発行予定) ========================================================♪ |