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◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆ 作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第127号 2010年5月22日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊) 編集・発行人 上ノ山明彦 ◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆ <お知らせ> 宮崎県庁が口蹄疫対策の義援金を募集しています。日本全国に口蹄疫が 拡がらないためにも、ご協力をよろしくお願いいたします。 http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/fukushi/fukushi/shakai_fukushi/html00165.html ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ●巻頭言 ● 上ノ山明彦 iPadの登場と他社の対抗機種への期待 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ 話題の「ipad」日本語版が、いよいよ5月下旬に発売になる。私も 電子ブックへの関心からこの機械に大いに関心がある。ユーチューブで英 語版の操作感を見たが、もともと多国語対応になっていて、セットアップ 時に言語を選ぶだけだ。 ということは、Wi-Fiの無線LANを使用するだけなら海外発売版でも問題 なく使えることになる。 ただし、携帯3Gの回線に接続するには、ソフトバンクから発売される日 本語版を手に入れる必要がある。 さて、問題の機能面は、ユーチューブで見ただけの話だが、パソコンと 同等以上のことができるな、と感じた。価格と機能、操作性を考えると、 すばらしい製品である。 でも、まだ私は買わない。というのはアマゾンの機種も気になるし、グ ーグルもソニーと共同で独自の電子ブック端末を開発中だという。それに 日本でどういうサービスが登場してくるかが問題だ。それを見極めたい。 いずれにしても成り行きが楽しみである。 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ●連載エッセイ ● 上ノ山明彦 江戸の恋 第5回 遊女の恋(2) ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ 文献に残っている遊女の恋の話は、ドラマチックでありロマンチックで もある。嘘と欲望で塗り固められた遊郭の中にあるからこそ、身分もお金 も関係のない真実の愛を見つけたとき、彼女たちは全身全霊をかけて恋人 に尽くすのだろうか? だがそれだけでは月並みである。たとえ壁を乗り越え結ばれたとしても、 さらなる世間の仕打ちが待っていることはわかっているはずだ。彼女たち は先のことを考えて行動したのではないだろう。 自分の人生への絶望感、そこからくる無常感が、一途に自分を愛してく れる男への愛となり、無償の奉仕となったのではないだろうか。それが周 囲の人の心を打ち、結果として高く評価されたり、身請けされて夫婦になっ たりしたのだろう。 島原の二代目吉野太夫は、最高の遊女としてその名を国内外に轟かせて いた。相手ができるのは、大名、豪商、高名な文化人くらいであった。 京都の町に小刀鍛冶の弟子がいた。吉野をどこで見初めたのか、ぜひと も吉野に会いたいと思った。だが、吉野に会うだけでも大金がいる。その 男は親方の仕事だけではなく、時間を惜しんでお金を稼ぐことにいそしん だ。 そうやってなんとかお金はできたのだが、太夫ともなると、身分が低い 上に紹介のない客は取らない。小刀鍛冶の弟子は途方にくれていた。その 話を人伝に聞いた吉野は、男をひそかに揚屋に呼び寄せた。男は長年の夢 が叶ったことを吉野に感謝し、そのまま帰ろうとした。吉野はその男の態 度に心を許したのか、一夜のちぎりを結んだ。それは遊郭では掟に背く行 為だった。まもなく吉野は島原から追放された。 追放後、吉野は灰屋紹益という文化人に身請けされ、幸福な生涯を送っ ている。 次は三代目吉野の話である。長崎のお金持ちの息子・源が島原に来て吉 野に出会い、通い詰めるようになった。借金はかさんだ。吉野は源を揚屋 に呼んで慰めていた。するとそこへ揚屋の一人が怒鳴り込んできた。吉野 は自分の衣類や道具を質に入れて百両を工面し、源の借金を帳消しにした。 源はすぐに長崎の親元に吉野のことを報告した。親は吉野の行動に感激し、 その人柄に惚れ、源の嫁にすることを決めた。すぐに千両をもって身請け し、祝宴は三日も続いたという。 二代目も三代目も、その心意気を見せてくれている。こういう女性に見 込まれた男は幸福者である。 吉原に二代目小紫という遊女がいた。そこへ鳥取の池田藩を脱藩し、 中間・小者という侍の最下級で働いていた平井権八という男が小紫に夢中 になった。権八の稼ぎではとても小紫に会うことさえままならない。せっ ぱ詰まった権八は、辻斬り強盗まで働くようになり、まもなく捕まってし まった。当然磔で処刑されてしまった。 その死を知った小紫は、権八が埋葬された寺を訪れ自害してしまった。 辻斬りをしてまで自分のことを思ってくれた男のことを、小紫も一身を賭 して愛していたのである。現代人の我々からみると、ほかに二人が生きて いく方法があったのにと思うところだが、その時代にはその時代のしがら みがあったのだ。切ない恋の物語である。 (ロマンチックでもあり切なくもある遊女たちの恋、まだまだ続きます) ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ●この名著を読め! 司馬遼太郎 著 『司馬遼太郎が考えたこと』、新潮社刊 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ このシリーズは文庫版で第19巻まである。司馬遼太郎の小説も人気だが、 彼の真骨頂は『街道をゆく』をはじめとするエッセイにあると私は考えて いる。私は気分が落ち込んだとき、本書を読み返すことにしている。する と、自分の視野の狭さがばかばかしくなり、もっとも大切なことに気づき、 そのために残りの人生を捧げようという気になってくる。 現代は先が見えない時代になった。司馬遼太郎は20年も前に、こういう 時代について持つべき見方考え方を述べている。 「世界は不確定な時代に入っています。拠るべき基準がないという時代で す。といって、私は厭世的にこんなことを申し上げているのではなく、じ つに愉快な−自分たち個々が裸眼で自分なりの世界を見ることができる、 あるいは見ねばならぬという−時代になっているという、心から微笑した い気分で、このことを申しあげているのです。 きっと将来、あたらしい世界把握の方法が、そういう裸眼(イデオロギ ―に覆われることのない眼)のむれのなかから生まれてくると思うのです が、そういうことへの準備のために私どもただの人間が心得るべき基本的 なことを考えておこうと思うのです」(『司馬遼太郎が考えたこと 14』、 66頁)。 いろいろな人生の指針が含まれている本である。 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ 編集後記 ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ 誰も犠牲にならずに、みんなが幸福になれる解決策があれば最高である。 ふつうはそんなものは見つからない。そこへ「ある程度犠牲を分け合おう じゃないか」という話が出てくると、総論賛成、各論反対、つまり自分が 少しでも犠牲になるのはけしからん、ということになる。それで、不満の 矛先はもっとも目立っている人のところへいく。どこまで自分が本気で事 の成り行きに責任を持って発言するかが「市民社会」の成熟度なのだと思 う。司馬遼太郎は再び警察国家になりたくなかったら、日本人は必死に本 当の市民社会になるように努力をしなければならないと言っている。それ はわかるのだが、あまりにも道は遠く、苦しい毎日である。皆さん、絶望 しないようしましょう。(かみのやま) ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ◆◆◆◆◆◆◆インターネットもの書き塾 受講生募集中◆◆◆◆◆◆◆ ◆ 小説・童話・エッセイの入門からプロの手法まで習得できます ◆ ◆ 作品を書いたことがなくても3ヶ月間で完成 ◆ ◆ 実践的な教材とていねいな指導で確実に実力アップ ◆ ◆◆◆◆◆詳細はホームページで http://www.shuppanjin.com/ ◆◆◆◆ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ ●メールマガジンを解除したい場合は、ご自分で登録サイトにいき手続 きをしてください。 メルマ![ID:m00026992] http://www.melma.com/ めろんぱん[ID:006130]http://www.melonpan.net/mag.php?006130 Mailux[MM408ADB0E0E3A7]http://www.mailux.com/ まぐまぐ[0000283181]http://www.mag2.com/ ●バックナンバーはホームページにあります。 http://www.shuppanjin.com/ ●i モード専用のHPは下記URLからどうぞ。 http://www.shuppanjin.com/i/ ☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━☆ このメールマガジンを転送するのは自由ですが、記事の無断引用?転載 はお断りします。転載を希望される場合は発行者の承諾を得てください。 |