2010年4月30日特別増刊(第36号)
フレームの解放
物語からの離脱
動画を静止する
映像は環境になる
あなたは、その中に生きる

人は毎日似たもの探しをしている
世界は昨日も今日も大体同じ
自分の顔は昨日も今日も大体同じ
でもそれでは今日ではなく昨日に
生きているのと同じだ

時間は何のためにある
あなたを拘束するために あなたを
管理するために
そんな時間はもういらない
自分で時を刻めばいい

人は言葉で無限を手に入れたと
思ったが
いつのまにか言葉の檻に
閉じこめられた
その檻から抜け出そう
抜け出せば そこにはあなたと自然と今しかない

あなたが見なければ 花は咲かず
あなたが聞かなければ 鳥は鳴かず
あなたが感じなければ何も起こらない

認識 世界を切り取ること
世界を切り刻み 多くのの断片を
手にしても
そこに世界はない
断片を捨てた時 世界がそこにある

今持っているものを手放さなければ
次のものをつかめない

今日の最速は 明日の最遅
速さに速さで対抗しても 何もならない
相手が速ければ 止まって待つ

何かのためでなく 誰かのためでなく
生きることを楽しむ

言葉、物語、概念の檻
その全てを消し去ること 静かに 
沈黙すること
あなたは空間そのものとなる

過去も未来もあなたが作りだしたもの
しがみつくのはやめ 今を見つめること
そうでなければ あなたは
生きてさえいない

モノとモノとの間 空間
それが感覚、それが人間

世界をよく見、よく聞き、よく感じること

沈みゆく夕焼け ざわめく木々 
流れる水
その美しさを 言葉にせず 
概念にせず ありのままに 感じること
その時あなたは 夕焼けになる 
森になる 水になる

世界を言葉で捉えれば
それは編集され 物語になる
そのような世界は とても貧しい

赤ん坊のように生きる
赤ん坊に 世界と自分と母親の
区別などない


アテネの神殿、古代ローマの野外音楽堂の遺跡、フランスの古城アヌシー城、大阪の万博公園の太陽の塔・・・。のべ30カ国以上の国で、歴史的あるいは文化的意義のある130の建築物の上に、巨大な光による不思議な絵筆が振るわれた。異なる言語を操る、様々な人種の人々が、偶然の連続から生み出される映像の前で、一生に一度しか出会えないであろう芸術に対し、それぞれの感慨を湧き上がらせた。

この感慨の渦の中心に、不思議な「光の芸術」を描く投影機の傍らで静かに佇む男性がいる。両腕を胸の前に組み、右手を軽くあごに添えている。よく動く鋭敏な瞳で、彼は息を凝らし周囲のすべてを見つめていた。我を忘れて彼が凝視する中で、会場は次第に自然の息づかいに満ちた桃源郷と化していくようだった。この泰然とした表情の、すでに還暦を越えた年齢の男性が、世界に名を馳せたビジュアルアートの巨匠、「D−Kデジタル掛け軸」の創始者の長谷川章氏なのだ。(取材協力:西田みゆき・姚遠、劉詩音執筆)

長谷川氏は1947年、風光明媚な石川県小松市に誕生。1980年代からビジュアルアートの世界で活躍を始め、広告デザイナーとして、テレビドラマ、ニュース、スポーツ、ドキュメンタリーなど多くのオープニングや広告作品を製作した。NHKの大河ドラマ、アトランタオリンピックのPR、サタデースポーツ、木曜洋画劇場など、4000以上の傑作を生み出し、日本民間放送連盟TVCM最優秀賞やACC賞など数々の賞を受賞した。

1995年に「D−Kデジタル掛け軸」を創始。日本の美的感覚を伝承すると同時に、デジタルメディアアートに技術的革新をもたらした。建築物の上に画像を掛け軸のように展開すると、その瞬間、魔法のような美しい情景が天地の間に開花する。息をのむような美しさだけでなく、雄大さとあたりを覆う空気に人々は賛嘆した。使われているのは最新技術だが、デジタル掛け軸が描く、この儚くも美しい芸術は、建築、文化、流行、医療効果、情操教育などすべてに影響を与える「量子芸術」なのである。

「D−K」を鑑賞した人々の中には、「オーロラのようだ」、「液体映像のようだ」といったような感想を持つ人、感動のあまり熱い涙を流す人などもいる。色彩鮮やかな光は、朝日や夕日、雨の後の虹や富士山の雄姿などを思わせ、鑑賞者の様々な思いに深く入り込み、言葉では言い表せない感情を生み出す。「D−K」から受ける感動は大自然が与えてくれる感動と同様のものであるが、ただ、異なるのは「時間の流れ」である。投影や映写という映像芸術の本質が初めて明確に表現され、他のビジュアルアートを超越してしまったのである。

「D−K」とは「Digital Kakejiku」の略称であり、スクリーン、投影機、画像の三点で構成される。スクリーンは普通の白い幕ではなく、投影によって画像が建築物の上に映し出され、常に画像が変化していく。映像効果は、精緻な画面を素早く切り換えることによって生まれ、1000年もの間に重複する画像はない一期一会である。鑑賞者は建築物、自然、光の作り出す神秘的な世界の中に身をおき、静と動の間で、時間が渓流のように静かに流れるのを感じながら、その一方で駿馬が駆け抜けるような気持ちよさを味わうのである。

長谷川氏は自身の開発したプログラムを用い、色彩や銀河系のイメージなどを要素として100万枚の画像を製作。投影する時は、プログラムにより、これらをランダムに組み合わせる。一つの画像が映し出される時間は約60秒。これは、地球が自転する速度に相当する。通常、映画フィルムの切換頻度が約1/24秒であることを考えると、デジタル掛け軸はほとんど一枚一枚が静止している動画なのだ。画面切換の空白を1800の仮想フレームの細かい変化で補間することにより、ほとんど静止していながら、ゆっくりと画面が動いていく効果が生み出され、不思議なビジュアル体験を与えてくれるのである。

実はこの特殊なビジュアル効果は、鑑賞者が頭の中で生み出す幻想である。映画のモンタージュと同じように、操作の効果は投影速度によって決まる。これらの幻想は脳内の視覚と潜在意識とが生み出す共鳴から自然に喚起される。長谷川氏は、その作品原理と意義を次のように解釈する。「人類が最も適応するのは、地球が自転する速度です。この個人的な体験は、時間と想像が我々の世界を、大きなところでは同じだが細部が異なるものにし、鑑賞者を忘我と無意識の境地に昇華するのだという哲学的道理を体現しているのです。」

【脳科学者 茂木健一郎】今の世の中は、毎日たくさんのニュースが人々の視線を引きつけているが、デジタル掛け軸のビジュアルアートは、現代社会に欠けている、鑑賞者にとって非常に貴重な体験である。これを契機にして、改めて生命を見つめたい。生命はこのデジタル掛け軸のように起伏と変換を含んでおり、秒刻みで流れていくものではない。視覚によって時間の歩みを聞き取ると、もっと広い心を持って宇宙とつながるようになり、体が次第に夜の色に溶けていき、これまでなかったような平和で親密な気持ちを感じる。

【IP生命医学研究所所長 門馬登喜大、富山県国際伝統医学センター博士 上馬場和夫】「D−K」は芸術性だけでなく、教育の分野(新しい右脳、情操教育など)でも利用できる可能性がある。また、医学の分野(知的障害、認知症、免疫力増強など)でも期待できる。「D−K」を30分間鑑賞すると、実験参加者の脳と筋肉の酸素代謝は明らかに向上し、唾液IgA(ストレスと口腔内免疫の指標)濃度も明らかに変化する。「D−K」は緊張や不安な気持ちを緩和するのにも有効である。

【伊勢神宮祀官 江澤泰一】D-K精神である「無常」から生まれる時空を超えた見えざる力は神道の「想念」世界と連動した神神の力 -Something great- そのものです。先生の世界は人類に普遍の魂なのです。もはや先生の世界でありながらそれは心を持つ全ての人の世界なのです。それゆえに無なのでしょう。不安からの解放、身を捧げることのできる平安、愛に満ちた世界、闇それは希望です!

長谷川氏の名前を知っている中国人はほとんどいないかもしれない。しかし、多くの人が彼の作品を目にしているはずである。視聴率9億人の中央電視台CCTVのステーションロゴは、長谷川氏によるデザインなのである。1999年に多くの候補作品の中から、評議委員を務める中央電視台の9名の指導者たちが、彼の作品を全員一致で選出した。また2005年11月には、第七回上海国際芸術祭の招聘を受け、中国を訪問し、「D−K」を行う場所として、上海を象徴する伝統文化建築である豫園を選んだ。

豫園の「華宝楼」で行われた二回のパフォーマンスは、十数台の投影機で現代の抽象的な意味を持つ画面を展開し、古色漂う豫園の廟をデジタルという現代的手段で一変させ、魔法のような神秘的な姿を観衆の前に出現させた。光溢れる豫園は、鑑賞者に新鮮なビジュアル体験をもたらし、伝統のイメージを覆したのである。

今年、「日中健康文化交流センター」の熱心な招聘に応じ、長谷川氏は上海万博会場で、「D−K」絵巻を繰り広げることになった。北京オリンピックをも超え、万国博覧会史上最大規模になると思われる上海万博で、世界各地からやって来る、のべ7000万人の入場者が、長谷川氏の世界に浸ることになる。一方、長谷川氏自身は、すでに次の目標に向けて始動している。それは、「不到長城、非好漢」(長城に至らざれば、好漢にあらず)という言葉に従い、「D−K」を人類史上の奇跡とも言える万里の長城に溶け込ませることである。

石川県小松市。どこまでも続く北陸の守護神、白山の近くに、珍しい造型の白い建築物が建っている。門前には緩やかに水が流れ、底が見えるほど透明な木場潟がある。遠方には海抜2700メートルの白山五峰が眺望でき、神秘と威厳の中に、静けさと落ち着きが漂っている。陽光が巨大なガラス窓から室内に射し込み、数台の液晶ディスプレイとコンピューターを照らしている。長谷川氏は自身のアトリエに座り、遥かかなたを静かに眺めている。視線は遠く深く、まるで時空を見通しているかのようである。

二千年前、中国の思想家であり教育者であった孔子は、とうとうと流れる大河の岸辺に立って、天を仰ぎ「逝者如斯夫(逝く者は斯くの如きか)」と嘆息した。「この感慨は、二千年後の日本の「D−K」アートの中でも、絶妙に表現されている。小松の豊饒な土地から、自然の中に凝縮された魂を取り入れた長谷川氏が発信するエネルギーは、受け取る者の心にさざなみを起こす。長谷川氏の独特の経歴から生まれた独特な「D−K」は、さらに時空を超え、デジタルアートの未来を暗示していると言えるだろう。

1947年日本生まれ。

日本民間放送連盟TVCM部門最優秀賞をはじめ、ACC賞など数々の賞を受賞。NHK大河ドラマ「琉球の風」はじめNHKニュース、スポーツタイトル、中国中央電視台(CCTV)のステーションロゴやTVCMなど数千本を制作。1995年には日本人の持つ無常の精神からD-K(デジタル掛け軸)を発明。

DKはアメリカパブリックアート2007のベストアーティストに選ばれ、日本の高校の教科書「情報C」にも紹介された。魂の普遍的な形式「DK=デジタル掛け軸」を世界中で投影し、精力的に活躍。魂の死滅しかけた世の中にスピリットの在処を問う。産業革命からデジタル革命へ、そして大阪、熊本、名古屋城はじめ伊勢神宮、ギリシア・アクロポリス、上海国際芸術祭2005豫園、サンノゼZERO ONE2006アートフェスティバル、国連大学、EXPOOSAKA太陽の塔ほか、世界130個所でDKデジタル掛け軸を投影してきた。そしてD-Kを芸術の枠を超えてメデイア、建築、ファッション、医療や癒し、情操教育、などを統合したサイエンスアート「量子芸術」を確立している。

片柳学園(東京工科大学、日本工学院)顧問
JCP日本中国計画顧問 DAC株式会社顧問
「子どもモノ作り教育支援事業団」 NPO理事
日本SOHO協会理事 日本LED協会理事
AIR&スペースハイウェイJAPAN推進協議会委員

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