世界でいちばん幸せなカップル
「11:25 ついに家族と再会の時。サポート飛行士の方が『ママが来たよ!』って教えてくれたとたん、部屋から飛び出していく娘。エレベータホールでママに飛びつく娘。」――iPhoneを手に、ほぼリアルタイムで山崎大地さんのツイッターを読んで、感動の涙がこみ上げてきた。
「ママさん宇宙飛行士」は無事に帰ってきた。大気圏に突入する時の2000℃の超高温や着陸時の天候の問題なども、すべて解決された。星空に憧れた少女は、中学三年の時に「チャレンジャーの事故」という凄惨な場面に出会い、すぐに「犠牲になった女性宇宙飛行士の遺志を継ぐ」という目標を立てた。宇宙飛行士候補に選ばれてから宇宙に行くまでは、ちょうど11年かかった。夢がかなった喜びと、理想が実現したことに対する感慨は、無重力の宇宙空間にこだまする琴の音と共に、多くの地球人の胸に響いた。
フラッシュがたかれる中、山崎直子さんにたくさんの花束が贈呈される場面で、私は山崎大地さんの方に注目していた。同じように宇宙に対して深い憧れを持っていたが、妻の訓練を支えるために仕事を辞め、「主夫」となり、環境に適応できずに心の病にかかり、家庭崩壊の危機まで体験した男性である。「成功した男性の後ろには、必ず黙って尽くす女性がいる」というしばしば引用される名言は、大地さんにも使えるだろうか?
初めてもらった給料で、アポロの月面着陸のとき宇宙飛行士が使っていたものと全く同じ「オメガ」の腕時計を買った。そして今回それをつけて宇宙飛行船に乗ってほしいと妻に託した。この話を聞いて、私はある映画の台詞を思い出した。「お父さんは凧だ。遠くへ飛んでいっても、糸はお母さんの手の中にある」――この感動的な現実の物語では、「オメガ」の時計は地球を飛び出していったが、それを支え守る力は大地さんの手の中にあったのだろう。
さらに、もう一つ感動的なエピソードがあった。宇宙飛行を優先させるために、延ばし続けてきた結婚式である。大地さんはツイッターで、こうつぶやいたことがある。「宇宙飛行が終わったら結婚式をしようと言っているので、頭の中にはいつも、宇宙船から直子がウエディングドレスを着て降りてきて滑走路で家族が集まるという映画のような場面が浮かんできますが、もちろん実現は難しいでしょうね(笑)」
夢の実現のために懸命に努力し、家族が献身的にそれを支える。その大変さは、我々の想像をはるかに超えていることだろう。だが、私は突然気がついた。大地さんは直子さんのために自分の夢を捨てたわけではないのだ(もしそうだったのなら、この世に残念なことが一つ増えたということになる)。山崎夫妻は、彼ら二人の夢を、いや、人類全体の夢を一つにし、チャレンジすることによって夢を現実のものにしたのである。このような境地に達したカップルが、世界に何組いるだろうか?――彼らこそ、今、世界中でいちばん幸せなカップルではないだろうか。(姚遠執筆)
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