メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第124号  2010/03/15


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第124号
   2010年3月15日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊)
      発行元 出版人コム http://www.shuppanjin.com/
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●巻頭言 ●   上ノ山明彦 
             子供たちの食と健康を守ろう    
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 『Fast Food Nation』(日本語訳「ファストフードが世界を食いつく
す」エリック・シュローサー著)という本がある。ご存じのように、ア
メリカでは幼児から高校生に至るまで肥満が大問題になっている。その
原因のほとんどは、ジャンクフードにある。マクドナルドに代表される
ハンバーガーやポテトチップス、シリアル、コーラその他の炭酸飲料だ。
肥満児の多くが毎日、主食のようにジャンクフードを飲食しているので
ある。
 この本はアメリカのそういった実情を取材し克明に描いた本である。
2006年に映画化されたが、興行成績はよくなかった。日本ではDVDが入手
できるが、映画は興行されなかった。
 さて、肥満がなぜ体に悪いか?いうまでもなく肥満によって引きおこ
される病気がたくさんあるからだ。糖尿病、高血圧、各種ガン、脳梗塞
等々、Webで調べたらなんと24種類もあった。
 シカゴ大学が2007年、子供対象の食品広告に対する調査結果を発表し
ている。それによると「2歳から11歳の子供たちが見る食品のCMの97.8%
が、脂肪分、糖分、塩分の高い製品だった。また12歳から17歳でも、わ
ずかに少ないものの約90%が栄養価の低い食品だった」(AFP BB News)。
 そのため、アメリカの公立学校ではジャンクフードに対して規制の動
きを強めている。校内では販売禁止にした学校もある。ニューヨーク州
政府はジャンクフード課税案を検討している。
 一方、企業側も同じ頃から自己規制を行っている。アメリカのマクド
ナルド、キャンベル、ペプシコは2007年6月、12商品について子供対象の
広告を取りやめることを発表している(日本と違ってエライ)。
 それ以降、政府、教育機関、企業が協力し合って子供たちの肥満をな
くそうと努力している(これも日本と違ってエライ)。
 ん?ちょっと待てよ。日本はどうだろうか?マクドナルドではポケモン
グッズやソフトのダウンロードサービスに子供たちが群がっている。キャ
ラクターを使った販促は、毎月行われている。他のメーカーでも人気キャ
ラクターを使った大々的なキャンペーンが頻繁に行われている。テレビの
CMも、ジャンクフード流し放題だ。
 あれ?これって、アメリカではありえませんよね。日本の子供の肥満率
がアメリカと比較すればまだマシではあるが、増加していることに変わり
はない。野放しでは困りますよね。鳩山さん、健康面からも子供たちの
ことを考えてください。
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●連載エッセイ ●   上ノ山明彦 
      江戸の恋 第4回  禁断の恋「不義密通」
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 第8代将軍徳川吉宗は享保の改革を行い、武士から庶民までぜいたくを
禁止。質素倹約を奨励した。 
 吉宗の政策に真っ向から反対した大名がいる。徳川御三家の一つ、尾張
藩主・徳川通春がその人である。彼は吉宗のやり方はかえって経済の停滞
をもたらすと反対した。名古屋では自由な商売が許されたため賑わった。
武士も庶民も潤った。遊郭も飲み屋も潤った。
 ところが、家来の生活は通春の思惑を超えて、歯止めがきかなくなって
しまった。家来たちの多くが遊びとぜいたくに明け暮れるようになった。
遊女を身請けし、妻にする者も増えた。これには当の通春も閉口したと言
われている。
 吉宗が将軍に就いたのが1716年。徳川家康が将軍になったのが1603年だ
から、江戸幕府創設から約110年経ったころの話である。
 江戸時代は封建制であり身分制が厳しい時代であった。当然、道徳的に
も厳しい規律があったように言われているが、本当にそうだったのかとい
う疑問がわく。
 大名は側室として武家の娘だけでなく、商人・職人・農民の娘からも招
き入れている。一般の武士も、いったん武家に養女に入れるという方法で
武士以外の身分の娘と結婚している。それに加えて、遊女さえも身請けし
て妻としていたのだ。婚姻に関しては、現代人が考えるよりずっと、身分
に対するこだわりはなかったのではないだろうか。
 武士でさえがそうであるから、庶民に至っては身分に対するこだわりは
あまりなかったことだろう。
 ただし、制度としての身分制は厳然としてあったわけだから、さぞかし
「なんだこんなもの。いらないやい」と思っていたに違いない。
 さて、話を今回のテーマに戻そう。
 神坂次郎の著書に『元禄御畳奉行の日記』(中公新書)という本がある。
尾張藩士・朝日文左衛門が、実際に見た話、聞いた話を詳細に記録した日
記の解説本である。時代は元禄時代(西暦1688-1703年)。徳川吉宗が活躍
するちょっと前の時代である。
 この本の中には、当時の武士と庶民の暮らしぶりが詳しく描かれている。
その中でも色事にまつわる事件や「不義密通」に関する事件が出てくる。
 江戸時代には「不義密通」という罪があった。現代でいう「不倫」であ
る。特に問題となったのは人妻が他の男と関係を持った場合だ。夫が武士
である場合、妻と相手の男を斬り殺す「女敵討」(めがたきうち)が認
められていた。参勤交代で夫が江戸に行っている間、出入りの男と関係を
持ってしまった妻がいた。夫は帰郷して事実を知り激怒。妻と相手の男を
斬り捨ててしまった。こういう事件もけっこうあったようだ。
 しかし本当に妻を斬り殺してしまうのはかわいそうだとか、大騒ぎして
は世間に恥ずかしいという理由で、穏便に済ますことも多かったようだ。
そのときの相場は7両2分だった。といっても、現代と同じく支払い能力
も問題もあるから、もっと低い金額で解決した例もあった。
 そこで、こうした不義密通がどれくらいあったかという疑問がわく。
 江戸の「禁断の恋」を調べていくと、この時代はけっして禁欲主義的な
時代ではなかったことがわかる。こういう問題を調べた文献がいくつも出
ているが、実際かなり多かったようだ。性に関しては奔放な時代であった
と言ってもいいくらいである。氏家幹人著『不義密通−禁じられた恋の江
戸』(講談社選書)もその一つで、非常に詳しい。出典の原文も引用され
ており、非常におもしろい。
 この本を読むと、昔の日本人は貞淑だったとは言えないことがよくわか
る。今も昔も人間の本質は変わらないということができる。それが良いと
か悪いとか批評するのは教育者に任せるとして、もの書きの立場から見る
と、禁断の恋の末、悲劇的な人生を送った男と女の物語は無限にあるとい
うことだ。身分の上下を問わず、どういう組み合わせもありえたのである。
男と女の愛とは何か?それを追究するのに格好の題材である。
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●この名著を読め! 
             鎌田 實 著  『がんばらない』
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 著者は現在、長野県茅野市にある諏訪中央病院名誉院長である。地域医
療の理想を実現するために活動してきた人である。1990年以降は国際医療
支援活動で活躍中である。経歴は次のサイトにあるので参照していただき
たい。本人のブログもあるので、これも紹介しておく。
http://www.sbrain.co.jp/keyperson/K-5765.htm
http://kamata-minoru.cocolog-nifty.com/blog/
 著者の経歴を押さえておかないと、本書の解説は進まないと思われるの
で冒頭で紹介した。本書は2001年に西田敏行主演でテレビドラマ化され
ているのでご存じの方も多いだろう。有名な本である。
 この本を読んで実感したことは、これは人の生き方の本だということ。
 次の引用にそれが端的に著されている。
「病気と闘い、勝ちにいう医療のときは、二十世紀の進歩した医療はとて
も心強い。しかし医学がどんなに進歩しても、死は永遠には回避できない。
必ず訪れる死。病気と闘うときも、死を受け入れるときも、魂に寄りそっ
てくれるような医療があったらいいなあと思う」(『がんばらない』、19頁、
集英社文庫)。)
 この「魂に寄りそった医療」の実現のために諏訪中央病院の医師、看護
士、保健婦、介護士、ボランティア、市民が一体となって奔走してきた。
その歴史の中では嬉しかったことも悲しかったこともたくさんある。そう
いう出来事も本書に綴られている。
 鎌田實は1990年代から海外の医療支援活動にも着手して成果を上げてい
る。ベラルーシの住民はチェルノブイリ原発事故による深刻な放射線障害
を発症した。特に子供たちの被害は深刻だった。白血病、甲状腺障害その
他もろもろの病気に苦しんでいる。現地に医師を派遣したり、医療機器、
医療品を送ったりする活動を展開している。その費用は音楽CDを作って
販売したりバレンタインチョコを販売したりと、ほとんど自前で調達して
いるところがすごい。
 本書のタイトル「がんばらない」は「あなたは、あなたのままでいい」
「ありのままに生きよう」というメッセージでもある。何かと比べて、
自分は不幸だ、幸福だというのが現代社会である。知らず知らずのうちに
競争に巻き込まれている。本書は忘れていた大切なものを思い出させてく
れる本である。
 参考文献:鎌田實著 『がんばらない』、集英社文庫
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 第1弾「その、向こうがわ」(永部めいみ著)、
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 編集後記
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 鎌田實氏に関して調べていたら、キャスターの安藤優子さんのインタ
ビュー記事を見つけた。安藤さんは鎌田さんの信奉者だという。その記事
の中で安藤さんが悩みを語っていた。悲しいニュースを読むとき、涙をこ
らえて読むと「冷たい女」と非難された。こらえきれずに涙を流しながら
読むと「偽善の涙」と非難された。いったいどうしたらいいの?と。安藤
さんはプロとして、感情をコントロールして読むべきだと私は思う。舞台
女優の幸田弘子さんの朗読を聴く機会があった。その時、幸田さんが悲し
い話を淡々と読み上げているように見えて、実は深い悲しみを聴衆に伝え
る姿を見た。私は「これがプロの姿だ」と痺れた。安藤さんにもぜひそう
なっていただきたいなと思う。淡々とニュースを読み上げながら、そこに
直面した人々の喜びや悲しみを伝えていただきたいと思う。私なんぞは感
情に流されてしまって、とても朗読なんかできない。人前でニュースを読
むなんてすごいと思う。ところで、私も実は安藤さんて無感情なのかなと
思っていた。ゴメンナサイ。でもあのインタビュー記事を読んで、いっぺ
んに安藤さんが好きになりましたよ。(かみのやま)
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 編集発行人:上ノ山明彦
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