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今日はまた天気が悪いですね。寒いです。ここのところ雨ですね。 昨日からシューベルトのグレートの与えた影響についての話題です。 シューマンがシューベルトの仕事机の上でこの自筆譜を発見しなかったら? いや、もし、シューマンがこの自筆譜を見て、長くてだらだらして価値の無い作品だと思ったら。 実は、シューマンもメンデルスゾーンもそれだけの価値の人になってしまったかもしれません。 シューマンは、この自筆譜を見て、それまでシューベルトに対して抱いていた歌曲においてちょっと優れた作曲家というイメージを根底から覆したようです。 ものすごい交響曲!シューマンの体中に強力な電流が走ったに違いないでしょう。本当の天才は一目見てそのすごさがわかるもの。 この交響曲の初演をメンデルスゾーンが行ったのが1839年。 その1年後にメンデルスゾーンが第2交響曲(讃歌)、さらにその1年後にシューマンが第1交響曲を完成。 これらの交響曲の出だしはグレートの出だしにちなんだ、その交響曲の性格を決定付ける重要な序奏が書かれています。 メンデルスゾーンの第3交響曲(完成は一番最後、もちろんグレート初演のずっと後)には、この序奏部分が非常に重要となり、曲を支配します。 シューマンの第1交響曲の最初の金管のファンファーレとそれに続く弦の応答。これはその後出てくる第1主題の拡大形です。 そして、この序奏部分が曲の途中でクライマックスとして出てきます。つまり、この序奏は第1楽章の重要な導入部となっているのです。 それまで単なるお飾り程度であった序奏部を、第1楽章と有機的に一体化したのです。 シューマンの第2交響曲の序奏も同じです。序奏部の弦の静かな響きはそのまま速くして第2主題に用いられます。 第4交響曲はもっと執拗。この序奏の部分のテーマですべて各楽章の構想が作られているといっても過言ではないでしょう。 今第4番をやってますが、これほど充実してかっこいい交響曲の序奏は他にないでしょう。 シューマンがシューベルトの呪縛から離れて独自性を出すのが第3番ライン。ここでは序奏がありません。それだけ強い影響を受けたんですね。 シューマンがグレートに注目したのは序奏だけではありません。様々な部分について驚嘆したのでしょう。 面白いのはグレートの第2楽章の途中に出てくる12小節にわたるホルンと弦楽器との静かな部分の対話。これを絶賛したとか。 この部分(160小節付近)、だんだんと暖かく柔かな響きに雲がかかり、ちょっと薄暗く寂しくなってくるような実に微妙な色彩変化。 何気なく聞くと聞き逃してしまいますが、集中して聞くと、微妙な繊細な色の変化に感動します。 シューマンが「天国的に長い」と言った意味がわかるのではないでしょうか。 グレートが斬新なのは、ベートーベンの交響曲では無かった新しい試み。 ソナタ形式における第1主題と第2主題の関係を展開部において崩したのです。 通常、第2主題は5度転調し、第1主題とは異なる穏やかな性格の主題となります。 ですから、対位法的に第1主題と第2主題を組合せて展開を行うのは非常に難しく、多くは第1主題のみの展開となります。 ところがグレートはどうでしょう? ---続きは明日に--- お問い合わせ、ホームページは以下の通りです。お便りお待ちしています。 IFE通信No.576 10/2/16発行(平日発行) 発行者:石川 聡 石川音楽工房(PC版) http://www.ne.jp/asahi/ishikawa/music/ email:s-ishikawa@music.email.ne.jp |