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タイトル:石川ファミリーアンサンブル通信559  2010/01/21


今日はかなり暖かいですね。朝南風が心地よく、寒いという感じがしませんでした。夕べは少し雨が降ったようです。
昨日の夜、メンデルスゾーン(ニ短調の方)とシューマンのピアノトリオ(第1番、ニ短調)を見比べていました。
どちらもニ短調、傑作です。ですが、その内容、表情は全く対照的ですね。
メンデルスゾーンは短調の中にも流れるような美しさ、切なさなどの表情があります。いかにもメンデルスゾーンらしい、格調の高い優美な曲。
短調の中にも透明な美しさがあります。
一方シューマンは全く精神的にどろどろの世界。重ったるく、感情をえぐるような感じ。興奮しだすと止まらないし、鎮静するとこれまた物思いにふける。
正にシューマンの魅力たっぷりの曲です。
親友だった2人が同じ調で同じ編成で同じ時期に書いた曲ですが、これほど2人の特徴が全面に出た曲も無いでしょう。
そして、2曲とも魅力たっぷりの名曲です。面白いのは、2曲の出だしが非常に似た旋律なのです。
ですが、この部分を聞いた瞬間メンデルスゾーンかシューマンかすぐにわかってしまうほど、2人の特徴が出ているんですね。
特にピアノがそうです。メンデルスゾーンスコットランドの第1楽章、シューマンはラインの第4楽章といったところでしょうか。
ピアノトリオというのは意外と書くのは難しいですが、たくさんの作曲家が傑作を残しています。
有名なのはベートーベン。でも大公トリオって、私的にはそれほど面白い曲でもないんですが-----
最初のテーマで有名になりすぎたのでしょうか?ピアノで全部弾けるのをヴァイオリンとチェロに旋律などを振り分けるわけです。
ともすると、ピアノ対ヴァイオリン&チェロのユニゾンなんていうのが多くなってしまいます。
シューベルトのピアノトリオは交響曲の縮図ですね。すばらしいのですが、交響曲を聴くような心構えが必要です。
ブラームスも傑作を書いています。ブラームスはオーケストレーションはあまり得意でないですが、このくらいの編成はその真価を遺憾なく発揮します。
チャイコフスキーも書いていますよね。その他ドボルザーク、スメタナはもちろん、近代ではフォーレ、ラベルも傑作を残しています。
ショスタコーヴィッチにもピアノトリオがあり、第3楽章に有名なユダヤの主題が使われており、後の弦楽四重奏第8番の第2楽章の頂点で引用されています。
ピアノトリオがなぜ書くのが難しいのかは、チェロの楽器の特性にあります。
チェロは低音楽器ですが、ヴァイオリンの中音域まで出すことが出来、しかもそのチェロにとっての高音はとても魅力的です。
この高音域、倍音が基音よりもはるかに強く、ほとんど雑音に近い音ですが、これがチェロの魅力でもあります。
ところが、この音域でチェロを歌わせてしまうとヴァイオリンの立場が無い。
ヴァイオリンをオクターブで重ねるのも魅力的なのでよく使われるのですが、それだけでは芸がない、そこで様々な工夫をするんですね。
ピアノはヴァイオリンやチェロとぶつからないように音を配置しますが、これがなかなか難しい。
モーツァルトの時代ではまだトリオソナタの延長でチェロはピアノの左手をなぞるだけということのようだったようです。
ハイドンでもあまり変らず、ベートーベンでようやくちぇろも完全独立。といってもまだまだ進化の余地があり、多くの作曲家が作ったようですね。

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IFE通信No.559 10/1/21発行(平日発行)
発行者:石川 聡
石川音楽工房(PC版)
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