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☆。・゜゜・。♪゜・。。・゜☆。・゜゜.。.:* ◆∞◇ ◆∞◇ ◇∞◆ クリスタルノベル〜百合族〜 ◇∞◆ ◆∞◇ Vol. 036 2010.1.2 ◆∞◇ ♪゜・。。・゜☆。・゜゜♪・゜゜・。☆。゜・。.。.:* ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ ♪ − 星の降る夜空の向こう 「美紀さん……」 耳を疑った。 暗くなった駅前にしゃがんでいた私の頭の上で、梨香の声がした気がした。 ゆっくり顔を上げると、悲しげな表情で立つ梨香がいた。 「死んじゃいますよ」 紺のダッフルコートを着て、頭には少し白く雪が乗っていた。 「これぐらいじゃ死なないわよ。このまま明日学校に行こうと思ってたのよ」 私はゆっくり立ち上がって、梨香の頭にかかった雪を軽く払ってやった。 「傘差さないと」 梨香の髪がしっとり、雪のせいで濡れていた。 「そっちこそ、靴とかびしょびしょだよ……」 言われてみたら、雪の軽く積もった駅前をうろうろしてたせいで、靴が塗れ ていた。 寒すぎて、感覚も麻痺している。 そんな麻痺しきった私の凍った手に、梨香の温かい手が触れた。 「私はね、どんな時でもカイロを持って歩いてるんだよ? 美紀さんは、ほっ といたら凍死しちゃうタイプだね」 「そうよね。来年の冬は凍死するかもね」 梨香の温かい手を強く握り返して、私は冗談まじりにそう言った。 「行かないで……」 梨香が小さくつぶやいた言葉。 「そう言いたかったよ。ずっと、そう言いたかった。でも、私達は離れる運命 みたいだね」 梨香が悲しそうに、そう言った。 次こそ、私が言う番だ。 ほら……何を言うんだっけ? 「……」 私は、言いたかった言葉をとりあえず放っておいて梨香を抱きしめた。 梨香を腕の中に抱くっていうのは初めてで、こんな厚いコートの上からなの に……何故かそれだけで涙が出そうだった。 「ごめん、私もずっと梨香に言いたい事あったのに言えなかった。私が音大目 指す気になったのは梨香のおかげ。夢を見つけさせてくれてありがとう……っ て……ずっと言いたかった。私、梨香のこと、ずっと好きだった。今頃になっ て言うなんて最悪だけど、関係が壊れそうで言えなかった」 こんなにスラスラと口に出るとは思ってなかった。 もっと、もっと早くこの言葉を口にしていれば……このまま梨香を腕に抱いた ままずっとこの先も生きていけたかもしれないのに。 「私も……ずっと美紀さんが好きだったよ。理由を言えって言われても言葉に できないけど、美紀さんと一緒だと安心して、いつでも嬉しくて……温かかっ たよ」 その言葉を聞いて、梨香をちょっと体から離して彼女の目を見つめた。 薄い茶色の透き通るような瞳……。 暗い中でも、微かな雪明りで、キラキラと輝いていた。 「……」 二人とも、しばらく無言になった。 雪が降る音が聞こえそうなぐらい静かな夜。 私達は、どちらからともなく顔を近づけて……その冷たい唇を重ねた。 一生に一度、永遠に時間を切り取って閉じ込められるなら、私はこの瞬間を 閉じ込めたいと思った。 時間は遠慮なく流れていくから、このキスの感覚もどんどん時間の波で押し 流されてしまうだろう。 それでも、このキスは、私の中で誰にも汚されない、純粋で、綺麗な存在と して、一生残したいと思った。 大人になったら、どうしたって汚れていってしまう。 知りたくもない現実を知って、逃げる手段を覚えて、うまく生きるこつを探 す。 純粋な気持ちで、今みたいに人を好きになれるか自信がない。 そんな事を思って、私はほんの数分抱き締めてキスをした梨香を、永遠の大 事な人として記憶に閉じ込めた。 ≪無料メールマガジン:アーケロン通信≫ オリジナル官能小説メールマガジンです。 濃い口の官能小説Tiny paradiseを連載中です。 登録は無料です。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ http://www.alphapolis.co.jp/maga.php?maga_id=1000563 オトメ文庫 ガールズラブ 電子書籍 http://www.dmm.com/digital/book/-/list/=/article=keyword/id=90029/media=novel/lovelymei-001 レズビアンコミック http://www.dmm.co.jp/digital/book/-/list/=/article=keyword/id=4013/media=comic/lovelymei-001 ♪======================================================= ご意見ご感想ご質問等々お待ちしております。 発行者 : 春野 水晶 * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』 * 発行周期:不定期(週2回発行予定) ========================================================♪ |