花びらのゆりかごで見る夢
真っ白な雪に包まれた札幌のグランドホテルで、鮮やかな赤いバラが静かにお客様の到来を待っている。淡路島のウェスティンホテルでも、濃紺の海に向かう大きな窓の前にゆったりとした巨大なユリの花が咲いている。――ところが近づいてみると、なんとこれらは花をモチーフにしてデザインされたソファなのである。これらのソファによって、非日常的な休息のための空間が作り出されているのだ。この遊び心いっぱいのデザインは、27歳で国際的に影響力の高いブラウン賞を受賞した工業デザイナー、梅田正徳さんの手によるものである。
梅田さんは故郷でデザインを学んだ後、二十歳で「デザインの都」ミラノに渡ってデザインの仕事に従事した。そのため彼は西欧の先進的な工芸技術を用いて、日本文化の中にある自然を尊ぶ精神を表現することに長けている。有名な花のシリーズのソファは、「LOTUS(ハス)」「GETSUEN(ユリ)」「ROSE(バラ)」「ORCHID(ラン)」の4種類あり、どれも高い評価を受けている。現代都市の人工的な製品と美しい花が渾然一体となって、都市の単調な日常生活に野趣を与えてくれる。
「ORCHID(ラン)」は三枚の黄色い揺れる花びらが厚みのある座部を巧みに挟み込んでいる。しっかりした金属製の顎と左右両側の花びらが三つの支えとなっているのが面白い。「ROSE(バラ)」の丸椅子は花びらが重層的に重なり、中国の昔の絵にあるような筆を重ねる技巧を思わせる。アルミニウム製の脚は、バラの棘を表現している。「GETSUEN(ユリ)」はハイテクと職人技が完全に結合したもので、ステンレスのフレームの外をビロードで包み、中にはポリウレタンを詰めて、美しさと快適さを与えている。「LOTUS(ハス)」は落ち着きの黒い本皮の生地と、まるで両掌は蓮を託する構成、仏教の崇高な境界を心に浮かべさせて、全体のデザインがロマンチックでありながら優雅な気品に溢れている。
1980〜90年代に梅田さんは、ディスプレイデザイン最優秀賞、日本インテリアデザイナー協会賞、商環境デザイン賞、ドイツIF賞、通産省Gマーク公共空間部門大賞、商環境デザイン賞など、数々の賞を受賞している。現在では、京都、フィラデルフィア、モントリオール、デンバー、リスボンなど、世界各地の博物館に作品が所蔵されている。梅田さんは控えめで寡黙なため、そのデザイン哲学については多くを語ることがないが、一つはっきりわかることは、梅田さんがデザインしたこれらの椅子を持っていれば、永遠の春を手に入れられるということである。(姚遠執筆)
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