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[希望のトポス]資本主義(市場経済)を放棄できぬ以上、いま民主党政権は 何に最も傾注すべきか? <注記0>これは下記◆で既出の内容だが、その“趣旨をより明確化する” ため改題のうえ再UPするもので、若干の加除修正と追加情報がある。 <注記>お手数ですが、当記事の画像は下記URLでご覧ください。 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20091114 ◆2009-11-12 toxandoriaの日記/いま民主党が最優先すべきは雇用&中小 企業に係るコペルニクス的革命の実行、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20091112 【画像】スーベニール2007/京都、晩秋の常寂光寺 [f:id:toxandoria:20091114220835j:image] [f:id:toxandoria:20091114220836j:image:right] [f:id:toxandoria:20091114220837j:image] [f:id:toxandoria:20091114220838j:image:right] [f:id:toxandoria:20091114220839j:image] (プロローグ) ●かつて、ブッシュ=小泉時代の日米同盟の本音は、新自由主義思想(市 場原理主義)とグローバリズムの普及による「世界総市場化」で千載一遇 のビッグビジネス・チャンスが到来したという認識であった。 ● そのため必要なのが“(1)市場原理主義型への構造改革、(2)民 営化(市場的社会化)、(3)軍事ビジネス強化”の三方向であった。特 に、(3)は「総 市場化する世界」のリスク管理(米国軍事力による世界 市場の管理)の役割を担うとともに、必要に応じマッチ・ポンプでビジネ ス・チャンスを創出することも できるはずであった。 ●従って、その日米同盟の目標は、日本をアメリカの軍事活動の補完が可 能で本物の戦争ができる“普通の国”にすることであり、そのための「日 本国憲法・九条」の改変であった。 ●しかも、その奥には更なる“日米同盟”(ブッシュ&小泉同盟)のフ ァイナル・ターゲットが存在した。それは、日本国民にとって最も重要 な「生存権」の制限(または廃止/憲法第25条の『国民の生存権、国の 社会保障的義務』の制限(または廃止)ということであった。 ●別に言えば、格差拡大(ランディアン・カルト、マネタリズム&新自由 主義)を梃子としつつWaspの利益を最大化するため米国内および世界中の 人々の“人権・生存権までをも無機質な商品扱い”する方向へ資本主義 を傾斜させようとする、トリクルダウン(誤ったビジネスモデル)への狂 信であった。 ●つまり、ブッシュのアメリカと小泉の日本では、冷戦終結で「世界の 総市場化」というビッグチャンスが生まれたが、その巨大利益の先行的 獲得を目指すグローバル企業にとって最も障害となるのが「生存権」だ という認識が共有されていたのだ。 ●渡辺 治教授(一橋大学社会学部)によれば、かつて日本経済新聞な どのマスコミがハッキリとこのことを論説記事等で主張しており、自民 党と日本経団連も同様の主旨を論じていたとされる(雑誌・法学セミナ ー、2005年4月号)。 ● しかし、明らかに世界の環境は変化した。オバマの支持率と鳩山民主 党政権の支持率の漸減傾向がメディアで報じられ始め、今の“日米同盟 関係”は普天間基地 問題などのアポリアを抱えてはいるものの、来日し たオバマ大統領の14日の「日米新時代」を意識させる演説は、軍事面の 関係だけでなく、核廃絶と人権・生 存権重視の理念を明言していた。 (関連参考情報) オバマ東京演説 「重い注文と見るべきだ」(ブログ、恒久平和のため に)、 http://blog.goo.ne.jp/05a21/e/72a66818e0c4dd21eb345433ba9853a4 オバマ米大統領、就任演説全文(和文)、 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090121-OYT1T00132.htm オバマ米大統領、就任演説全文(英文)、 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090121-OYT1T00080.htm ・・・以下は、[2009-11-12 toxandoriaの日記/いま民主党が最優先す べきは雇用&中小企業に係るコペルニクス的革命の実行、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20091112]へのコメント&レスの転 載・・・ もえおじ 2009/11/13 00:53 オバマの国民皆保険制導入プランに対する反対の大きな理由として、 「弱者救済のために膨大な財政負担が発生する」とする批判があります。 これは明らかに勝ち組の論理なのですが、必ずしも勝ち組といえない下 流中間層の多くが批判に加わっている点に注目べきです。 そ の意味で、彼らの多くが(強者である富裕 層、医薬会社の)詐欺的 な詭弁の論理に騙されているとは必ずしも言い切れないと考えます。実 際には、曲りなりにも自立している下流中間層が、さらに自分 達よりも 貧しい下流層に対して、「健康保険に入れないのは本人の責任である」 とする視点を持っているのは明らかであり、その理由は、あくまで自己 責任を重 視する国民性の反映であると捕らえるべきです。 米国の特徴は、一度も、国民が圧制で苦しんだり戦争で本国を蹂躙され た歴史がなく、 真の意 味で敗者になった経験を持たないことです。米 国に敗者の論理を教えることは不可能であり、数百年間にわたって、国 民が圧制で苦しみ、戦争でほぼ国土の全 域を蹂躙されてきた欧州とは比 べようがありません。今回、もし国民皆保険制が導入されるのであれば、 それは、米国において格差が受け入れがたい段階に達 しており、社会全 体に与える悪影響が無視できない状態であると理解すべきです。 ひるがえって、日本においては、子育て支援などによ る財政 負担の増 大から、国債発行高が年間50兆円に達する状況にあります。(米国と 比べて)これを批判する勢力が余りにも乏しいのは、逆に不健全である と考える のは私だけでしょうか。民主党の福祉政策は「ばら撒き」であ るとの批判があり、むしろ本当に困窮している社会保障・教育弱者、不 況に苦しんでいる中小企業 や失業者に焦点を絞った政策を行うべきです。 また、国民が本当に望んでいるのは景気対策であることが、理解されて いない印象があります。 toxandoria 2009/11/13 17:11 “もえおじ”さま、ありがとうございます。 支持率の逓減傾向が現れるとともに、“友愛”民主党の軸足が表層的なポ ピュリズムへ傾斜し始めたことが気になります。例えば、「事業仕分け」 の手法にしても些かメディアと大衆の視覚を意識し過ぎではないかと思わ れます。 「事業仕分け」の視点は意義あるとしても、何やら、フランス革命のプロ セスで起こった、あの余りにもおぞましい「ロベスピエールによる最高存 在の祭典」のような空気が漂い始めています。⇒ 参照、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20091015 このように些かアノ“小泉型ポピュリズム”を意識しすぎる傾向こそが、 その狙いとは裏腹に、結局は焦点が定まらぬバラマキ感覚の批判を呼ぶこ とに繋がっているようです。 つまり、ネオリベ型とは異なる「高品質の政府」を目指しつつ中小企業や 失業者に思い切って傾注すべきところを、いまや“友愛”民主党が浮足立 ったように見えることは、ご指摘のとおりです。 アメリカの“普通の人々”(=上・中間層)が、いわゆる“敗者経験を知ら ぬ大国意識に染まっていること”は理解できます。 が、それが“人権にかかわるダブルスタンダード&一国主義という教条感 覚”まで舞い上がったことが問題だと思います。他国の人々の立場からす れば、それを米国が押しつけるのは“余計な御世話だ”という訳です。 そして、遂には、そのような意味での「米国のローカルな大国意識」を世 界へ押しつけたことが、イスラム原理主義のテロ化への一つの条件を提供 したことにも思いを馳せるべきと思っています。』(2009/11/13 07:07) ・・・・・以下、本論・・・・・ (自由についての誤解を操作する米国型民主主義への警戒の勧め) い ま<政権交代後>の鳩山民主党政権へ多くの国民が求めているのは、 かつての「小泉=竹中詐欺劇場」のごとくに米国型の買弁資本主義 (“WASP=勝者”型 の歪んだ資本・市場支配体制)に媚びへつらい、その “米国流・弱者支配型の社会構造”をソックリ真似ることではなく、古 びた“自民党・高級官僚・利権屋の 癒着・談合による対米追従&隷属政 治からの決別”ということである。 この原点を見失うならば、やがて鳩山総理が掲げる“友愛”なる コトバ の“軽さと脇の甘さ”故の不整合・齟齬・不一致の部分だけがクローズ アップされて異様に目立ち始め、国民期待の「民主党“友愛”政権」も 自己矛盾の 氷山に激しく突き当たり、遂には座礁・沈没する運命を歩む ことになるであろう。 <注記>WASP(White Anglo‐Saxon Protestant) ・・・白人・アングロサクソン・プロテスタントの省略形。“草の根” の動きが加速して黒人のオバマを民主党系大統領に選んだ陰では、共和 党と民主党右派に繋がるWASPが、相変わらず米国の政治・経済・金融を 牛耳っている実態が指摘されている。 以 前の記事で書いたことだが、ネオコン派の影響と強欲金融市場主義の 一掃(チェンジ)を掲げ、それが国民から篤く支持され華々しいデビュ ーを飾ったオバマ大 統領であったが、残念ながらその政権中枢には国際 金融マフィアとネオコン派の人物らがシッカリ食い込んでいることは周 知のとおりだ。例えば、大統領首席補 佐官はネオコン派のシオニストで あるラーム・エマニュエルが、財務長官は国際金融マフィアの一人であ るティモシー・ガードナー(鳩山政権による郵政改革見 直しを厳しく批 判している!)が、経済顧問は同じく金融マフィアのボス格のローレン ス・ヘンリー・サマーズが就くという具合で、オバマ政権の中枢は殆ど が ネオコン派と国際金融マフィアが占めている。 また、ハワード・ジン著『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』 (あすなろ書 房)は、アメリカ建国史の恐るべき事実を教えてくれる。例 えば、この本によると、人間の平等と自由を謳いフランス革命へも多大な 影響を与えたとされる「ア メリカ独立宣言(1776)」が、実はごく少数の WASPを中心とする富裕層の既得権を守るための宣言で、先住民のインディ アンあるいは黒人・女性らはそ れによって守られるべき対象とはされて いなかったのだ。そして、更に驚くべきことは、この類の人種差別を当然 視する風潮が現代アメリカのポピュリズムにも 深く根づいているという現 実があることだ。 <注記>ハワード・ジンの“支配された者の視点”で書かれたアメリカの 歴史について ・・・ Howard Zinn( 1922 - )は、“支配された者の視点”で書かれた アメリカの歴史である『民衆のアメリカ史』(A People's History of the United States: 1492 )の著者として知られる著名な歴史家・政治学者・ 社会評論家で、ボストン大学政治学科の名誉教授である。『学校では教え てくれない本当のアメリカの歴史』 は、この『民衆のアメリカ史』を若者 向けにコンパクトに書き直したもの。 ・・・ ジンの著書は、例えば、ごく普通の日本人の目から見ると“なぜ国 民皆保険制度のように一般国民の権利を十分に見据えたオバマの福祉・医 療制度プランが過半 以上のアメリカ人から激しい攻撃を受けることになる のか?”というような疑問へ大きなヒントを与えてくれる。つまり、“今 のアメリカはなんだかヘン だ!?”という感じる我われへ一つの答えを与 えてくれる。 このようなWASPの既得権を保守する立場 からオバマのチェンジに対抗する ため米国の超保守派の人々は、サラ・ペイリン(アメリカン・ポピュリズム の象徴たる余りにも軽薄な人物で共和党の次期大統 領候補)らの広告塔を 動員しつつ“民主党とその仲間たち(彼らによればオバマ一派は環境保護 にうるさい共産主義者or社会主義者たちということにな る・・・)がアメ リカ人から自己防衛の銃を取り上げ私有財産を没収し『自由』思想を抑圧 してアメリカを破壊しようとしている!”と激しい批判キャンペーン を繰 り広げた。 このため、「オバマの“国民皆保険制”導入プランは共産主義者ないしは 社会主義者の発想だ」と共和党や民間保険業界 などから猛烈な批判攻勢を 受ける始末となり、それにイラク戦争からアフガニスタンでの兵力増派へ と軍事戦略をシフトする政策が身内である民主党支持者の中 でも不評であ ることが追い打ちをかけて、米国内では急速にオバマ大統領からの支持離 れが起こりつつある(関連参照、下記◆)。しかし、これは謂わば WASPが 「差別と格差主義を潜ませた衆愚政治戦略」でアメリカン・ポピュリズム を扇動する悪しき伝統の現れである。 ◆NHKクローズアップ現代(11/11)『オバマの試練〜“変革”の苦悩〜』、 http://www.nhk.or.jp/gendai/ こ のような視点でアメリカ社会(WASPへ靡きやすいアメリカン・ポピュリ ズムが支配する社会)を概観すると、ハワード・ジンが示唆するとおり、 ある“恐る べき事実”が見えてくる。それは、“自由原理主義的に自己 決定することがアメリカ国民の主権”だという表面的に“麗しい民主的な コトバ”の陰に恐ろしい WASP(あるいは勝ち組)の牙が、恰もヤヌス神 のもう一つの顔の如く隠れているということだ。 言い換えれば、アメリカ植民地が 18世紀の“暴政国家”であった時代の 英国から独立するときWASPが“自らの権利だけを独占的に守るため”に 掲げた大義名分が現代アメリカではご都合主 義的に対連邦政府へ向けら れることに、過半の“善良で、余り十分に物事の根本について考えるこ とが得意でない多くの一般大衆”がコロリと騙され続けている というこ とだ。そして、これこそがアメリカン・ポピュリズムの大きな特徴である ことを我われは理解すべきなのだ。 特に、1990年 代以降のアメリカではレーガン政権で本格化した新自由主 義政策の結果として「勝ち組」と「負け組」の格差が拡大するばかりとな っており、いささか古いデー タであるが、2007年8月18日付・日本経済 新は、記事「揺らぐ米国経済(下)」で“この10年間でアメリカの経済 規模は7割近く拡大したが、多くの家 庭の実感に近いとされる家計所得 の中央値は1999年をピークに低迷してきた。また、アメリカでは上位1割 の国民が全米の富の8割を握るまでの超格差社会 へ入ってしまった。” と報じていた。 このため、同年7月中旬の下院金融委員会が主催した公聴会に出席した民 主党のペロシ下院議長は “グローバリズムと市場原理主義の融合はアメ リカの多くの人々にとって脅威だ”と危機感を表明し、アメリカ政府の貿 易政策の転換(=貿易政策の戦略的停止 /FTA(自由貿易協定)や新ラウ ンド交渉の停止)まで訴えていたのだ。つまり、ペロシ下院議長ら良識あ る米国民から見れば、 “WASPが確立したとされるアメリカ伝統の国民主 権”が、今やアメリカの勝ち組によって彼らが自己利益を図るための道具 として使われていることは明白な 事実なのだ。 また、アメリカにおける国民主権についての“このような意味で勝ち組の ために都合よく操作された曲解”は「患者の権利章典」についてのアメリ カ国民の平均的な受け止め方の中でも見られることだ。「患者の権利章 典」は、1973年に「アメリカ病院協会」(AHA/ http://www.historians.org/pubs/ahr.cfm) が宣言したものである(参照、 http://www.arsvi.com/1900/73.htm) が、この章典は二本の柱(下の(1)、(2))で支えられている。 (1)インフォームド・コンセント(informed consent)・・・医師か ら正しい情報を得た(伝えられた)上での患者と医師の合意 (2)患者の自己決定・・・合意に当たって最重視されるのは患者側の 意志による決定(具体的に言えば、個人の肉体の処分権と残りの人生の 生き方は、あくまでも患者個人の決定に委ねるべきだということ) こ の二つは、たしかに見方次第では人間の本性に則り、理にかなった もののように見えるが、そこには大きな陥穽が潜んでいる。あのランデ ィアン・カルト流(ア インランドの自由原理思想については、下記▼ を参照乞う)の徹底した「冷酷な利己主義」に最高の価値を置くという 立場からすれば、表面的あるいは一面的に は「患者の自己決定」こそ がベストの解のように思えることも確かではある。 ▼“ランディアンカルト感染症“への警戒の勧め、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20090825 し かし、よく考えればく『我われは何もすき好んで病気に罹っているの ではない』ことが直ぐ分かるはずだ。実は、このことこそ「医聖」と呼 ばれたヒポクラテス が、既に紀元前5世紀頃に指摘していた<医学と病 気治療のあり方>についての真理に他ならない。つまり、このヒポクラ テスの観点に立つならば<病気に罹る ことに際限なく<冷酷な自己責 任>の原則を当て嵌めるのは誤りだということになる訳だ。 一方、数多の戦乱による苦難と呻吟の歴史経 験を噛みしめつつ(…しか も、その戦争・殺戮・紛争の歴史の多くは市場原理主義的な意味での “資本主義の暴走”が原因であった)、今や充実した福祉・労働 環境社 会を実現し、リスボン条約の批准達成を受けて、これからも戦争への抵 抗の意志と社会的市場経済の理念を貫き通そうとするヨーロッパ(EU/ 欧州連 合)では、アインランド流の「徹底した自己決定主義・自由原 理主義」の立場は採っていない。 (関連参考情報) 資本主義の誤りに目覚めつつある世界(村野瀬玲奈の秘書課広報室)、http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1506.html 敢 えて言うなら、ヨーロッパも「個人主義」で個人の権利を最大限に 尊重はするが、そこでは“個々の人間の弱さについても十分に自覚さ れている”ということ だ。具体的に言えば病気・障害・高齢化・事故 などによる“人間の不可抗力的で、本人自身には責任がない弱さの部分” まで<自己決定すべき、あるいは自己決 定に任せるべき>と考えるの は行き過ぎだという視点がヨーロッパには存在するのであり、そこで は殆どの国民層が、このような価値観を共有しているのだ。 こ のような意味で<弱者へも平等な権利を認めるという、深い人間観 に支えられた眼差し>を伴う価値観はEUの「社会的市場経済」を支え ている訳でもあり、野 党やマスコミから“軽佻浮薄で意味不明”と揶 揄されることもある我が鳩山総理の“友愛から何となく感じるアノ一 抹の軽さ”と比較すれば、やはり遥かにその “重み”違うことが理解 できよう。つまり、仮に鳩山首相の“友愛”なるものがEU的な意味合い を持つとしても、この両者から受ける決定的な印象の違いは、 コペル ニクス的革命にも匹敵する相当な意気込みでの<迫力ある意識革命の 宣言>の有無がもたらしているのだ。 ともかくも、この部分 についての大方の庶民層の決定的な意識の違い が「国民皆保険制度としての医療制度」を採るか、「アメリカ型ビジネ スとしての民間医療保険制度」を採るかの 分かれ道になるということ だ。従って、このことは共和党・次期大統領候補のサラ・ペイリンらが 主張する如き共産主義や社会主義とは全然関係がないことであ る。オ バマは共産主義者だなどというデマゴークに体よく踊らされ、深く物事 を考えない人々は、このようなWASP(あるいは勝ち組)が仕掛ける詐欺的 な詭 弁の論理にコロリと騙されやすいという訳だ。そして、我われ日 本国民は、そのような意味での騙され易さをもたらす悪性ウイルスが、 あの「小泉=竹中偽装劇 場」を介して、この日本へ広く散布されてし まったことを想起しつつ十分に警戒すべきである。 (現実社会とヴァーチャル空間を支配する新たな大数法則への理解の 勧め) と ころで、人間社会あるいはネットWebのヴァーチャル空間を大数観察 すると、そこにはある種の冷厳なる科学的ルールが働いているという現 実についても我わ れは気づくべきなのだ。それは「ベキ法則」の支配 と呼ばれ、ウエブ・ページのリンクの仕方(例えば、ブログサイトのア クセス数の大きさ)が決して平等では ないことなどにその典型が現れ ている。従来の常識では、誰でもがいつでもどこでも参加できるユビキ タス化したネットWebのヴァーチャル世界は、それこそ 理想的な 「自 由の空間」であるはずだった。しかし、現実にはごく少数のサイトにア クセスが集中しており、このようなサイトはノードと名付けられている。 つ まり、アクセス数の大きさで考える限り、この「自由空間」で現実に 起こっているのは、むしろ独占・寡占・集中のアナロジーで説明できる ような現象なのだ。 そして、近年の経済物理学の研究によって、この傾 向を支えるのが「ベキ乗法則」(その詳細とグラフイメージは下記記事 ★1を参照/経済物理学については下 記記事★2を参照)であることが分 かってきた。 ★1べき乗法則( Power Law)、 http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2004_19872/slides/10/11.html ★2ブログtoxandoriaの日記『日本の“格差社会の拡大”を助長する“情 報の非対象性”の問題』、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060315 実 は、このように独占的・寡占的・集中的な法則に従う「べキ乗分布」 はインターネットのヴァーチャル世界に限らず、多くの自然現象や社会 現象に見られること が以前から経験的に知られていた。例えば、イタリ アの経済学者・パレート(V.F.D Pareto/1848-1923)が社会観察で発見 した所得分布 などについての寡占的な経済現象「パレートの法則」があ る。それは、当時「全体の2割程度の高額所得者が社会全体の所得の約 8割を占めている」ことが観察 されたことからパレートが提唱した法則 である。 無論、投入パラメータの仮定や母集団の前提次第というところもあるが、 この法則が当 てはまる様々な現象が観察される。例えば、「品質管理の 重点項目について、その最上位2品目を徹底改善すると全体の約8割で 品質改善の効果が得られる」、 「全体の2割を占める良質の顧客を徹底 マークすると、全体の顧客の約8割で売上げ向上の効果が得られる」、 「全学生の2割のレベルアップを図る工夫をする と、全体の8割程度で 学生の学力水準が向上する」などである。 あるいは、いささかペシミスティックな例を挙げるならば、如何様に民 主主義教育に力を入れても、本物の民主主義のあり方を理解し、それを 自分の仕事や生き方へ反映させようとする意志を持つことができる、い わゆる民度の高い 国民層は、たかだか全体の2〜3割程度しか存在し得 ないというようなことである。 また、“企業の連鎖倒産・世界金融危機の拡大・感 染症のパンデミッ ク”などへの対処を目的とした近年の経済物理学研究の成果に「企業の “仕入れ←→販売ルート”」のリンク数(結びつき数)のカタチを 100 万社を対象に解析したものがあり、それによると“企業のリンク数がベ キ分布”になっていることが分かった。つまり、ほとんどの企業は数社 の企業とし か取引していない一方で、何千社もの企業と取引してハブ の役割を果たす、ごく少数企業の存在が確認されている(情報源:2009 .11.5・日本経済新聞 『大西立顕・キャノングローバル戦略研究所研究 員/企業の評価=新たな視点で』)。 ここで更に興味深いのは、「企業のリンクのカタ チ」に“スケールフ リー性”も観察されたことである。簡単に言えば、それは分析企業数を 「大⇒中⇒小」と如何様にスライドしても殆ど同じ構造のリンクのカ タチが恰も“入れ子”のように観察されたということだ。もっとも、こ の“スケールフリー性”は、“親しい友人どうしのつながり、インター ネットのノード的 なつながり、たんぱく質の相互作用”など、現実と ヴァーチャル世界に共通する性質であることが既に知られていた(情報 源:同上)。 と もかくも、これらの結果から再認識されたことは、ハブ的な役割を 担う少数の企業の役割が非常に重要であるとともに、あるスケール内の ハブ企業が壊滅的な打 撃を蒙っても、その被害は必ずしも即座に全体 のスケールへ波及するとは限らないということである。一方、シミュレ ーション上で、ハブを担う2割程度の企業 を除去したところ、突然、 中核部分の結びつきが消滅して全企業の流れの滞りが観察されたが、 これは恰も物理現象における相転移(凍結・液化・蒸発など)の ようで あった(情報源:同上)。 また、これは今後の更なる研究が必要とされる内容だが、もう一つ無視 できない点がある。それは、企 業の結びつき方のカタチによっては、 必ずしも大企業だけが重要なハブの役割を果たしているとは限らぬと考 えられることだ。そして、この現象にヒントを与え るのがグーグルの 「ページランク機能」である。これは、ウエブページどうしのリンク構 造を分析し、ページ自体の重要性とリンク先のページの重要性を加味し てページを評価するアルゴリスムによる評価で、単純に結び付きの多さ だけをランクするノード評価とは異なっている(情報源:同上)。 い ずれにせよ、人間社会あるいはネットWebのヴァーチャル空間をこの ような観点から大数観察すると、普段に我われが自覚している現実認識 とは些か異なる、 ほとんど目には見えない一定の科学的ルール(法則性) が我われ自身の行動、生き方、考え方などを支配していることが認識で きる。これらの分野では未だ未解 明のことが多いが、それは、例えば 混迷を極めるアフガニスタンやイラク戦争のマグマとなっている貧困問 題とタリバン&アルカイダなど非常に厄介なテロリス ト集団らへの対 処、各国における内需拡大直結型の中小企業支援&振興策の工夫、ある いはグローバル&ヴァーチャルWebネットワーク時代の世界金融の監視 など、これまでの常識の延長で殆ど解決不能と思われるアポリアへの新 たな展望とヒントを与えることが期待される。 (民主党が宣言すべき雇用&中小企業に係る“コペルニクス的革命”へ の取り組み) こ れは上で見たことの繰り返しとなるが、「自律的な意味で民主主義意 識を持つ国民層」の存在について、ややペシミスティックに「ベキ乗法 則」の観点から社会 全体を概観すると、我われは日本国民全体の中で高 々2〜3割程度しか、これら特別に優れた意識の国民層を保持し得ない と思うべきなのだ。ただ、これらの特 に民度が高い国民と、その他多く の一般国民との結びつき(リンク)にかかわる協力関係(アソシエーシ ョン)の工夫次第では、我が国全体の民度を底上げする ことは十分可能 と考えられる。 ところが、今回の<政権交代>前の長期「自民党政権」は、これら少数 の「民度が高いまともな国民層」 と真剣に対話する気などサラサラなく、 むしろ「放置すれば隷属化・動物化・家畜化する可能性が高く、それ故 に思いのまま操れそうなヘタレ・ショタレ層の国 民」が増えることを密 かに期待しつつ、アノ忌々しい「小泉=竹中B層戦略(過半以上〜7、8 割に及ぶ善良な国民層を誑かして支持率アップを図る洗脳作 戦)」の如 き詐欺行為的なポピュリズム戦略とヤラセ・タウンミーティングなどの 悪魔的手法に溺れたふしがある。 従って、<政権交 代>を成し遂げたばかりの民主党にとって肝心なのは、 長期「自民党政権」と同じく約8割を占める善良な国民層に向けて詐欺 的なポピュリズム戦略を採っては ならぬということだ。つまり、優先度 を意識して民主党が先ずやるべきことは、国民全体の2、3割を占める民 度の高い国民向けに十分誠意を示しつつ、自らが 掲げた<政権交代の大 義>の根幹となる『雇用・中小企業』にかかわる自民党政策からの革新 的チェンジ(コペルニクス的革命の内容/例えば、『小沢オピニョ ン』 が掲げる“官・民とも管理職については徹底した自由競争を導入する一 方で、非管理職の勤労者については終身雇用を原則とする”など)につ いての明快か つ論理的なアピールである。 この小沢一郎の視点は、“政治には弱い立場や少数の人々の視点が尊重 されなければならない、それが私の 友愛政治の原点だ、人の命を大切に し、国民の生活を守る政治の実現を目指す”とする鳩山首相の所信表明 演説と矛盾するものではない。つまり、両者が語った ことは、自民党が 目指したのが<“平等と効率のトレードオフ”を警戒する社会制度=個 人の能力を過剰に無視すると悪平等が生まれることを警戒するネオリベ ラリズム好みの弱肉強食型の社会制度>であったとすれば、民主党が目 指すのは<富の独占・偏在による格差がもたらす“不平等と社会全体の 非効率のトレード オフ”への危機感を重視する社会制度=ヨーロッパ (EU)型の社会的市場経済のようなあり方>の方向への変革(チェンジ) であるということだ。 そ れこそが日本の民主党による“決定的チェンジ”の核心であり、「オ ランダ・モデル」の“ワッセナー合意”または「デンマーク・モデル」 の“フレキシキュリ ティ”に匹敵する、非常に大きな変革的効果が期 待できると思われる。(ワッセナー合意とフレキシキュリティについて は、下記◆を参照乞う)。 ◆2007-07-23toxandoriaの日記/ 2007年春、ドイツ旅行の印象[ローテン ブルク編]、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070723 こ のことをより平易に表現するならば、大きな矛盾を抱えながらも我わ れが資本主義社会を放棄できない以上は、180°のコペルニクス的な発想 転換を図るべき だということである。つまり、市場経済における「限界 効用逓減の原則」のブレークスルーのため“小泉純一郎や竹中平蔵らが 好んだマネタリズム”に基づく過 剰投機で詐欺的・ポンジービジネス的 な虚構への飛翔を煽るのではなく、まず人間(人権・生存権)と労働権 (勤労者の権利)を最大限に尊重・重視し、一定の 国家の役割行使によ る資本と市場への信用を確保して「雇用・福祉・医療環境の保全」に安 堵できる大多数の国民の“嬉しさ、感動、生きがい”という「質的・ 人 間的効用の増加」によって絶えず未来へ向けての消費拡大を刺激しつつ 付加価値増加の加速度を持続的に引き上げる”という新たな市場メカニ ズムによる内需 拡大政策への大転換ということである。そして、それは ジェレミ・ベンサム(Jeremy Bentham/1748- 1832)が唱え、ジョン・ス チュアート・ミル(John Stuart Mill/1806 - 1873)が「質」的な意味 を深めた“最大多数へ最大幸福をもたらす効用増加”の21世紀的“読み 直し”によるネオリベラリズム(新自由主義思想)の否定 であり、<資本 主義の新たなステージへの深化>ということにもなるのだ。 しかしながら、今の民主党の動向を見る限り、対米外交にお ける自己主 張の意志表明などについてはある程度評価できるものの、上で見てきた ような意味で肝要な部分、つまり「最も重要な政権交代の核心部分」が グラつ き揺らぎ始めており、<180°のコペルニクス的な発想転換>の 迫力が消えつつあるようで心もとない限りだ。マニフェスト原理主義を 掲げた全天候型の表層 的ポピュリズムから、一刻も早く雇用・労働環境 の整備と“少なくとも我が国のGDP・総産出額・就業者数の95%以上を占 める”中小企業活性化に思い切っ て焦点を絞った<180°のコペルニク ス的な発想転換>を民度の高い国民層向けに強く明快かつ論理的にアピ ールすべきである。 (関連参考情報) 内閣支持率、54.4%に低下=半数「政治主導と思わず」−時事世論調査、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091113-00000109-jij-pol そ して、その先に見据えるべきは、フランス型アソシエーション(社会 からヒューマンエラーのファクターを極力減らすための政府・企業・国民 相互のコミュニ ケーション深化政策)をモデルとした斬新な新社会政策 の具体化であり、マスゴミに扇動されて「小泉劇場型のB層向けポピュリ ズムとマネタリズム(新自由主 義=大企業&投機的金融を偏愛するトリク ルダウン信仰)」へ流されることだけは断じて避けるべきである。もし、 民主党が「この意味での禁じ手」へなびき始 めるようなことがあれば、 “その十分な意義については未だ不消化”ながらも過半以上の国民層が 支持した「小沢・オピニョン&鳩山・友愛」(折角の政権交代 の核心部 分)と「米国におけるオバマブームの退潮傾向へリンクする形でネオリベ 型政策へ回帰せざるを得なくなる現実」との間の矛盾が拡大し、必ずや 民主党 政権は暴政と瓦解への道をひた走ることになるであろう。 (関連参考記事) 民主党によるアンチ・ネオコン政策の象徴、「中小企業対策」への期待、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20090911 続、米日における新たな暴政の予兆への警告(1/3)、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20091102 続、米日における新たな暴政の予兆への警告(2/3)、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20091107 フランスとアメリカのアソシエーションの違い、 http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060321 【エピローグ画像】 Celine Dion Pour que tu m'aimes encore [http://www.youtube.com/watch?v=Qdjt0mWWH_M:movie] Lara Fabian A Göttingen -Les annees bonheur [http://www.youtube.com/watch?v=hPPF6I1qpYQ:movie] |