メルマガ:クリスタルノベル〜百合族
タイトル:クリスタルノベル〜百合族 Vol. 028  2009.11.7  2009/11/07


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   ◇∞◆  クリスタルノベル〜百合族〜    ◇∞◆
    ◆∞◇      Vol. 028  2009.11.7     ◆∞◇


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                    ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ 
            
             ♪ − 星の降る夜空の向こう



「ねぇ、美紀さんって普段は教室でお弁当派の人じゃなかったの?」
「うん、そうだけど、今日は朝から食欲なくって。香夏子も休みだし」
「松谷先輩、どうしたんですか?」
「軽い風邪だって」
 私は笑顔を梨香に返し、ストローからパックの紅茶を飲む。
「私、今日は食堂だったんです。お弁当作る時間なくって。珍しく混雑してい
て、今食べ終わったばかりなんです」
「へえ。いつもは席を待つってこと殆んど無いのに」
 特別広くはない食堂だけど、人でごった返したトコロなんて今まで一度も見
たことが無い。大方の人間が、持参したお弁当を教室や校庭で食べている。
「なに食べたの?」
「イタリアンパスタ。ここのパスタ、種類少ないけど普通のお店で食べるのと
そんなに大差ないと思いません?」
「たしかに美味しいね。そりゃあ、二、三千円するようなお高いパスタには及
ばないけど、食堂のパスタって、生パスタを使ってるから、オススメよね」
「美紀さん。明日一緒に食堂で食べません? 一人だとなんか行き難くて」
「うん、いいよ。一年生ってあまりいないもんね」
 食堂には独特の雰囲気がある。それは上級生の存在。別に何かされるってわ
けでもなく、悪そうな人達が大勢いるわけではない。ただ、利用する生徒の割
合が学年によって増えていくため、食堂には二、三年生が多い。私一年生の時、
自分のグループ以外、誰一人として一年生がいない時もあった」
「よかったぁ〜」
 梨香が私の横に腰を下ろす。サラサラ揺れる長い髪。血管が透けて見えるほ
どの透き通った肌。初めて校門付近で梨香を見たときと同じ胸の高まりを感じ、
私はやっぱり梨香のことが好きなんだと思った。
 梨香はこちらを見つめ、「じゃあ、さっそく明日とかでもいいかな」と小さな
声を放つ。
「もちもち、おっけ〜。明日は食堂の全てを余すとこなくレクチャーしたげる
よ」
「ん〜、ありがと〜」
 私の手を両手で握ると、「美紀さん大好き」というおまけの言葉まで追加して
くれた。
 あぁ、私の方がその百倍も千倍もあなたのことが大好きなのよ。
 思わず洩れそうになった魂の叫びを抑えつつ、私は火照った顔を見られない
よう、俯いて紅茶と一緒に、口に含んだパンをじゅるると飲み込んでいくこと
に必死となっていた。

「やっぱ、パスタはお勧めメニューで攻めるのが王道かな。今日のお勧めはほ
うれんそうのクリームパスタだって」
「おいしそう」
 嬉しそうな表情の梨香を後ろから眺めていると、思わず頬が緩んでしまう。
 ちょっと緊張した面持ちの彼女を見ていると、まるで、初めてのお使いを見
る時のようなゾクゾクとした庇護心が生まれてくる。
「で、買った食券をお盆と一緒におばちゃんに渡すだけ。あ、パスタだとここ
に並んでる小鉢からも好きなの一個とって良いよ。お盆に乗っけて渡せばおっ
け〜」
 私はランチにしたから、小鉢は二個。
 メインがチキンソテーだったから、ポテサラにコンポタと。
 そんな感じで、二人が揃ってメニューを受け取ると空いていた適当な席へ座
る。
「じゃ、いただきま〜す」
「うん、戴きます」
 普段は絶対に口にすることが無い「いただきます」なんて食事時の挨拶。
 一人では勿論、多香子と一緒の時だって言葉にした覚え、全然無い。
 それは、今の自分が如何に子供みたいにして浮かれているかってこと。
 だけど、こんなのまるで夢みたいだったから。
 こういう日常が送れたらと、ずっと願ってきた。
 それは、少しづつ、少しづつ、現実となってきたけれど。こうして初めての
一緒を体験するたび、馬鹿みたいに嬉しくなる自分を実感する。それで、気が
付いたときには又想う。もっと色々な彼女を知りたい。もっとずっと彼女と一
緒にいたい、って。


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  発行者      : 春野 水晶 

  * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』
  * 発行周期:不定期(週2回発行予定)

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