発想をもたらす導火線
コードレスの電気機器が販売されるのは、人々がコードを煩わしいと感じているからに他ならない。コードレスのマウス、コードレスのキーボード、テレビのリモコン……様々な新製品が登場して我々の生活を便利にしてくれるが、そのために創意を発揮する機会が失われていると言えなくもない。スタンドから伸びるコードを見ても、普通我々は「面倒だなあ。これがなければいいのに。」と愚痴るばかりで、工夫をしようと考える人は少ないものだ。
この「ARIKUI(アリクイ)」を初めて見た時、デザイナーの知恵と世界観に驚嘆した。普通は面倒だとばかり思われているコードが、アリクイの細長い舌となって部屋の隅の差込口まで伸びている。まるでアリクイが嬉しそうに電気を吸い込んで体を発光させ、室内を温かい光で包んでいるようだ。コードという「束縛」の象徴が、アリクイの必要欠くべからざる一部になっているのである。
デスクに置いても壁のそばに置いても、「ARIKUI」は人々の視線を引きつける。自然界のアリクイは取り立てて人間に好まれる動物というわけではないが、ライトになったおかげでその可愛らしさがアリクイの魅力を最大限に発揮させる結果になってことに驚かされる。裏返してみると、アリクイの「おなか」にランプが取り付けられており、尖った口のあたりに商標とデザイナー名が入っている。
「ARIKUI」は日本の高い職人技を駆使して、一つ一つ手作業で丁寧に作られている。砂を固めた鋳型に、融かしたアルミを流し込んで作り、ぴかぴかになるまで磨き上げられる。全工程が経験と勘と情熱で作られているのだ。たぶんそれが、金属製品でありながら温かさを感じさせる理由なのだろう。
「ARIKUI」はブラック、ホワイト、アルミの3種類があり、それぞれ美しくデザインされたボックスに入っている。このとても可愛らしいアリクイを友達にプレゼントしたら、きっと喜ばれるだろう。だがもっと重要なことは、物事を観察する鋭敏な目を持つことや、単純なものをすばらしいものに変える発想を、この「ARIKUI」が教えてくれるということなのである。(姚遠執筆)
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