メルマガ:作家&出版人育成マガジン「パウパウ」
タイトル:作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第114号  2009/10/08


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      作家&出版人育成マガジン『パウパウ』第114号
   2009年10月8日発行(不定期発行)(2000年3月7日創刊)
      発行元 出版人コム http://www.shuppanjin.com/
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[お知らせ] 
 もっと早く発行するつもりだったのですが、間隔が空きすぎてしまい
ました。今後は最低月1回の発行をめざします。
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●ワン・ラブ ワン・ハート(巻頭言)  上ノ山明彦
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 スティーブ・ジョブスの「スタンフォード大学卒業式でのスピーチに
ついて、ホームページでも紹介したことがあるが、その中の名文を一つ
ここで紹介したい。ジョブスがこれから社会に旅立つ学生向けに送った
メッセージであるが、どの世代の心にも深く響く言葉である。
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 人生は短い。他人の人生を生きることで、時間を浪費してはならない。
ドグマ(独断や偏見)に捕われてはいけない。それは他人の人生観に従っ
て生きることを意味する。自分の内なる声を、世間の評価という騒音に
押しつぶさせてはならない。
 最も大切なことは、自分の心と直感に従う勇気を持つこと。本当にあ
なたが望んでいることを、あなたの心はとっくに知っている。他のこと
はすべて二次的なことにすぎないのだ。
(スティーブ・ジョブス、「スタンフォード大学卒業式でのスピーチ
(2005.10.24)」より抜粋引用。翻訳:上ノ山明彦)
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 世間の一般の価値観に従って生きていけば、それなりに褒められ信用
してもらえる。例えばそれなりの大学を出て、官公庁や大企業に就職す
れば、無難な人生を送ることができる。だが大切なのはどんな人生であ
れ、自分の心の奥底にある希望に合致しているかどうかだ。世間の常識
に捕らわれた人生観に従って生きるのではなく、自分の内なる声に従っ
て生きていきなさい。そうすれば必ず道は開ける。そう言い切っている。
 ジョブスは何度も挫折を体験している。彼の言葉はその経験から導き
出されたものであるだけに重みがまったく違っている。就職氷河期の若
い世代の皆さんには、挫けず自分の道を見つけていただきたい。
 下記に参照できるサイトを紹介。
http://sago.livedoor.biz/archives/50251043.html(原文)
http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html(翻訳)
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●時代小説を楽しむための「江戸」紹介本いろいろ 上ノ山明彦
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 江戸時代の文化伝統は、現代生活では断片的にしか知ることができな
い。当時の人々にどんな生活があり、どんな価値観があり、どんな文化
があったのかについて知るには、やはりわかりやすく解説している本に
頼るのが近道である。今回は、私が推薦する本を拾い上げてみた。
○「知らなかった江戸のくらし」、本田豊著、遊子館発行
「武士の巻」「庶民の巻」がある。2008年に発行された本で、図版が豊
富であるところが特長である。解説も入門者向けにわかりやすい。
○「大江戸生活事情」 石川英輔 講談社文庫
 江戸時代の政治経済体制の分析から日常生活、仕事、教育、文化などを
考察している。江戸時代の全体像をつかむのに最適の書。 
○「大江戸生活体験事情」 石川英輔、田中優子 講談社文庫
 江戸時代の庶民の生活を本当に実践してみたらどうなるのか、それが
本書のコンセプトである。予想と実体験とはかなりの開きがあった。本書
を読み終えた後、私も挑戦してみたくなった。 
○雑学「大江戸庶民事情」 石川英輔 講談社文庫
 江戸庶民の実生活を知るための好著。職業、衣食住、教育、娯楽、旅な
ど、本当の庶民の暮らしを紹介している。 
○「江戸を駆ける」 神坂次郎 中公文庫
 歴史資料を読んでいくと、生々しい人間の行為に出会うと著者が言う。
たしかに人間の愚かさ、滑稽さは昔も今も変わらない。そんなことを痛感
させてくれる本がこれ。 
○「考証 江戸の再発見」、稲垣史生著、河出文庫
 歴史考証の専門家である稲垣史生の著書。本当の江戸時代の姿がわかる。
○「江戸へようこそ」 杉浦日向子 ちくま文庫
 時代考証家?稲垣史生の弟子である著者が、江戸趣味とは一線を画した
江戸文化論を展開する。特に江戸庶民の遊び心や春画論についての考察は、
非常に参考になる。 
○「彩色江戸物売図絵」 三谷一馬 中公文庫
 古文書などに描かれている絵を参考に描き直した絵に彩色を施した本。
解説もある。いわゆる行商が対象。時代考証に欠かせない本の一つだ。
○「一目でわかる江戸時代―地図・グラフ・図解でみる」 市川寛明編、
竹内誠監修 小学館
 江戸時代の生活を、統計的にあるいは科学的に分析した本。家計、米の
生産量、地震。火事。飢饉の発生回数、幕藩体制など、数字で見ると江戸
時代の印象も変わってくるところがある。

 この他に参考文献情報をここにまとめてあるので参照していただきたい。
http://www.shuppanjin.com/edojidai/sankobunken/bunken.html
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●この名著を読もう! 
『黄金旅風』『始祖鳥記』『雷電本記』  飯嶋和一著
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  私の尊敬する作家の一人に、飯嶋和一がいる。寡作の作家で、5〜6
年かけて1つの歴史長編を書き上げるという人である。作品の時代考証、
取材にかけた労力は作品を読めばすぐに想像できる。精細な人物描写、心
理描写、心象風景描写、時代背景の描写は非の打ち所がない。ストーリー
の展開も、いったん読み始めるととどまることがなく引きずり込まれてし
まう。
 飯嶋和一の文体は、セリフと人物描写で展開する場面が少なく、大部分
を地の文で語っている。これはロシア文学のトルストイを彷彿とさせる。
おそらく意識してこういう文体を取っているのだと思うが、セリフの多い
現代の作品の中ではかえって際だって見える。決して古いというのではな
く、本格的な文体を基礎に新しい感性で文章表現を構築しているのである。
 作品の中から滲み出てくる彼の人生観にも心を打たれる。
 寡作であるがために、まだまだ幅広い層に知られてはいないが、目の肥
えた読者やプロの間では高い評価を受けている作家である。私も飯嶋和一
という作家は司馬遼太郎、津本陽、宮部みゆき等と同レベル以上のすばら
しい作家であると考えている。
 粗製濫造の現代の出版界の中で、「ものを書く」というのはこういうこ
となんだ、と思い知らせてくれる作家である。
 興味がいた方は、アマゾンコムや他のサイトで、彼の作品を検索してい
ただきたい。お薦めは『黄金旅風』『始祖鳥記』『雷電本記』。
 最後に、飯嶋和一がインタビューでなぜ書くかについて問われ、こう答
えている。「書かずにはいられない思いというか、書くことによってしか
癒されない思いの深さというようなものなんです」。本物の作家は皆こう
なのである。
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 コース教材販売中!
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しております。詳しくは、このページでご覧下さい。
http://www.shuppanjin.com/ikoza/guide.html
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 編集後記
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 室町時代の能役者である世阿弥が、長年もやもやとしていた私の疑問
に、明解に答えてくれた。その疑問というのは、芸術性に乏しいが大衆
に人気の作家が多数いる。反対に、芸術性にすぐれているが人気のない
作家が少なからずいる。大衆の人気も芸術性も兼ね備えている作家は、
数えるほどしかいない。この現実をどう受け止め、いかに自分が精進し
ていくべきか?
 世阿弥は言う。「芸達者な人は、鑑賞眼がない人々の心に叶うことがむ
ずかしい。下手な人は鑑賞眼のある人々の目に止まることがない。
 下手な人が鑑賞眼のある人の目に叶わないことに疑問はない。芸達者
な人が鑑賞眼のない人々の心を捉えることができないことについては、
目の肥えていない人々の鑑賞眼が足りないことが原因なのであるが、心
ある達人で何か工夫をしている役者ならば、鑑賞眼のない人々の目にも
面白いと見えるように能を演じるべきである。この工夫と芸を極めた
役者のことを、花を極めたと言うべきなのである」(現代語訳:上ノ山)
 世阿弥の言葉から引き出される教訓は、玄人の評価が高いけれども素
人に人気のない作家は、もっと修行し工夫して素人にも面白いと思わせ
るような作品を書きなさい、ということである。
 素人受けするが玄人には評価されていない作家については、いわずもが
な、ということになる。
 世阿弥の言う「花」には、もっともっと深い意味がある。『風姿花伝』
を読んで、その意味を確かめていただきたい。(かみのやま)
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 編集発行人:上ノ山明彦  発行者:出版人コム
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