メルマガ:クリスタルノベル〜百合族
タイトル:クリスタルノベル〜百合族 Vol.016  2009.8.8  2009/08/08


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   ◇∞◆  クリスタルノベル〜百合族〜    ◇∞◆
    ◆∞◇      Vol.016  2009.8.8      ◆∞◇


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                    ◇∞◇ タイトル ◇∞◇ 
            
             ♪ − 星の降る夜空の向こう


 クラブ活動と中間テストと期末テストに追われるだけで、将来のことなんか
まだ考えてなかった。
 いつまでも、梨香とこうやって楽器を吹いてられるような感覚でいたけど、
私達は確実に一年後にはバラバラになる……。
 それを感じたら、急に胸が痛んだ。
「私だって、才能なんてないよ。将来なんて今、言われるまで考えてなかった。
未来は無数に広がっているけど、広すぎて何を選べばいいのか分からないわ…
…」
 漠然とした「未来」という事に対して、私はそんな感想を言っていた。
 梨香も同じ気持ちなのか分からなかったけど、それきり黙って練習に戻った。

「すみません、美紀さん。私、先に帰ります」
 練習を終え、楽器を片付けると、梨香は飛び出すようにホールから出て行っ
た。私はホールの窓から外を見た。今にも雪を零しそうな鉛色の空が街を包ん
でいた。
 講堂の出口から梨香飛び出して裏門に向かって走っていった。視線を裏門の
ほうに向けると赤い車が止まっていた。梨香はその車の助手席のドアを開けて
中に乗り込んだ。
「はぁ……」
 ため息が漏れた。目から涙が零れ落ちた。慌てて周りを見て、誰もいないの
を確認して私は涙を拭った。


3.

 梨香と過ごすときめくような時間以外は、学校生活は単調で、気がゆるみ、
平穏無事な生活につまらなさを覚えていた。
 梨香のほうは彼氏とうまくいっているようで、学校の公園の近くとかで彼の
車に乗り込む梨香を何度も見た。
 きっと、今日もあの彼に梨香は抱かれるのだろう。あの白くて細い身体を男
に抱かれるときの梨香の姿ってどんなのだろう。きっと、綺麗な声を出して悶
えるのだろうか。
 処女の耳年増とはよくいったものだ。まだ男を知らなかった私の頭の中に、
いやらしく男に蹂躙される梨香の姿がありありと浮かんできた。
 心を掻き毟られるような嫉妬心が夏空の入道雲のようにむくむくと心の中に
沸き起こり、無垢な少女の胸は張り裂けそうになった。
 でも、私には、そんな愛しい梨香を見つめながらため息をつくことしかでき
なかった。
 私は梨香を想いながら自分を慰めた。妄想の中で美しい彼女を抱きしめる以
外に、この切ない思いに対抗できる手段が思い浮かばなかった。
 部屋に鍵をかけて、布団にもぐりこみ、妄想の中で梨香の身体を愛撫しなが
ら指を使った。濃厚な処女の匂いが布団の中に広がる。そんな自分の女の匂い
に興奮し、切ない声をあげて達した後に待っているものは、空しい罪悪感だけ
だった。




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  発行者      : 春野 水晶 

  * タイトル:『クリスタルノベル〜百合族〜』
  * 発行周期:不定期(週2回発行予定)

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