たった一本のワインのために
誕生日、結婚披露宴、卒業式・・・、人生に訪れるさまざまな特別の日に欠かすことのできないのがワインだ。長い年月を経て、ある日「タイムカプセル」を開けるようにコルクを抜く。自分のために、そして愛する人のために、月の光に輝く芳醇なワインをグラスに注ぐ・・・。
「WA−1」は、透明なガラスケースの中に静かに横たわり、声なき声で何かを語っている。その内側では、白雪姫の眠るような柔らかなしとねが優しさと夢を包み込んでいる。外側はそれとは逆に堅牢な材質で覆われ、忍耐と強靭さを体現している・・・優れたコンセプトと細やかな職人芸に「気持ちの強さ」を重ねて作られた、完璧な形而上学的な傑作である。
24歳のときに「毎日ID賞」特選一席を最年少で受賞した秋田道夫さんにとって、たった一本のワインのためにワインセラーの基本形を作り出すのは決して難しいことではなかった。しかし彼にとって「モダンデザイン」とは単なる「最新のデザイン」ではない。合理的な形状を大量生産し、素材の特性を最大限に引き出し、素朴で堅牢ですばらしい製品を作り出したものこそが「モダンデザイン」と呼べるものなのだ。
WA−1はフロンやコンプレッサを使わずに冷却効果が得られ、非常に環境に優しい。ワインの適温に配慮し、室温が高ければ自動的に冷却し、室温が下がれば加熱する。温度は12、14、16度の3段階に設定可能で、湿度の変化が激しい日本で湿度を65%以上に保ち、コルクの縮小を防いでいる。運転音は非常に静かで、わずか15dBであり、夜、枕元に置いても睡眠の邪魔にならない。WA−1は紫外線の侵入を防ぐ二重構造になっており、熟成が紫外線によって影響を受けることもない。
秋田さんは、「SIMPRICH(シンプリッチ)」をデザイン哲学とし、消去法を用いて単純で洗練された中に豊かさを感じる製品を作り出している。それらの製品は非常にシンプルでありながら、耐久性が高いものだ。「よいデザインは3つの要素から構成されています。それは、人々の生活に対する豊かな感情、バランスが取れて対称的な構成比率、そして消費者が使ったときに『なるほど!』と思う優れた発想です。よいデザインは使い手の生活レベルを高めます。買い手の現在の生活に迎合するのではなく、その人の目的を探り、その人に未来の生活を見せるようなデザインなのです。」と、秋田さんは言う。
シンプルな造型は、365日いつでもそばにいられるような感覚があり、このような「気持ちを伝える」デザインこそ、WA−1が広く長く愛される要素なのである。今夜は月が美しく、気持ちのよいそよ風が吹いている。さあ、明るい月に向かって杯を挙げ、人生の楽しさを分かち合おう。(姚遠執筆)
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