一石二鳥の新型マウス
デザイナーの川崎和男さんに会った人は、「日本で最も多くの賞を得たデザイナー」で、グッドデザイン賞の審査委員長でもある彼が障害者であることに、きっと驚かれるだろう。28歳の時、乗っていたタクシーが酔っ払い運転の車に突っ込まれ、命は取り留めたものの、脊髄損傷によって車椅子生活となった。しかし彼はこの運命に負けることなく、体内に埋めこまれた人工臓器に不満を感じて医学の道に挑戦し、医学博士の学位を取得、人工器官の設計と開発に力を尽くしている。彼が自分のために設計した車椅子は、ニューヨーク近代美術館に永久保存されている。
UFOのように平たく、ドーナツのように魅力的な外観。手に握ったときの落ち着いた感触にほっとさせられる。川崎さんが心をこめてデザインしたこの不思議な家電は、「C@T−one(キャット・ワン)」というすてきな名前の、三つのボタンを備えた無線光学マウスである。本体にはセンサーが内蔵され、受信器をUSBポートに差し込めば、ドライバーなしですぐに使用することができる。左右のクリックボタンがスクロールホイールを取り囲んでいるのは普通のマウスとさほど変わらないが、半径10メートルの範囲で自在に使用することができる。
川崎さんの「アートブログ」で、生き生きとしたドラえもんやハロー・キティの写真を眺めていると、命に対する強い情熱と愛、そして好奇心に満ち溢れる笑顔が感じられ、これを障害のある60過ぎの男性が書いているとはなかなか信じられないだろう。だが何も説明されなくても、「C@T−one」を握ったときにすでにひそかに感じていた。これがただのマウスではなく、きっと思いがけない機能が備わっているに違いないということを。
果たして、「C@T−one」にはテレビのリモコン機能もついていたのだ!円盤を裏返しにすると、電源、チャンネル切換、モード変換、放送変換、音量調節、ミュートなどの機能が操作でき、シャープ、パナソニック、ソニー、東芝、日立、三菱、マクセル、パイオニアなどの多数の有名ブランドのテレビ、ディスプレイ、DVD機などに対して、半径27メートル以内なら、内蔵された赤外線発生器によって操作が可能である。マウス機能の側から見て、一定の傾斜度を超えて傾けるとマウス機能が自動的にオフになるので、リモコン機能を使用しているときにパソコンの誤操作が発生することがない。こうした細かい点にも、デザイナーの力が発揮されている。
「C@T−one」は一石二鳥のすぐれた製品である。また、我々の日常の家電生活に便利さをもたらしてくれるだけでなく、そこにこめられた命を燃やすエネルギーは、我々が人生で出会う困難や挫折にどのように立ち向かったらいいかを教えてくれるのだ。(姚遠執筆)
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