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タイトル:Daily Drama Express 2009/06/06 ザ・クイズショウ (8)  2009/06/15


===================================================== 発行部数   26 ==
                        ★★ 日刊ドラマ速報 ★★
            ☆☆ 2009/06/06 (Sat) ☆☆
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== 目次 ==============================================================
  1.土曜日の連続ドラマ
  2.編集後記
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1. 土曜日の連続ドラマ
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タイトル ザ・クイズショウ
局  名 日本テレビ系
放映日時 土曜21時00分
キャスト MC     神山 悟(27) 桜井 翔
 ディレクター 本間俊雄(27) 横山 裕
 新人AD   高杉玲奈(22) 松浦亜弥
 案内人(?)         篠井英介
 スイッチャー 米倉信三(44) 田中哲司
 音効     竹内 昇(29) 和田正人
浦沢 瞳(27) 森脇英理子
 冴島の娘   冴島美野里(7) 大橋のぞみ
 謎の少女   新田美咲(17) 水沢エレナ
 照明技師   松坂源五郎(55) 泉谷しげる
 銀河テレビ編成局長 田所 治(49) 榎木孝明
 プロデューサー 冴島涼子(40) 真矢みき

 第八回解答者 冴島涼子(40) 真矢みき

原案 『THE QUIZ SHOW』森谷 雄/D.N.ドリームパートナーズ・VAP
脚  本 及川拓郎
主題歌   嵐『明日の記憶』

あらすじ  第8回

 真っ白な病室で、神山悟(桜井翔)は記憶を思い出していた。
 高校生の時の記憶だ。
 新田美咲(水沢エレナ)と本間俊雄(横山裕)と、仲良くふざけあ
っていた頃の記憶。
 そこへ、本間が病室に入ってくる。そして、神山にどこまで思い出
したのか、と問う。三人でいた頃の記憶を思い出したと告げた。
 しかし、美咲が死んだときの記憶だけがない。
 まさか、自分が殺してしまったのか。
 神山は本間にたずねるが、本間は黙って答えない。
 次回の解答者の履歴だけを置いて、病室を去る。

 銀河テレビの廊下で、冴島涼子(真矢みき)は、本間を呼び止めた。
 冴島は、本間の企みに気がつき始めていたのだ。
 八年前の墜落事故の関係者を「ザ・クイズショウ」の解答者にして
いること、その被害者の中に神山、本間もいることを調べていた。
「何を企んでいるの? ……番組を私物化することだけは許しません」
 厳しい顔で本間をにらんだ冴島だったが、本間は表情を変えない。
「もう、遅いんじゃないですか?」
 二の句を継げない冴島。
 ……そこへ、銀河テレビ編成局長の田所治(榎木孝明)から、携帯
に電話がかかってくる。

 銀河テレビの会議室に冴島は呼び出された。
 そこで、田所にクビを言い渡される。
 冴島は、「わかりました」とだけ答えた。

 一方、スタッフルームで片付けをしていた新人ADの高杉玲奈(松
浦亜弥)は、奇妙な資料を見つけてしまう。
 八年前の「シナイ湖小型機墜落事件」の切り抜きだ。そこに一枚の
写真も挟まれていて、美咲、本間、神山の姿があった。
 そこへやってくる本間。
 慌てて資料を隠そうとする玲奈だったが、ばれてしまう。
 静かに資料を取り返した本間に、玲奈は「その人は……」と尋ねる。
「新田美咲……。俺と神山の幼なじみだ」
 ハッと息を呑む玲奈。
 本間は玲奈を見つめて言った。
「高杉……お前の夢はなんだったけ?」
「……ディレクターに……なることです」
 本間は静かに去っていく。

 銀河テレビの一室で、本間と案内人・依田(篠井英介)が並んで夜
景を眺めていた。
「……冴島さんの解雇が決定したそうです。あなたのPD兼任の内示
は明日にでも出るはずです」
「そうですか……」
「私の仕事は……あと、ひとつですね」
「あの人は引き受けますよ。どんなことがあっても」
 案内人の依田は、うなずく。と、本間が依田に頭を下げる。
「依田さん、今まで、ありがとうございました」
「戻ってくるつもりはないんですか?」
「今までのことは感謝しておりますよ。あなたにも、父にも……」

 冴島は自宅のベッドで、八年前のシナイ湖の現場を思い出していた。
 懸命に現場に近づこうとする冴島だったが、足を取られて倒れてし
まう。
 起き上がろうともがくが、身体が自由にならない。あたりを見回す
と、自分のデジカメが手の届くところに転がっていた。デジカメに手
を伸ばす。……なかなか届かない。
 と、そのデジカメの画面に、ひとりの男が映る。
 男はゆっくりと振り返った。男は……雨に濡れ茫然自失の神山であ
る。
 神山に見とれるうちに、冴島は気を失う。
 ……気がつくと、枕元で目覚まし時計が鳴っていた。
 冴島は現実に戻る。
 枕元には、「報道大賞」の盾が飾ってある。シナイ湖小型機墜落事
件の報道で、冴島が得たものだ。そのときの思いを閉じるように、盾
を伏せるのだった。

 冴島は娘の美野里(大橋のぞみ)を小学校に送り届ける。
 銀河テレビをクビになってしまったので、明日からはずっと美野里
と居られるようになった。
 美野里に「少しお休みをもらったから、旅行にでも行こうか」と笑
いかける。
 美野里は嬉しそうにうなずいた。
 そこへ、案内人の依田が現れる。
 慌てる冴島に意味深に笑いかけ、依田は招待状を差し出して言う。
「冴島涼子さんですね……。私、銀河テレビの者です。冴島涼子さん、
あなたを、ザ・クイズショウへご招待します。あなたも……このまま
で終わりにしていいとは思っていないでしょう? ならば、ぜひとも
あの場所へ!」
「あなた……誰なの?」
「それは……ゆくゆく」
 黙って招待状を受け取る冴島。

「ザ・クイズショウ」の編集室では、プロデューサー兼ディレクター
に昇進した本間が、スタッフを前に訓辞を述べていた。
「……みなさん、今日から俺がPDを兼ねることになりました。まあ、
やることは変わらないので、気楽に行きましょう……」
 照明技師の松坂源五郎(泉谷しげる)が、本間をにらみながら言う。
「本間……お前、本気でやるんだろうな?」
「あの人には、叶えたい夢があるはずです。……そのための『ザ・ク
イズショウ』でしょう?」
 簡単には信用できない、という顔で本間を見つめるスタッフ達。た
が、放送開始時間は迫っている。スタッフ達はそれぞれ仕事を始めた。
 スタッフの中には、冴島を解答者にすることにとまどいを感じてい
る者もいたが、だからといってどうすることもできない。
 とまどいのなかCMが終わり、番組はスタートした。

 舞台中央にたったMCの神山が、大げさな身振り手振りで言う。
「人は誰でも、華やかな夢に憧れる。世界中を旅したいもの、大きな
家に住みたいもの、はたまた大金を手にしたいもの……。すべての夢
の終着点、それがこの……ザ・クイズショー!」
 派手な音楽とともに番組のオープニングがスタートする。

 さっそく、神山が今日の解答者を紹介する。
 コールすると派手な音楽とスモークの中に、冴島が登場した。
 同時に冴島のプロフィールが紹介される。

「冴島涼子、東京都出身。銀河テレビ入社後、報道部のプロデューサ
ーとして活動。八年前に手がけたニュース番組で日本ジャーナリスト
協会報道大賞を受賞。その後、情報バラエティ部門に異動し、『ザ・
クイズショウ』を担当するものの、先週の報道事故が原因で銀河テレ
ビを退職。現在に至る」

「ザ・クイズショウ」の元プロデューサー、しかも先週までやってい
たと紹介されると、スタジオにざわめきが起こる。
 やりにくいだろうに、なんでここに来たのか、と神山に問われ、
「叶えたい夢があるから」と即答する冴島。
 神山もやりにくそう。ルール説明は不要だろうからと、はしょって
冴島の夢を聞く。
「……銀河テレビへの復帰を希望します」
 ええ?……と観客席から声が上がる。
「それは……どういうことでしょう?」
「先週の放送の事故を受け、自首退社という名のクビを宣告されたか
らです」
「承知しました……あなたがドリームチャンスを正解したあかつきに
は、銀河テレビへの復帰を約束しましょう。それでは、冴島涼子が自
らの夢をかけてこの『ザ・クイズショウ』に挑みます……イッツ・シ
ョウタイム!」
 神山が宣言し、クイズはスタートした。

 CMに入って一息ついた編集室に、編成局長の田所が怒鳴り込んで
くる。
 冴島が番組に出るという件を知らなかったのだ。
 しかし、本間は白々しく言う。
「彼女はもう、局員じゃないですよね? 今日は一般枠の募集ですか
ら」
 激しく問い詰めようとする田所を無視して、本間はスタジオへ向か
う。

 神山と対峙していた冴島のところへ、本間がやってくる。
 挑発する本間に、何が何でもクリアしてみせると、冴島もにらみ返
した。
 CMが開け、本番が始まる。

 第一問「温室効果ガスの排出について、森林保護事業などで埋め合
わせるといった考え方はなんという?」
 第二問「あなたが八年前に報道大賞を受賞したニュースで扱った事
件はどれ?」
 どれも難なく答えていく冴島。
 さすがは元報道部で、この番組のプロデューサだとほめるが、第二
問で「シナイ湖小型機墜落事故」と答えたところから、その事件の当
事者でもある神山の表情が曇る。
 第三問「シナイ湖小型機墜落事故を取材するきっかけになった日、
冴島涼子がとっていた休暇は?」
「B出産休暇」
 ──正解。
 第四問「あなたが八年前に離婚した、元夫はだれ? A安藤康介、
B宮本健治、C友部公一郎、D田所治」
 冴島の表情が固まる。

 編集室で、冴島の顔をモニターしていた本間が怪しく笑う。
「さあ、始まりですよ……冴島さん」

 スタジオで思い悩む冴島の脳裏に、過去の記憶がよみがえる。
 まだ冴島が、田所と一緒に暮らしていた頃のこと。
 子供ができた、と告げる冴島。大喜びして冴島を抱きしめる田島。
 幸せな光景……。

 スタジオでは神山が冴島の表情を見つめていた。
 冴島は神山を一瞥して言う。
「Dの田所治」
 ──正解。

 第五問「シナイ湖小型飛行機墜落事故において、唯一の死亡者は次
のうち誰? A高杉玲奈、B浦沢瞳、C小山希、D新田美咲……」
 美咲の名前を見て、言いよどむ神山。冴島はハッキリと答える。
「D、新田美咲」
 ──正解です。
 神山はショックを受けている。
 まだ、何が理由で美咲が死んだのか、知らなかったのだ。
「そうですか……、新田美咲はあの事故で……」
「やっぱり、何も覚えていないのね?」
「な、何のことですか?」
「どうしてなの? あの事故が原因なの?」
「いや……」
「あなたは八年前、あの現場にいた。私たちは会っている。神山く
ん……」
 追求しようとする冴島を振り切るように、次の質問を強引に出題す
る神山。
 第六問「シナイ湖小型飛行機墜落事故において、あなたが追及した
のはどれ? A脱税問題、B管轄問題、C耐震偽装問題、D情報漏洩
問題……」
 冴島は当時のことを思い出す。

 八年前、妊娠中の冴島はシナイ湖を眺めて一息ついていた。
 そこへ突如、轟音を響かせて瀬島の頭の上を通過して小型機が墜落。
 慌てて車を走らせて、湖畔へ行く。が、すでに飛行機は沈み始めて
いる。
 サイレンを鳴らして駆けつけてきた救急隊。現場は修羅場になる。
 が、冴島はカメラを取りだして取材を始める。
 やがて雨が降り出す。
 取材を続けるうちに、冴島は、倒れている美咲、手もなく立ちすく
む神山の姿を見つける。
 冴島は走って救急隊員たちに「あっちにも人がいる、早く助けて」
と訴えた。
 しかし、そっちの場所は別の町の救急隊の管轄だから、と拒否され
てしまう。
 東京に戻った冴島は、管轄外だからといって人命救助を拒否したこ
とを追及する。そのときに、被害者の美咲を前面に押し出して、悲惨
さの演出をしていったのだ。
 それが奏功し、冴島はジャーナリスト協会大賞を受賞した。

 苦々しくその当時のことを思い出しながら、冴島は答える。
「B、管轄問題」
 ──正解です。
 観客席から拍手が沸き上がる。

 続いて問題を出そうとした神山だったが、編集室で本間がVTRの
映像を流させた。
 VTRは冴島が作った、シナイ湖小型飛行機墜落事故のものだった。

 美咲の生い立ち、孤児院で育ってきたこと、いじめられていたこと、
それでも明るく生きていたことを紹介し、そのうえでなぜ彼女が事故
で死ななければならなかったのか、と追及する内容。

 神山はそのVTRを見て涙を流し、もう十分だ、停めてくれと叫ぶ。
 編集室では、神山の苦悩する姿をモニターしていた本間が凄惨な表
情でつぶやく。
「神山……よく見ろ。これが……冴島涼子がしたことだ!!」
 神山はうつむき、振り絞るように問題を出す。
 第七問「管轄問題を追及する決め手として、あなたが利用した者は
次のうちどれ? A安藤康介の歌、B祐天寺ノッコの占い、C友部公
一郎の手術、D新田美咲の死……」
 問題を読み上げてから、冴島を凝視する神山。
「D」
 ──正解です。
 むなしく正解の音楽が響く。
 神山は美咲の死を利用して自らの出世の糧にしたのかと、冴島を問
い詰める。

 編集室でも、本間が立ち上がり、はき出すようにつぶやいていた。
「冴島涼子。お前は、美咲を……。わかるだろう、神山。俺の気持ち
が……」

 冴島は神山を前につぶやく。
「神山くん……新田美咲のような被害者を出さないためにも、彼女の
死を無駄にしちゃいけないの」
 しかし、神山は納得しない。
「わかりませんよ。それで何かが変わるのなら、人の死は、秘密は、
隠しておきたいことは、知られてしまってもいいんですか!」

 編集室で本間が冴島を見つめていう。
「冴島さん、それがアンタのやってきたことだろうが」

 神山は冴島に訴える。
「美咲は不幸なんかじゃなかった。美咲はいつも笑っていたんです。
どんな辛い境遇でも、どんな辛いことがあっても」
 つぶやく本間。「それを……おれたちに決して見せずに」
「こんなのウソだよ、こんなの美咲じゃない。こんなの俺の知ってい
る美咲じゃない!」
 本間は怒鳴りつける「怒れ、怒れ神山!」
「何で、何でこんな風にされなくちゃいけないんだよ!」
 神山の絶叫がスタジオに響く。
 が、冴島も神山に反論する。
「あの放送によって、おかしな取り決めが見直されたの。多くの命が
助かることになったの」
「だからって……」
「私は、間違ったことをしたとは思わない。美咲さんの死を扱うこと
は、必然だったの」

 編集室で本間が叫ぶ。
「必然なんかじゃなかったっ!」

 が、スタジオでは神山が怒りをかみ殺して言う。
「……わかりました。それで何かが変わるのなら、知られてもいい秘
密というのがあるんですね? あなたにも……その覚悟があるんです
ね?」
 冴島は決然と言う。
「あります」
 スタジオも、編集室も静まりかえる。
 神山がステージ中央に走り、ドリームチャンスを宣言する。
 狂ったように音楽にあわせて踊る神山。
 音楽が終わると、静かにたたずんでいる冴島を振り返った。
「……冴島涼子さん、あなたの夢は、なんですか?」
「銀河テレビへの復帰を希望します」
「……承知いたしました」
 神山は静かにうなずき、問題を読み上げる。
 ドリームチャンス「次のうち、あなたと血縁関係にある人物は誰?
 A冴島美野里、BMC神山、C松坂源五郎、Dいない」

 編集室では、スタッフ達が動揺していた。
「何、この問題……」
「そんなの、娘の美野里ちゃんに決まってるじゃないか!」
 が、うしろで田所はじっと黙り込んでいる。
 本間が狂気の表情でモニターの冴島に叫ぶ。
「冴島さん……答えられますか? この問題」

 冴島はスタジオで絶句していた。
 そして、神山に笑いかける。
「神山くん、あなたは私に何を言わせたいの?」
「冴島さん、私は、あなたの全てを知っています。この局に戻りたい
んですよね? ならば、自分と向き合ってください……。それが、あ
なたに与えられた使命なのですから」
 冴島は言葉を出せない。
「冴島さん、お答えください。あなたの、夢のために……!」
 葛藤の中で、冴島は再び八年前のあの事件のときを思い浮かべる。

 雨の中、カメラを回す冴島は、急な腹痛に襲われる。
 そのまま倒れて意識を失う。
 目覚めたとき、子供を流産してしまったと教えられた。さらに、そ
のせいで二度と子供をつくることはできないと告げられる。
 自分を責める冴島は、田所との間に距離を置くようになる。
 局に戻った冴島は、何かにとりつかれたように「シナイ湖小型機墜
落事件」を追い始める。
 仕事に熱中する冴島を、止めようとする田所。しかし、冴島はヒス
テリックに「もう、自分には仕事しかないんだ」と叫ぶ。田所は冴島
に離婚を切り出した。
 そして冴島は、さらに仕事に熱中していくのだった。

 スタジオでは冴島の苦悩が続く。
 モニターを見ている本間が、叫び続ける。
「冴島さん……答えろ、答えろよ。……答えはわかってるんだろう。
答えはDだよ。このなかに血縁者なんかいないだろうが! 早く答え
ろ、答えろ!」
 編集室のスタッフ達がざわめく。

 しかし、冴島は答えることが出来ずにいる。
 神山は答えるのが難しいなら、「奥義」を使うかと、強引にルーレ
ットをスタートする。
 選ばれたのは「召喚」。
 スタジオに登場したのは……冴島の娘、美野里だった。

 あまりのことに、何をやって居るんだ、もうやめろ、と叫ぶスタッ
フ達。

 しかし、神山は美野里に問いかける。
「美野里ちゃん、この冴島さんとはどんな関係ですか?」
「……私の、ママです」
「そうですか。……その手にもっているものはなんでしょう?」
「ママヘのプレゼントです。授業参観で描きました」
「そう。授業参観には、ママは来てくれたのかな?」
「お仕事で来てくれませんでした」
「さみしかったでしょ」
「美野里は、ママのテレビを見ているからさみしくないです」
 美野里は冴島のところへいき、絵を手渡す。
 絵を受け取り、見つめる冴島の目からは涙が流れる。

 冴島は美咲の取材をするために、美咲の孤児院で話を聞いていた。
そこへ、生まれたばかりの美野里の姿がある。まだ三ヶ月のころに、
門の前に置き去りにされていたそうだ。
 美野里を抱いた冴島の心に、愛情が生まれる。そのまま、冴島は美
野里を引き取って暮らし始めたのだった。

「美野里と仕事、両方取るってきめたの。あの子と出会ったとき、あ
の子の笑顔を始めて見たとき、そう決めたの。ワガママだって言われ
ても、勝手だって言われてもいい。だって……私にはこれしかないん
だもん。この二つしかないんだもん。……たしかに、寂しい思いをさ
せたかもしれない。熱が出たときもすぐに帰ってあげられなかった。
運動会だって何回行けたかわからない。でもね……。でもね、徹夜明
けでも毎日お弁当を作ったのも、仕事がどんなに忙しくても毎日保育
園に送っていったのも、私なりに、私なりのちゃんと両立させてきた
の。なのに……何が悪いの? 全部美野里のため。あの子育てるには
仕事が必要なの。ねえ、仕事が必要なの。そうやって私、今日まで生
きてきたの……」
 はき出すようにいい、冴島は神山をにらみつける。神山は答えない。
「わかった……答えるわ。どちらかを選べ、っていうのね。私から…
…すべてを奪おうっていうのね?」
 神山はじっと冴島をにらみつける。が、冴島は答えず、激しく首を
振る。
「そんなの出来るわけないじゃない!」
 スタジオの隅で成り行きを見守る美野里の元へ走って、美野里を抱
きしめる冴島。
「誰が何というと、美野里は私の子供なの。私の子供なの! 答えは、
答えはAよ! 答えはAの冴島美野里! この子は私の子供なの!」

 編集室では、本間が復讐を遂げたと哄笑していた。

 ──正解です! ドリームチャンスクリアです!!
 神山が叫ぶ。

「神山ぁっ!」
 本間の絶叫が編集室にとどろく。

 神山はモニターを見ている本間を鋭くにらみつけていた。
 そして、美野里を抱きしめる冴島に向き直る。
「……冴島さん、ともに生きるということは、その人の全てを抱きし
める、ということです。過去も未来も、罪も秘密も、その人のすべて
を抱きしめ続けるということです。冴島さん、あなたは今まで美野里
ちゃんを守ってきた。仕事に生きながらも必死に美野里ちゃんを抱き
しめてきた。そんなあなたを美野里ちゃん、認めていないわけないじ
ゃないですか。信じていないわけ、ないじゃないですか。子は親を信
じ、親は子を信じる。ただ抱きしめあえさえすれば、それで十分なん
です。それこそが、真の親子なんです」
 神山の言葉に、美野里の顔を見つめる冴島。冴島の顔を見つめた美
野里が言う。
「ママ……」
「はい……」
 静かに見つめ合う親子。

「今回の解答者・冴島涼子は見事、夢を実現させることが出来ました。
次回、自らの夢を実現させるのはだれなのか? あなたの夢を叶えま
す!」
 神山がコールして、番組は終了する。

 編集室では、操作卓に本間が崩れ落ちていた。
 後ろに立つ田所が、「最後の問題は、正解じゃない」と言う。
 神山が勝手に判断して、勝手に正解にしてしまったのだと吐き捨て
る本間。
「俺の目的は、冴島さんですから。美野里ちゃんには罪はない。大切
なのは結果じゃなく、その過程ですから……」
 強がりを言ってフラフラと立ち上がる本間。
「おつかれさまでした」
 と編集室を出て行ってしまう。

 モニターには、抱きしめ会う冴島親子の姿があった。
 それを見ていた田所は、冴島が出した辞表を引き破るのだった。

 ひとり銀河テレビの部屋に戻ってきた本間を、前の「ザ・クイズシ
ョウ」のプロデューサーだった山之辺(戸次重幸)が待ちかまえてい
た。
「シナイ湖の事故。その乗客、冴島涼子、そして神山。お前の目的は
その九人か?」
「……おれは実行しますよ。あなたが二年前にそうしたように……」
「それが、ザ・クイズショウか?」
「あと一つ……最後の仕上げです」
「本間、彼らが何をしたというんだ? 新田美咲は事故で死んだんだ
ろう」
「事故じゃありませんよ。……美咲は、アイツが殺したんです」
 言い放つ本間。絶句する山之辺。

 神山は病室で事故のことを思い出していた。
 墜落した飛行機。水に投げ出された神山。水面に浮かぶ美咲をどう
にか助けて、湖畔まで運んだが、腹部に破片が突き刺さっていた。
 神山は慌てて破片を抜く。そのとたんに大量の出血が……。血まみ
れの破片を握りしめ、絶叫する神山は、そのまま倒れてしまう。
 次に目が覚めたとき、本間が神山を見て絶叫した。
「神山。神山目が覚めたのか!……お前、六年も眠っていたんだぞ!」
 事故のことを思い出したのだ。

 そこへ、本間が入ってくる。
 番組で勝手に正解にしてしまったことを責める本間だが、もういい
なりにはならないと反発する神山。さらに本間を問い詰める。美咲は
自分が眠っている間に、生きていたはずだ。その間にいったい、何が
あったのか、と。
 しかし、本間は答えない。もう少ししたら、全てを教えてやる、そ
う言って。


寸  評  すっきり……はしないんですが、ようやく全体像が見えてまいり
ました。八年前の飛行機墜落事故で亡くなった新田美咲の復讐のため
だったんですね。今回は、過剰に被害者の演出をすることで、自らの
出世につなげたマスコミへの復讐でした。
 しかしまあ、こんなにプライベートな内容の、勝手な思いこみばか
りの番組が、普通に生放送で放送されるっていうのは、あまりにも…
…ですね。
 んー、ストーリーとしては復讐にテレビ番組を使う、という手法は
とても面白いのですが、ここにきていきなりリアリティが希薄になっ
てきました。放送事故を起こしたり、MCが倒れたり復活したり、あ
まりにもプライベートな設問が繰り返されたり……。たとえば今日の
番組なんか、クイズショウとして誰が見たがるんでしょう? 見たと
ころで、楽しいと思うんでしょうか? まかり間違っても、視聴率が
30%も行くはずがないと思うんですよね。ドラマだから……はいい
んですけど、あまりにも荒唐無稽になりすぎると、ちょっと冷めてし
まいます。
 その点、アメリカのTVドラマのリアリティはすごいですよね。だ
から、深夜とかテレビシリーズが話題になるんだろうなぁ、とも思い
ます。
 さてさて、来週はついにMC神山が解答者だとか。いったいどうや
って収拾をつけるのでしょう。楽しみです。

執 筆 者 畑中ヒロ(hero_hatanaka@yahoo.co.jp)

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2. 編集後記
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 えこひいき……、じゃないんですけど、関わりのある事や物に対しては、
「愛着」がわくものです。ぜんぜん関わりのないものには感じないことを。
 そうですね、地元の高校野球チームを応援したり、母校の駅伝チームを応援
したり、というのもその典型でしょう。
 私も、出身地のプロ野球チームを三十年近く応援しておりまして……。いい
加減、愛想を尽かすようなことも多々あるのですが、それでも辞められないん
です。よく知人や友人たちに「あんなチームを応援する気が知れない」「あそ
こまで弱いところのファンなんて、マゾか」と言われます(ええ、ぶっちぎり
の最下位球団のファンです)。
 で、このところの、「ザ・クイズショウ」。どうも話がちょっとごちゃごち
ゃになりつつあります。リアリティも完全無視ですし。それでもなんとなく応
援しちゃうんです。別に作成者っていうわけでもありません。単に、メルマガ
に要約を書いているだけなんですが。妙に視聴率が気になったりして……。お
かしなものですね。(畑中ヒロ)

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発行元:ドラマ研究会
e-mail:info@j-drama.tv
url   :http://www.j-drama.tv/
ID  :MM3E195F16414CD 
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